【蒸溜所探訪】ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所

北の大地に育まれた“ニッカワ”のほとりでつくる華やかなモルトとカフェグレーン

北の大地を彩る遅い春の到来を前に、ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所を訪れた。晴天に恵まれ、正面の鎌倉山と蔵王連峰がくっきりと見える。山に囲まれた森の蒸溜所だ。緑豊かな敷地内には、蒸溜棟(カフェ式連続式蒸溜機)、キルン塔(乾燥棟)、仕込棟、蒸溜棟(単式蒸溜器)、製樽場、貯蔵庫が、中央にある池を囲むように並んでいる。

 

ニッカウヰスキーの“約束の大地”

宮城峡蒸溜所はニッカウヰスキー第二のモルトウイスキー蒸溜所として、1969年に当時の宮城県宮城郡宮城町、現在の仙台市青葉区に建設された。新しい蒸溜所の用地を探していた創業者の竹鶴政孝は、息子の威らが探し当てた生い茂る熊笹を分け入った所にある清流の水を汲むと、『ブラックニッカ』のポケット瓶を取り出し、水割りにして飲み、あまりのおいしさに他の候補地を見ずに「ここに決めた」と言ったという。その清流がニッカワ(新川)で、蔵王山系と面白山山系の幾筋もの沢の水を集めた一級河川だ。蒸溜所のすぐ下流で広瀬川に合流するので、蒸溜所は二つの川に挟まれている。このためその地盤は岩盤層でめっぽう固い。これが震災の時には幸いした。現在の番地はニッカ1番地だが、先にニッカワがあって、竹鶴政孝が運命的な出会いをした。ニッカウヰスキーにとってはまさに“約束の大地”だった。

ニッカワの水はとても澄んでいて冷たい。この軟水がニッカウヰスキーにとっては欠かせない。スコットランドでウイスキー修行をした竹鶴政孝にとって、余市はハイランド、宮城峡にはローランドのイメージを重ね合わせていたといわれる。

以前に訪れた余市蒸溜所はどちらかというと美術館のようで、レンガ造りの建物からリタさんがひょっこり姿を現してもおかしくないような昔の面影を残しているが、宮城峡蒸溜所はニッカウヰスキーの基幹工場であり、敷地面積も18平方メートルと広い。これは東京ドーム4個分という。そのスケールの大きさをあらためて実感できる。

 

 

世界でも稀少なカフェ式連続式蒸溜機

通常は見学することができない、世界でも稀少なカフェ式連続式蒸溜機を見せてもらった。現在、ブレンデッドウイスキー用のグレーンウイスキー(カフェグレーン)と、『オールモルト』のモルトウイスキー(カフェモルト)もつくっている。

開発者イーニアス・カフェの名にちなんで「カフェスチル」と呼ばれているこの蒸溜機はもろみ塔と精留塔の1対で1機となる。宮城峡には1号機と2号機がある。

もろみ塔では、メイズ(トウモロコシ)を糖化・発酵させたもろみを上から落とし、下から高圧の蒸気を吹き上げると、それらがぶつかって蒸留が行われる。24段ある穴の空いた銅板をのぼりきったアルコール蒸気は左隣の精留塔に移り、段ごとに液化、揮発を繰り返してのぼっていく。そのアルコール蒸気が32~33段目まで来たときに取り出す。

1964年以来、西宮工場で稼働し、1999年に宮城峡蒸溜所に移設されて以降も、同じものを使用している。導入当時から既に極めて旧式とされていたが、原料由来の香りと成分をしっかりと残すため、竹鶴氏はあえて、角型のカフェ式を選んだ。「分析値で言うと雑味があることで、独特の香味を生み出している」という。

 

余市とは異なるバルジ型のポットスチル

単式蒸溜器(ポットスチル)は余市が石炭の直火蒸溜だが、宮城峡はスチームの蒸気間接蒸溜(スチーム間接加熱)でじっくりと蒸溜する。これにより華やかで軽やかなモルト原酒が生まれる。ポットスチルの形状は余市がストレートヘッド型に対し、宮城峡のポットスチルは首の付け根が丸く膨らんだバルジ型。蒸溜の際に、重々しい沸点の高い成分が渦巻いて壁面にぶつかり、液化して釜に戻る比率(還流率)が高い。このため華やかで軽いタイプの原酒ができる。一方、ストレート型の余市では、この還流率が低く、どっしりと重たいタイプの原酒ができる。直火とスチームの違いもあるが、スチルの形状の違いが造り分けにもつながっている。

 

国内外におけるウイスキーの需要拡大を受けて、国産メーカーも中長期にわたって供給責任を果たすために、原酒製造の強化を図っている。すでに余市、宮城峡の両蒸溜所とも増産体制に入っているが、宮城峡ではこれまでの遊休設備を活用して、6月以降、本格的な増産体制に入る。(A. Horiguchi)

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