ギリシャワイン マスタークラスセミナー 2016 by コンスタンティノス・ラザラキスMW

6月22日に、ギリシャで2人目のマスター・オブ・ワインであるコンスタンティノス・ラザラキスMWによるセミナーが行われた。代表的な産地と葡萄品種を試飲しながら、産地特性を語った。そのエッセンスをまとめる。

 

<ギリシャワインの概要>

*ギリシャワインの生産量:ボルドーの(600万hl=8億本)半分以下。

*ギリシャ1社あたりの生産量:シャトー・マルゴー(年間30万本)の半分以下。

*輸出量:生産量の20%以下。

*葡萄品種:特殊な地元品種が多い。既に150種類の地元品種が確認されているが、更に150種類が存在するだろうといわれている。イタリアは4,000万hlを生産し、葡萄品種は1000種類以下ほどある。量はイタリアの8%に過ぎないが、品種の数はイタリアの3分の1。「ギリシャはまさに葡萄品種のジュラシックパークといえる」。

つまり、生産量は少ないが地元品種のバラエティが豊かな国なのだ。ギリシャ語に慣れない日本では生産地や葡萄品種名を覚えるには時間を要するだろうが、ある意味で飽きることがない。探究心に溢れる人向けの産地だ。

また、ラザラキスMWの「ギリシャのワインは常にリフレッシュさせてくれる」という言葉が印象に残った。というのも、11種類のワインを試飲して甘口以外に共通して感じたのが、酸の高さ、ミネラリティーあるいはちょっとした口中での刺激、後味に残る独特のフレッシュさ、だったからだ。

現存するとされる300品種より多くの葡萄がこの国で栽培されてきたに違いないが、長い歴史の中で、栽培・醸造・嗜好という多くのフィルターにかかり淘汰されて残った品種の共通特性が、フレッシュさだったのだろう。

 

<多様な地元品種>

*モスホフィレロ Moschofilero/ピンク

芳香性が高いトラミナーの仲間。ピンク色の果皮で、白、ロゼ、グリ・ド・ノワールもできる。ペロポネス半島が主産地。PDOマンティニアはこの品種のみ使用可。マンティニアは山に囲まれた平地で、内陸性気候。8月に他が35℃の温度でもここは25℃。酸が高く。アルコールが12.5を越えることない。pHは3.0以下。若いうちに消費するワイン。

モスホフィレロ2015 Moschofilero 2015 <ドメーヌ・スクーラスDomaine Skouras> PGIペロポネス。花、柑橘類、若いスモモなどのアロマティックな香り。なめらかなアタックとキリッとした酸が印象的。

*マラグシア Malagousia/白

1994年に初めてこの品種からワインが造られた。大学の研究者がギリシャ西部を2か月かけて発見。今ではギリシャ全土で100銘柄ほど造られている。酸は中程度でアルコールは高め(13.0-13.5%)。オークとも好相性。早めに収穫するとミントやお茶、遅摘みは桃、柑橘類、トロピカルフルーツが香る。

マラグシア マツァ ブタ2015 Malagouzia Matsa Boutari <J. Boutari & Son> PGIパリニ。マツァは畑名。ステンレスのみ。早めに収穫したタイプ。ミントや茶葉、堅めのストーンフルーツの香り。とてもフレッシュ。

コンスタンティノス・ラザラキスMW

コンスタンティノス・ラザラキスMW

*アシルティコ Assyrtiko/白

サンントリーニ島の品種。サントリーニでは収穫量は15hl/ha。アロマは強くないが爽やか。高い酸があり、ミディアムからフルボディ。アルコールは高く15%のものも。アロマは青りんご、白桃、貝殻。樽醗酵・樽熟成により、熟した果実、蜂蜜、蜜蝋、石油、火打石などの香りも。長期熟成可能。シャブリグランクリュと同等の品質だが価格は4分の1。

タラシティス Thalassitis 2014 <イエア ワインズGaia Wines> PDOサントリーニ。アルコールは低めで13%。ほんのりバニラ、アプリコット、ミラベルの香り。まろやかだがら引き締まる酸がありレモンピールの刺激も。

*アギオルギティコ Agiorgitiko/黒

最大の赤ワイン産地ネメアの主要品種。PDOネメアは100%で。チャーミングな品種で、ロゼ、軽い赤、ミディアムボディも。タンニンは豊かで熟成可能。色が濃く、酸は中程度から高め。甘い赤い果実、甘いスパイス、チョコのアロマ。カベルネ・ソーヴィニョンとのブレンドも。樽との相性もよい。

ネメア グランド レゼルヴ Nemea Grande Reserve 2009 <カヴィノ Cavino> PDOネメア。少しローストやトースト、熟したチェリーやプラムのたっぷりとした香り。なめらかさでタンニンが豊か。

*クシノマヴロ Xinomavro/黒

クシノ=酸っぱい、マヴロ=黒という意味の、高貴な品種。軽いものからフルボディまで多様なワインに。赤い小さな果実、酸の高いチェリー、オリーブ、トマトのアロマ。酸がしっかりし、豊かで乾いたタンニンが特徴。栽培が難しいが、長期熟成可能。伝統的なスタイルは色は淡く、トマト、キャベツ、黒いオリーブ、赤い果実の香りでしっかりとしたタンニン。モダンなスタイルは、色が深く、果実味たっぷりでタンニンはなめらか。ネッビオーロやピノ・ノワールと比較される。北西部の産地、グメニサPDOはクシノマヴロを80%まで、PDOナウサは100%で。

オールドルーツ クシノマヴロOld Roots Xinomavro 2012 <タチス Tatsis Winery> PGIマケドニア。グメニサのワイナリー。90年樹齢の単一畑。ビオディナミ認定。スグリや野いちごのような酸のある果実、赤い小さな花の香り。しなやかなテクスチャーで、酸がしっかりし、タンニンは次第に現れる。

 

「ギリシャワインは量が少ないため、決して主流派になることはない。だからこそ、我々は特定の消費者に飲んでほしいと考えている。オープンマインドで、ギリシャワインのユニークさを理解してくれる人にだけ」と、コンスタンティノス・ラザラキスMWはセミナーをしめくくった。(Y. Nagoshi)

(品種名の後は果皮の色。ワインはいずれもそれぞれの品種100%)

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