クレール・ミロン・ド・ラ・ダンス賞

1988年にフィリップ男爵が亡くなった時、シャトー・クレール・ミロンの畑は殆ど統合されグラン・クリュ・クラッセの高貴なワインとしての評価を確立しつあったが、生産設備は必要最小限の粗末なもので、醸造はポイヤック村の外れの醸造所を使っていた。現場の唯一のシャトーの建物と言えば小さな田舎家があっただけだ。

 

父親の事業を継いだ娘のフィリピンヌ男爵夫人は、家族企業の発展の象徴としてクレール・ミロンの近代化に力を注ぎ、2007 年にグラヴィティ・フローの醸造設備にし、2011 年に3600 ㎡の熟成庫、ワインセラー、レセプションルーム、試飲室などが作られた。全体の設計と内装は舞台装飾家のリシャール・ペドジ氏、建築はベルナール・マジエール氏が担当し、葡萄畑に向けて広がる広大なテラスと聖堂をイメージした横長の美しい建物を建設した。環境重視の哲学に基づき全体をイペ材で覆い、独特の雰囲気を醸し出しているのが特徴。また300 ㎡のソーラーパネルを設置し、シャトーで必要なエネルギーをまかなっている。

 

昨年、フィリピンヌ・ド・ロチルド男爵夫人が80 歳で亡くなった後、直系のカミーユ・セレイス・ド・ロチルドさん(1961 年生まれ)、フィリツプ・セレイス・ド・ロチルド氏(1963年生まれ)、異父兄弟のジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロチルド氏(1971 年生まれ)の3 人が事業を受け継いでいる。中でもジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロチルド氏がクレール・ミロンの建設事業を指揮し、新しいシャトーのイメージを打ち立てた。

 

昼食会冒頭の挨拶で、「シャトー・クレール・ミロンはそのラベルからも分かるようにダンスの世界と深いつながりを持っている。そして、フィリピンヌ・ド・ロチルド財団の事業として、母フィリピーヌ・ド・ロチルドがコメディー・フランセーズ、ルノー・バロー劇団で活躍した思い出を刻むために演劇、映画、オペラ界などで活躍する人物を対象にしたクレール・ミロン・ド・ラ・ダンス賞を設けることにした。

 

今年は、7 月6 日にボルドーのグラン・テアートルの協力を得てダンスの若いホープにこの賞を授与する予定だ。財団の目的は芸術の仕事、それに携わる才能のある人材に光を当てることにある。今後、若い作家、脚本家、劇作家を育てる事業や、芸術家の作品の出版、録音、録画作品の配給などにも力を入れる」と語った。(T. Matsuura)

画像:シャトー・クレール・ミロンと生産責任者フィリップ・ダルアン氏

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