八ヶ岳の自然を映す「ミエ イケノ」 2014年ヴィンテージ

八ヶ岳を真近に眺められる「猫の足跡畑」の葡萄で造られるDomaine Mie Ikenoの2014年ヴィンテージが、間もなく発売開始される。少量生産で引く手あまただが、葡萄が成長し2014年には合計1万本近くはできたという。2011年の初ヴィンテージ以来、最大の本数だ。

 

<猫の足跡畑>

一足早く試飲させてもらえるというので、八ヶ岳まで駆けつけた。ちょうど雨があがった6月5日の午後、池野美映が待つ標高750mにある「レ・パ・デュ・シャ=猫の足跡畑」を訪ねると、葡萄の葉が眩しいぐらいだった。八ヶ岳でも特に夜間はたっぷり降ったというが、ぬかるみなどまったくなく、フカフカとした土だった。昔は桑畑だった場所だ。砂と粘土混じりの火山灰土壌で、表土は20cmしかない。水はけのよい土壌なのだ。

 

通常ゴールデンウィーク中に発芽が始まり、その後にグングンと伸びてくるから畑仕事で大忙しになる。芽かきは既に終了し、今は副梢を取り除き誘引の作業をしている最中だという。小さなつぼみが見え、これから開花が始まるだろうと聞きながら写真を撮ろうとすると、咲いている房があることに気がついた。2016年開花発見第一号の名誉を得ることができた。

 

 

丘の頂から南東向きの斜面の、3.6haのひと続きの畑で、最も条件のよい頂上にはピノ・ノワールを植えている。2007、2008、2009年で植樹を終え、シャルドネ40%、ピノ・ノワール30%、メルロ30%の構成だ。ここは晴天率が高いことでも知られ、年間で2,400時間以上の日照時間がある。山に囲まれているため台風の被害も少なく、あまり大雨が降ることもなく、降水量は1,000〜1,100mmと比較的少ない。そして標高が高く日較差が大きいなど、葡萄栽培に最適な条件が揃っている。

 

<2014年ヴィンテージ>

2014ヴィンテージに初試みをしたという。「月香(つきか)」という名のシャルドネを造り始めたのだ。ラベルにはMoonlight Harvestと記してある。いわゆるナイト・ハーベストをしたシャルドネを醸したキュヴェだった。朝2時から収穫したという。葡萄の香り成分や酸を生かしたワインに仕上げるためだ。

「月香シャルドネ2014」は、柚子のような柑橘系果実の香りがほんのりとしたバニラ香と共に立ちのぼり、とてもフレッシュで上品で、味わいも生き生きとした酸が心地よく細く長い体形だ。

一方「シャルドネ2014」は、前年の2013年が太陽の恵みをしっかりと取り込んだ凝縮感あるタイプだったことを思い出すと幾分引き締まった様子だが、「月香2014」と比べると色合いだけでも濃いとわかる。香りも味わいもより丸みや厚みがあり、リッチな仕上がりだ。「ムルソーが好き」という池野の好み通りの味わいだ。

 

このふたつの銘柄は、前者が9月20日の早朝の収穫なのに対して後者は9月23日の収穫だったというが、3日だけでこれだけ仕上がりが異なるのかと驚いた。アルコール度数はほとんど変わりがないようだが、香りのプロファイルも、酸も、体形そのものも随分違っていた。好みやT.P.O.次第で飲み分けられそうだ。加えて、数年後にどのように熟成していくのかを比べてみたい、という誘惑に駆られた。

 

「メルロ2014」も味見して、2013年のメルロを思い出した。同じようにスパイシーさが感じられたからだ。黒胡椒というよりは丁字に近いだろうか。とても細やかなパウダー状のスパイスが鼻腔をくすぐるようなニュアンスだ。メルロらしさと共に、まさに猫の足跡畑らしさが綺麗に表現されていた。

「八ヶ岳の自然をそのまま詰め込んだような、凛としたエレガントなワインをつくりたい」というのが、池野のコンセプトだ。やはり「ワインには私が存在しないようにしたい。透明な存在でありたい」と言う。しかし、池野らしい仕事の丁寧さと葡萄への愛情表現は、隠しようがないようだ。(Y. Nagoshi)

 

追記:ドメーヌ ミエ・イケノのオンラインショップでも、すぐに売り切れになるようだが、「星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳」に行けば飲める。ホテル内に あるYATSUGATAKE Wine houseでは、有料試飲コーナーがある。いくらかショップの在庫もあるかもしれない。また、リストランテ OTTO SETTEでもオンリストされている。野菜とワインのマリアージュ ”Vino e Verdura” は、料理13品とミエ イケノを含む11種類のワインのコースも準備されている。

 

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