ヴランケン・ポメリーのロゼワイン

ヴランケン・ポメリー・モノポール・グループのポール・フランソワ・ヴランケン代表は、南フランス・カマルグに所有するドメーヌ・ロワイヤル・ジャラスのロゼワイン「コマンドゥール・ド・ジャラスCommandeur de Jarras」をパリでジャーナリストに紹介した。

 

カマルグの海岸に面した一帯の葡萄畑は、かつては海だったため土壌に多くの貝の化石があり、ヨードやミネラルの感じられる独特のワインができ上がる。加えて興味深いのは砂地であるためフィロキセラ禍を免れ、現在も接ぎ木されていない葡萄樹が多く残っている。コマンドゥール・ド・ジャラスはこの古木のグルナッシュで造るキュヴェ。

葡萄は日中の強すぎる太陽を避けるために夜間から早朝にかけて手で収穫し、シャンパーニュの伝統的圧搾機を使って圧搾した後、発酵させる。IGP サーブル・ド・カマルグだが、現在、AOC を申請中だという。

 

試飲昼食会の行われたリュカ・カルトンはかつてアラン・サンドランスが長く三つ星を維持した由緒あるレストランで、2013 年にヴランケン・ポメリー・モノポール・グループが買収し現在一つ星を得ている。料理と合わせて試飲したのはコマンドゥール・ド・ジャラス2015、2013、2012、2009 の4ミレジーム。

 

2015 年はフローラルな香りがあり果実味が豊かで構造がしっかりしている。印象に残ったのはすでに6 年以上が経過している2009 年で、色は薄茶色に変化し干し草や煙のニュアンスがあるが、後口にはまだ新鮮なミネラルが感じられる。

 

ヴランケン・ポメリー・モノポール・グループは、2009 年にヴァル・ドルビューからリステルを引き継ぎ、カマルグに1780ha の広大な土地を所有している。429ha が葡萄畑、約1000ha はカマルグの自然地帯として保護されている。砂地の葡萄樹は根が浅く張るため、冬に葡萄樹の畝の間に大麦、燕麦、ライ麦の種をまいて砂の浸食を防いでいる。また、フランスでも屈指の多様な植物相、動物相が存在するカマルグで、伝統馬マナード約60 頭を飼育し、冬は羊の群れを迎え入れるなど自然と葡萄畑の共生に努めている。

 

リステルの主力商品ロゼとプロヴァンス・ロゼ・ビレット(シャトー・ラ・ゴルドンヌ)の生産販売を強化するため、2014 年、カステル・フレールと折半出資の合弁事業リステルSA を設立した。これは、ヴランケン・ポメリー・モノポール・グループが主としてEU 圏と米国に強い販売網を築いているのに対して、カステル・フレールが東欧、ロシア、アフリカ、アジア市場の流通に精通しており、相互補完によって大きな伸びを示すロゼワイン市場の主導権を握るのが目的だ。世界市場で当面4000 万本のロゼを販売する目標を掲げている。

 

コマンドゥール・ド・ジャラスはリステルSA が扱うロゼの中の高級品。アムステルダムのゴッホ美術館のオープニング・パーティの協賛ボトルとして使われたことを記念して、ヒマワリの絵をラベルに使った限定特別ボトルも販売している。

 

なお、ヴランケン・ポメリー・モノポール・グループはモエ・エ・シャンドンに次ぐシャンパーニュ第2 位のグループで、傘下にヴランケン、ポメリー、シャルル・ラフィット、エドシック・モノポールのブランドを所有している。またポートのロゼス、テラス・ド・グリフォも持っている。栽培面積は広大なカマルグの葡萄畑に加えて、シャンパーニュ(自家葡萄畑250ha、契約葡萄畑2500ha)、プロヴァンス(300ha)、ポルトガル・ドウロ(190ha)の葡萄畑を併せるとヨーロッパでも最大規模になる。2015 年のグループの総売上げは2 億9600万ユーロで前年比8%減だったが、これはリステルの品揃えの大部分を占めていた低価格品を整理したためで、既存ブランドの売上げはほぼ前年並み。

(T. Matsuura)

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