ナパのア・レンダ・ヴィヴァ フリーマーク・アビー

フリーマーク・アビーをナパの修道院跡で造るワインだと思いこんでいた。

 

古くから日本に輸入されていたワインで、かつてセント・ヘレナの29号線沿いで見かけた記憶もある。けれどもフリーマーク・アビーは修道院とは縁もゆかりもない。このワイナリーを買い取った三人のビジネスマンの名前を組み合わせた造語なのだという。チャールズ・フリーマンCharles Freeman、マーカンド・フォスターMarquand Foster、アビー・エイハーンAbbey Ahernの三人の太字部分の組み合わせである。まったく上手に創ったものだ。名前をもじってそれらしい雰囲気を帯びた言葉にするのは、日本でいうと鳥居さんのサントリーや石橋さんのブリジストンにあたるのだろうか。

 

フリーマーク・アビーは、初めはティクソン・セラーズという名前で1886年の創業らしい。ナパで10番目となる古いワイナリーだ。しかも醸造家はジョセフィーヌ・ティクソンという人で、ナパ初の女性オーナーだったという。カリフォルニア特産のレッドウッドを使った木造の建物だった。その後、アントニオ・フォルニが買い受けロンバルダ・セラーズと改名し、石造りのワイナリーになった。1899年のことである。材料はグラス・マウンテンから採石したもので、いまでも樽熟成庫に使われている。

 

禁酒法の時代にいったん閉鎖されたが、1939年、くだんの三人が買い取って再開し、フリーマーク・アビーがスタートした。禁酒法以降、ナパで16番目に登録されたワイナリーだという。それからもワイナリーの所有権は幾度か変わり、2005年に現オーナーのジャクソン・ファミリーに渡った。このほど来日したジャクソン・ファミリー・ワインズのデヴィッド・バウマン副社長は、「変わらないのはフリーマーク・アビーのワイン・スタイルだ」という。

 

醸造責任者のテッド・エドワーズは1985年からフリーマーク・アビーを造り続けている。この間、ナパだけでなく世界中でワインの濃縮が持て囃されたが、そういう時代にあっても頑なにフリーマーク・アビーのクラシック・スタイルを守り通した。濃縮の時代が一段落したいま、ナパのクラシック・スタイルはいよいよ輝きを増している。

 

冷涼なロス・カーネロスのブドウを使う「シャルドネ2014」は、マロラクティック発酵をまったくせずにフレンチオークで6か月熟成する。ミッド・パレットに感じるシャープなリンゴ酸は、試飲時にはややきつく思えたが、食事と合わせるときりっと活きてくる。

 

「メルロ2013」はハウエル・マウンテンとアトラス・ピークのブドウで造る。スパイシーなアロマ、引き締まった複雑な味わいのシリアスなメルロだ。

 

Freemark Abbey Cabernet Sauvignon Sycamore Vineyard 2005「カベルネ・ソーヴィニヨン2011」はブドウをナパ全土から調達して造るAVAナパヴァレーのワインだ。冷涼で湿気の多かった2011年ヴィンテージを造るとき、テッド・エドワーズはメルロを18%(平年よりとても多い)も加えることでフリーマーク・アビーらしさを表現した。これでグリーンの要素を引き出すことなくアルコール分も13.5%に収めた。「2013年産はテッドの優れたスキルを垣間見た気がした」とデヴィッド・バウマンは評価する。

 

Freemark Abbey Cabernet Sauvignon Boshe Vineyard 2010フリーマーク・アビーのカベルネには二つの単一畑シリーズがある。いずれもAVAラザフォードの畑だが性格の異なるワインが生まれる。「カベルネ・ソーヴィニヨン・シカモア・ヴィンヤード2011」は南のオークヴィルに隣接する粘土質土壌の畑のブドウで、緻密なタンニンときれいな酸味のバランスがよい。一方、ボッシュ・ヴィンヤードはシカモアより暖かく土壌には小石がたくさん混ざった畑だ。「カベルネ・ソーヴィニヨン・ボッシュ・ヴィンヤード2010」は熟した果実の甘みがあり、たっぷりした豊潤な味わい、きれいな酸味が後口を引き締めてくれる。

 

フリーマーク・アビーは2013年から醸造所の改築に取り組んできた。19世紀末の石造りのセラーを活かしながら、ワイン愛好家が気軽に訪ねやすいワイナリーへと変貌を遂げ、今年6月にリニューアル・オープンした。「Two Birds One Stone(一石二鳥)」という名のレストランが併設されている。ここではフリーマーク・アビーのワインはもちろんのこと、ナパやソノマの小さな造り手のワインも揃えている。ワインの持ち込みも1本25ドル支払えばO.K.で、ナパ・ソノマのワインなら無料だ。またクラフトビールの品揃えも充実している。(K.B.)

画像:フリーマーク・アビーを所有するジャクソン・ファミリー・ワインズのデヴィッド・バウマン副社長

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