“高品質ワインをリーズナブルな価格で提供する”シャトー&ドメーヌ・カステル

Baron de LestacやVieux Papesなどベストセラー・ブランドを擁するネゴシアン・エルブール、グループ・カステルは同時に、ボルドーをはじめとするフランス各地のシャトー&ドメーヌの経営にも積極的だ。1957年、シャトー・ド・ゴエランから始まった自社所有シャトー&ドメーヌは現在20を数え、サンジュリアン4級のシャトー・ベイシュヴェルもサントリーと共同経営している。
「カステル家の哲学の基本は、ワインはエリート主義的なものではなく、より民主的なものでなければならないということ。我々が所有し運営しているシャトー&ドメーヌについても同じであり、一般消費者やワイン愛好家に非常にクオリティの高いシャトー&ドメーヌワインを求めやすい価格で提供することが重要だと考えている」と、カステル・フレールの役員でシャトー&ドメーヌの運営管理および買付総責任者を務めているフィリップ・カステル氏は語る。
このプロジェクトを進めるにあたって、カステルが採用している戦略は極めて明確だ。まず、徹底したリサーチに基づき、規模やアペラシオンの違いを超えてポテンシャルの高い土地を持つプティ・シャトーやドメーヌを買収する。そして、各シャトー&ドメーヌでは地元で知識と経験、情熱をもった専属のワインメーカーと著名な醸造コンサルタントを配し、彼らの指導の下、改植にあたっては台木の選定や植樹密度、剪定の方法、グリーンハーベストやGPSを使った葡萄の成熟度の測定などの実践を通して畑のもつ可能性を最大限高めるようにする。ワイナリーでは光学式選果台やグラヴィティ・フローを導入。また、いくつかシャトー&ドメーヌでは現在、ワイン貯蔵庫のリニューアルにも取り組んでいる。さらに、2009年にはマルゴー4級プリュレ・リシーヌの技術総責任者を務めていたパトリック・ボンガールがカステル・シャトー&ドメーヌの技術スタッフに加わった。
フィリップ・カステル氏およびシャトー&ドメーヌ・カステルのディレクター、ジャン=バティスト・プロ氏が来日したのを機に、カステル・ジャパンが東京・新宿のフレンチ割烹「ドミニク・コルビ」でいくつかの所有シャトーワインを紹介する試飲会を行った。
Le Clos des Orfeuilles( クロ・デ・ゾルイユ)AOC Muscadet Sevre et Maine sur Lie。カステル家はロワール地方に3つのシャトー&ドメーヌを所有しているが、2007年にシャトー・ド・リヴェルニエールを購入し、翌年、その中からベストの区画8haを壁で囲ってLe Closdes Orfeuillesに。片麻岩や水晶など結晶質土壌からはミネラル感豊かなワインが産出されるが、ワインメーカーのジャンディディエ・ヴルヴェによって2008年から有機栽培を実践し、2012年からオーガニックマークABを取得した。このワインはAOC名やヴィンテージは全て裏ラベルに記載されている。年産3万〜4万本。2011年産はスモークしたナッツの香りとミネラル感、口の中ではボリューム感豊かで蜂蜜やビターなニュアンスも。2013年産はややボリューム感に欠いているが、ミネラリーでカリンやエキゾティックなアロマ、長く続く酸の余韻が特徴。

 

Le Chateau d’Archins (シャトー・ダルサンス、参考上代4800円)。AOCオーメドックに属し、1300年のテンプル騎士団の頃まで遡る歴史を持つこのシャトー95haを、カステル家では1971年から所有。2009年産は日照量が多く、酸がやや少なめ。しかし、樽香が溶け込みモカなどの熟成したアロマが出はじめ、ちょうど今が飲み頃。2010年はまだ堅く、酸と樽香が前面に。熟成のポテンシャルは2009年よりも高いかも。2009年からアントワーヌ・メドヴィルがコンサルティングを担当している。
Cru de La Maqueline 2012 (クリュ・ド・ラマクリーヌ、2600円)。マルゴー村とディッサンの間に位置するこの葡萄畑は2006年からフィリップ&カトリーヌ・カステル夫妻が所有し現在も居住。全植樹面積35haの内メルロが93%を占めている。試飲した2012年産は果実の風味が豊かでまろやか。トースト香やモカの香りはやや新世界ワインにも通じるところがあり、親しみ安く価格性能比も高い。
La Chateau Montlabert 2011 (シャトー・モンラベール、9200円)。サンテミリオン グランクリュ。フィジャックに隣接し、2008年に購入。カステル所有のシャトーとしてはトップクラスに位置しているが、いままでは“眠れる巨人”の存在だった。その後直ぐに暗渠を施し、メルロの比率を80%から75%に下げ、カベルネ・フランの比率をあげている。13haの畑を18区画に分け、区画ごとに収穫。2009年からユベール・ド・ブアール氏がコンサルタントとして参画し、実質的に2010年がカステルとしてのファーストヴィンテージに。2011年は夏も日照が少なく難しいヴィンテージだったが、「暗渠と、比率が高まったカベルネ・フランのおかげで、きれいなミネラル感がでる」ようになった。 (M. Yoshino)
画像:フィリップ・カステル氏(左)とジャン=バティスト・プロ氏

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