拡大つづけるクラフトビール市場/大手は生産増強、自家醸造も増える

「東京都内では、クラフトビールを扱う店が毎日5~6店舗ずつ開店している」といわれるほど、今はクラフトビールブームだ。カフェ業態でも取り扱いをはじめる動きが目立っている。

地ビール・クラフトビールの市場規模を示す正確な統計データはないが、国税庁と大手ビール5社が加盟するビール酒造組合の公表数字(課税数量)から、おおよその市場規模を捉えることができる。その経年変化をまとめたのが別表である。

地ビール・クラフトビールの市場規模<推計> 単位:kℓ
2015 2014 2013 2012 2011 2010
ビール課税数量① 2,736,907 2,728,995 2,754,454 2,794,566 2,805,570 2,925,769
ビール5社ビール② 2,713,277 2,708,499 2,736,028 2,784,127 2,791,185 2,911,476
③(①—②) 23,630 20,496 18,426 10,439 14,385 14,293
④(③÷①) 0.86 0.75 0.67 0.37 0.51 0.49
発泡酒課税数量⑤ 779,703 776,879 743,480 793,863 860,776 988,119
ビール5社発泡酒⑥ 776,040 774,017 741,182 791,564 859,767 987,058
⑤—⑥ 3,663 2,862 2,298 2,299 1,009 1,061
注)課税数量は①⑤が国税庁発表、②⑥がビール酒造組合発表による。いずれも国産分。

 

この表について説明すると、国税庁の課税数量(①)からアサヒ、キリン、サントリー、サッポロ、オリオンの大手ビール5社の課税数量(②)を差し引くと地ビール・クラフトビールの推定市場規模(③)となる。昨年は2万3630kl。ビール市場全体に占める構成比(④)は0.86%となり、まだ1%には届いていない。ただ、ここ2~3年で大きく伸長していることは一目瞭然だろう。

1994年4月の酒税法改正により、ビール製造免許を取得する際の最低製造数量基準が2000klから、(清酒の免許と同じ)60klに規制緩和され、地ビールの製造が実質的に解禁された。地ビール醸造所数はその後一気に増え、1999年にピークとなる264場(262者)に達したが、その後は漸減傾向にある。国税庁の直近の公表統計によれば、2013年は179場(173者)となっている。

昨年9月に東京商工リサーチが地ビールメーカー178社を対象に実施した「地ビールメーカー動向調査」(回答は77社)によれば、「7割超で出荷量が増加し、(生産増強しているが)生産能力の限界に近づいている」という。このため、上位メーカーでは第二工場の建設などにより、生産増強に動き出している。

一方、別表では発泡酒も算出した。ビールと同じく昨年の課税数量から大手5社分を差し引くと3663kl。これには特産原料などを加えて、地域性を出すような形で製造している麦芽使用比率の高い発泡酒(麦芽使用比率50%以上)が含まれている。

つまり、現在の地ビールと呼ばれているものの中には、2つの違った種類がある。ひとつは最低製造数量60klのビール免許での製造者(狭義のビール)であり、もうひとつは、その10分の1である6klの発泡酒免許での製造者(広義の地ビール)による製品だ。

日本の酒税法でビールと呼ぶには麦芽比率が67%以上であることが第一の条件であり、さらにビール原料には主原料である麦芽、ホップおよび水に加えて、麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でんぷん、糖類を副原料として使用できる。これ以外の原料を使えば発泡酒となる。

国税庁によれば、発泡酒免許での製造者(主に自家醸造製造者)がここ数年増えているという。同庁の「地ビール等製造業の概況」調査によれば、大手および研究などの試験免許、さらに販売実績のない免許を除いた発泡酒製造者は2013年が215者。2012年が119者、2011年が112者なので、年々増加傾向にある。これは新規と廃業を合算した数字なので、新規免許取得者はさらに多い。増えているのは主に飲食店併設のパブブルワリーであり、新たなビール文化を創造しているという面もある。

ちなみにビール免許の60klは330ml瓶に換算すると18万本。これを365日で割ると493本。毎日平均約500本を3年間売り続けないと永久免許がもらえない。一方、発泡酒免許はその10分の1なので、毎日約50本となり、参入のハードルはぐんと低くなる。

さて、地ビール・クラフトビールの市場規模に話を戻そう。

別表で算出したビールと発泡酒を足すと2万7300kl。これだと構成比はほぼ1%ということになる。また、キリンビールは大手各社のクラフトビールを加えた昨年のクラフトビール市場を約4万klと推定している。これだと構成比はゆうに1%を超えるが2%にはまだ届かない。今回、算出したのは国産のみなので、これに輸入クラフトビールを含めれば、日本における地ビール・クラフトビール市場はさらに拡大しているという見方もある。

今回、地ビール・クラフトビール市場を牽引する最大手のヤッホーブルーイングと軽井沢ブルワリーを訪問した。(そのレポートについては、ウォンズ6月号をご覧下さい)(A. Horiguchi)

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