〜シャトー・メルシャンの今〜 4月下旬に発売された飲食店専用リニューアル銘柄「甲州 淡紫(あわしむらさき)2015」

透き通るボトルの後ろからラベルの裏側を見ると、そこには葡萄と富士山、そして鳥居平の絵が描かれているのがわかる。ワイナリーから見える周辺の風景で、表からは透かしのようにうっすらとわかる。何とも日本的な演出だ。

 

<和食と甲州>

awashiperson淡い紫と書いて「あわしむらさき」と読むのも「和」を思わせる命名で耳に聞こえがよい。この銘柄の開発の経緯などを、シャトー・メルシャンのクオリティー・コントロール・マネージャー黒田真司に聞いた。

「構想としては2000年ぐらいからあった。日本人らしい食のシーンを考え、和食にマッチしたワインを造りたいと考え、それならば甲州だろう! と決めた。商品開発のためのプロジェクトチームを形成し、ワイン造りからラベルまですべてを特徴的なものに仕上げた」。

 

初ヴィンテージの2008年が2009年にリリースされた。当時は5,000本のみの生産で首都圏の飲食店限定品としていたが好評だったため、この2015年ヴィンテージからは14,000本となり変わらず飲食店専用だが全国展開ができるようになった。「和食とワイン」がテーマのため、当然和食店でのサービスが中心となる。

 

「淡紫」に使われている甲州は、シャトー・メルシャンが居を構える山梨県の各地、勝沼町と穂坂地区、特に甲州の名産地として名高い春日居地区と玉諸地区産のものが多く使われている。

このプロジェクトのひとつの命題は「甲州らしさを出す」ことだった。「柑橘系の清々しい香り」と「果皮由来の厚みのあるふくらみのある味わい」、つまり「きいろ香」と「グリ・ド・グリ」の特徴を両方とも兼ね備えたワインに仕上げたいと考えた。

そうすれば、冷えた状態では柑橘類の清々しさで冷製の前菜系の料理を楽しめる。食事が進むとともにワインの温度も少し上がり、甲州のふくらみや厚みを温製の主菜と共に味わえる。いくつものキュヴェを造り、ブレンドし、試行錯誤を重ねた結果出来上がったのが「淡紫」なのだ。

 

<2008年からのマイナーチェンジ>

ボトルの後ろからラベルの裏を見ると、葡萄、富士山、鳥居平が

ボトルの後ろからラベルの裏を見ると、葡萄、富士山、鳥居平が

「あわしむらさき」の命名には、いくつかの理由がある。紫は高貴な色だ。和食のもつイメージをワインに落とし込んだところ、気品、高貴さを兼ね備えたワインを造りたいと考えた。そしてまた、甲州の果皮が淡い紫色であることも、名前の由来となっている。2015年ヴィンテージからは、この「淡紫」の文字を毛筆体で大きく綴った。

文字を毛筆体にしたのは、もちろん料亭や高級和食店でサービスされることを前提にしているため、雰囲気に合うように、という配慮でもある。これならば、和食の側に置かれても違和感がない。それと同時に、海外からの来客にもわかりやすいよう、英文でのワインの説明も記している。おそらく4,000〜5,000円ほどでオンリストされているのではないかという(注:価格はオープン価格)。

 

ラベルのマイナーチェンジだけではなく、内容にも少し変化があるようだ。

「グリ・ド・グリのよいところを、といっても、当初は醸したワインは10%未満しかブレンドしていなかった。色もあり、癖があったからだ。しかし、最近は醸したワインもよりエレガントに仕上がっているので30%ほどブレンドできるようになってきている。また、樽熟成した甲州もいくらかブレンドするようになった」。

 

柚子やカボスといった清々しい和の柑橘類のような爽やかな、アロマティックな香りで、果実の甘味も感じられ、酸もきれいで伸びがよく、独特の塩っぽさも感じられる。ふくよかささえ感じられ、ほんのりとした苦みとタンニン分もあるため、食欲をそそる味わいだ。山菜の天ぷらやワカサギや鮎などの川魚、あさりの蒸し物といった料理が食べたくなった。

 

「日本の水は軟水が多く、自ずと料理も軟水で調理することが多くなる。そのため、エレガントなワインと馴染みやすい。それに、体形がよく似ている」と、黒田。まさに言葉の通りで、いかにもよく合いそうだ。シャトー・メルシャンの甲州プロジェクトの総決算ともいえる、バランスのよい銘柄ではないかと感じられた。和食の世界遺産登録、2020年の東京オリンピックなども合わせ「淡紫」の活躍の場は大いに広がりそうだ。(Y. Nagoshi)

追記:シャトー・メルシャンでは、「淡紫」「甲州きいろ香」「アンサンブル」など、フレッシュ感を味わってもらいたい銘柄について、2015年ヴィンテージからスクリューキャップに変更している。

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