更なる品質向上によりマデイラの飲用需要拡大を目指すブランディ家

ブランディ家の7代目として2011年にCEOに就任したクリス・ブランディ氏が3年ぶりに来日し、輸入元木下インターナショナルが昨年10年、銀座にオープンしたマデイラワインバー「Madeira Entrada」で会見し、次のように語った。

マデイラの製造会社「ブランディーズ」は1811年、ブランディ家によって創業され、200年を超える歴史を誇る。ブランディ家は現在マデイラワインだけでなく各種のテーブルワインを製造するほか、ホテル、船舶、トラベルエージェントなど様々な事業を展開しているが、そのベースには常にマデイラワインがある。ブランディ家はブランディーズ創業200年を機に、それまでシミントン家が所有していたマデイラ・ワイン・カンパニーの株式の90%を所有するところとなった。

ブランディ家は同時に、畑と醸造設備にも投資を行い、安定的な生産の確保とともに質の向上にも努力を払っている。

これまでは、500の独立した栽培農家から葡萄を仕入れていたが、マデイラ島内3カ所に計8haの葡萄畑を所有し、5年後にはマルヴァジア、セルシアル、ヴェルデーリョの白葡萄品種からつくられるマデイラワインを100%自社葡萄でカバーすることを目指している。最大の自社畑は島の北側サンジョルジュにあるキンタ・ド・ヴィシュブル4haで、主にマルヴァジアを生産。同じ北側のサンタナにある畑キンタ・ド・フラウ2haでは、これまでヴェルデーリョだけが栽培されていたが、セルシアルを新植し、現在は両品種の栽培比率は50:50となっている。最後の畑1.5haはフィンシャルの中にあり、クリスの従兄弟が所有している。

「マデイラの総生産量は過去20 年間ほぼ安定していて年間およそ300 万リットルを製造。その内約170 万リットルをマデイラ・ワイン・カンパニーが担い、90 万リットルを販売している。マデイラは産業としてはとても小さく、しかもクッキングユースが中心で飲用として楽しんでもらうには世界的にも大きな障壁がある。とはいえ、近年伸びているのが白葡萄を使い、カンテイロで5年以上熟成したプレミアムレンジの製品だ。世界的な経済不況と若者の農家離れという現象のなかで、マデイラでも葡萄畑は減っている。ブランディ家では葡萄栽培に投資することで、若者の畑での就労を促していきたい」とクリス。畑の一部では、希少品種テランテスと黒葡萄品種のバルタルドを異なるクローンや台木を使って、土壌との相性を探る試験栽培を実践している。

また、マデイラ大学やポルトガル本土にある大学との共同研究により、醸造面でも革新を図っている。そのひとつが2008年から進められてきたエストゥファジェンをつかった3年ものエントリーレベルのワインの品質改善。これは、法律上エストゥファジェンは最大55℃まで温度を上げ3か月熟成すれば良いことになっているが、ブランディ家では加熱を45℃までに抑えその代わりに熟成期間を4か月まで延ばしている。同時に、これまではコンクリートタンクにパイプをダイレクトに入れて加熱を行っていたが、これに代えて、外側にパイプをめぐらしたジャケット付きのステンレスタンクを採用。4か月後に0℃の冷却水をパイプに流してワインを落ち着かせてから樽に入れるようにしている。この結果、「焦げ臭がなくなり、クリーンなワインを得ることができる様になった」という。

また、昨年、島の東側の港町カニサルに近代的なワイナリーを建設し、高品質なプレミアムワイン用のカンテイロシステムを導入した。

ブランディーズをめぐるもう一つのトピックスは、今年からボトルデザインを一新し、ロゴやメインラベル、裏ラベルも変更したこと。これはオールドヴィンテージマデイラを含み、すでに新しい意匠となった5つの新しいヴィンテージマデイラがリリースされている。いずれ日本市場にも登場する予定だ。

さらにテーブルワインの分野にも力を入れはじめた。ロゼワイン『アトランティス』はこれまで国内市場が中心だったが、今後はベルギーや英国向けの販売量を倍増させる意向。また、カエサルに新設された新しいワイナリーに小仕込み用の新しい発酵タンクを6器設置し、これをつかって白および赤のテーブルワインもつくるべく現在、試験醸造を重ねているという。(M. Yoshino)

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