特集/南アフリカワイン/民主化後20年を経てさらに進化する高品質ワイン造り

「(南アフリカは新世界ワインと評されているが)最初にワイン用葡萄が栽培されたのは1659 年で、以来350 年以上にわたりワイン造りの伝統をもっている。

18 世紀には、コンスタンシアで造るデザートワインがナポレオンに愛飲されていたように、ヨーロッパの市場ではその品質が高く評価されていた。19 世紀末のフィロキセラ禍とその後の過剰生産の時代、さらに(ドイツから導入された)低温発酵技術の導入によるフルーティな白ワインを中心とした大量生産の時代を経て、20 世紀の大半は協同組合がワイン造りの多くの部分をコントロールし、どちらかといえば安くて、カジュアルなワインが生産され輸出されていた。

しかし、1994年の民主化以降この20 年間で、ワイン産業は新しく生まれ変わった。若い醸造家や栽培技術者が海外の生産現場で学び、それを南アフリカに持ち帰って新しい栽培醸造技術を駆使しながら、産地や品種の特徴を反映したワイン造りが行われるようになってきた。生産の主体が甘口で安価な白ワインから赤ワインへとシフトする一方、この10 年間にエリムやエルギン、ヘメル= エン=アード・ヴァレーなど冷涼な新しい栽培地域、あるいはスワートランドやステレンボッシュなどの伝統的な栽培地域の再評価とともに、高品質なワイン造りが進められるようになってきた。今や南アフリカのワイン産業は伝統と革新の完璧な融合をみせている」と、WOSA(Wines of South Africa) のチェアマン、マイケル・ジョーダン氏は語る。昨年9 月に開催されたワインの展示会Cape Wine 2015 での“A New Era for South African Wine” と題するオープニングセミナーでの発言だ。

マイケルはさらに、これから先10 年間、南アフリカのワイン産業が向かうべき方向性について、㈰輸出に関してはもはや量ではなく、金額を重視すること。㈪輸出先をこれまでの英国を中心としたヨーロッパ偏重から改め、アジアを含む新しい市場にフォーカスすること。㈫ワイン産業がこれまで進めてきたWIETA(Wine Industry Ethical Trade Association) やSWSA(Sustainable Wine South Africa) など社会や自然との調和を目指す先進的なサステイナビリティに関するワイン造りのありようをさらに徹底すること、など3つのポイントを挙げた。(M. Yoshino)
画像:ステレンボッシュにあるランゼラックの畑

つづく/これ以降の内容

変化する産業構造/多様性とエレガンス/シュナンブランとピノタージュ など

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