特集ビール アサヒ、サントリーが新ブランドでビール市場開拓に動く

ビール、発泡酒、新ジャンルを含むビール類の昨年課税数量は11年連続の前年割れとなり、市場縮小傾向に歯止めがかからなかった。ただ、ビールについては平成8年以来、19年ぶりに前年を上回るなど“ビール回帰”という変化の兆しがみえる。

こうした中で、大手ビールメーカー4社は年明け早々、相次いで今年の酒類事業方針を発表した。各社に共通しているのはビールカテゴリーへの再注力である。これは将来のビール類の酒税一本化とビール減税を見据えた各社のカテゴリー戦略といえる。そのドメインともいえるビールの基幹ブランドへ再投資する動きと、さらにアサヒとサントリーは新ブランドで新たなユーザーを獲得することによって、新市場を開拓し、総需要拡大につなげようという動きである。

昨年9月に新スタンダードビールとして上市されたサントリーの『ザ・モルツ』は20~40歳代をターゲットに、麦芽100%の「UMAMI」を訴求することで、その販売実績は328万ケースと当初計画を大きく上回った。これにより「9~12月のビール市場が102%と上向き、ビールカテゴリーの活性化にも大きく貢献できた」と振り返った。

さらに、同社では、嗜好のトレンドを“30年周期”で捉えていると次のように説明。「1950年代から高度経済成長期の第1波は『苦味』、1980年代後半からバブル期とその崩壊までの第2波が『辛口』、そして現在の第3波は『味わい』だろう。ビールにも味わいの多様性が求められ、それはコクであり、香りであり、旨みである。そういう考え方から当社のポートフォリオはこの味わい軸に揃えた」。今年の『ザ・モルツ』の販売計画は730万ケースで、中期的には1000万ケースを目指すという。

新日本スーパーマーケット協会が主催するスーパーマーケット・トレードショーでは、“究極のコクキレ”実体験コーナーを設けた

新日本スーパーマーケット協会が主催するスーパーマーケット・トレードショーでは、“究極のコクキレ”実体験コーナーを設けた

一方、アサヒビールは“究極のコクキレ”に加え、糖質50%オフを実現した『アサヒ ザ・ドリーム』を3月23日に上市する。

主力商品『スーパードライ』は1987年に日本初の辛口生ビールとして誕生し、今年は発売30年目を迎える。コクのある苦味のビールが主流だった時代に、“辛口・キレ”を求める新たなユーザーを獲得し、ビールの新時代を築いた。そして、現在では他社の追随を許さない1億ケース超のブランドにまで成長しているが、ここ数年は漸減傾向にある。

こうした中で同社にとって7年ぶりとなるビール大型新商品が『ザ・ドリーム』だ。開発の経緯について、次のように説明する。

「1万人という大規模な市場調査から、ビールユーザーの嗜好を徹底的に深堀して2年がかりで商品開発した。現在のビールカテゴリーには、プレミアムビールに代表される“コク重視”とスタンダードビールの“キレ重視”の商品が45対55の割合(缶ビール)で存在するが、“コクとキレ”を両立させたブランドは存在していない。ビール№1メーカーの責務として、この領域でのオンリーワンであり、ファーストエントリーという考え方から、商品開発に挑戦した。試作品を1500人のビールユーザーに試飲させたところ、8割に購入意向が見られた」

「最近の糖質オフ市場の伸長をみても最高にうまいビールを体のことを気にせずゴクゴク飲みたい、これこそがビール通の夢ということで、新商品では“究極のコクキレ”に加え、糖質50%オフを実現した。従来の製造方法では、その味覚のバランスから困難とされてきた領域を、当社の高い技術力と革新的な製造方法でクリアした。新たな定番ブランドとして市場創造を図る。糖質オフというのは時代の要請。海外を見渡せばミラーライト、クアーズライト、バドライトしかり。うまいビールをゴクゴク飲みたいというのは万国共通」。

広告キャラクターにはラグビープレーヤーの五郎丸歩選手を起用。初年度販売計画は400万ケース。ビール新時代の幕開けとなるか大いに注目される。(A. Horiguchi)

画像:3月23日発売の『アサヒ ザ・ドリーム』

詳細につきましては、「ウォンズ」本誌「2月号」P.6〜17の「ビール特集」をご覧下さい。WANDS本誌の購入&購読はこちらから

2015年ブランド別販売量ランキング
ブランド 販売量 前年比
(万ケース) (%)
スーパードライ 10,383   97.9
のどごし<生>   4,650 110.7
淡麗   3,950   99.7
金麦   3,692 101.7
一番搾り   3,470 104.2
クリアアサヒ   3,175 110.9
ザ・プレミアム・モルツ   1,756   99.2
黒ラベル   1,618 100.2
スタイルフリー   1,330 110.5
キリンラガー   1,280   91.3
麦とホップ The gold   1,058   91.5
ヱビス      952   98.8
アサヒオフ      605   93.1

注1:全て各ブランドの合計販売量。

例えば『淡麗』は「麒麟淡麗<生>」「淡麗グリーンラベル」「淡麗プラチナダブル」の合算。

注2:☆はビール、●は発泡酒、〇は新ジャンル。

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