ペリエ ジュエの真髄 グラン ブリュットができるまで 〜畑から食卓まで〜 その3 酵母のマジックと仕上げのスパイス

1811年創業で200年以上の歴史あるメゾン「ペリエ ジュエ」は、その優雅さとエレガンスの極み「ベル エポック」で知られるが、一番の顔である「グラン ブリュット」においても共通したアスペクトを感じとることができる。エレガントでフローラルな「グラン ブリュット」ができあがるまでの行程を、最高醸造責任者エルヴェ・デシャンに聞いた。

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地下セラーで眠りについているベル エポック

その3 酵母のマジックと仕上げのスパイス

<瓶内熟成中に起きていること>

地下セラーにはアーティストによるオブジェも

地下セラーにはアーティストによるオブジェも

シャンパーニュの楽しみのひとつである細やかな泡立ちは、瓶内二次発酵という方法で生まれ出る。ベースワインとリザーヴワインをアッサンブラージュし、更に二次発酵用の酵母と酵母の活動のために必要な糖分をワインに溶かしたリキュール・ド・ティラージュを加え、栓をして地下セラーで数年間寝かしておく。通常、22gの砂糖が1.5%ほどアルコール度数を上げると共に、6気圧の泡となる。

地下セラーは、年間通して10〜12℃前後の低温で湿度は極めて高い状態にある。だから、低い温度帯でも活動できる酵母を選ばなければならないのだが、この低温だからこそ酵母がゆっくりと仕事をする。これもシャンパーニュらしさを醸し出す、ひとつの自然環境だ。

もしペリエ ジュエを訪問する機会があれば、その静かでひんやりとした地下セラーを楽しみにしてほしい。ペリエ ジュエは数々のアーティストとのコラボレーションを行っているが、彼らの作品がその空間でゆったりと観賞できる。

グラン ブリュットの瓶内熟成期間は2.5〜3年あり、このうち初めの1.5〜2か月ほどが、いわゆる瓶内二次発酵に費やされる。その後もそのまま何年か地下セラーで長い眠りを与えるのは、醗酵を終えた酵母がワインに豊かさやまろやかさ、新たな香りをもたらすからだ。例えばトーストやビスケットのような香ばしさもそのひとつ。

エルヴェ・デシャンたち醸造チームのメンバーは、ワインが眠る間にも定期的に試飲を重ねる。「3か月ぐらい経ったものは、まだイーストの香りが強く、酸も高い。半年ほどで、フルーツのアロマが勝ってくる。そして、ようやく1年経過する頃に、プラスアルファの香りも感じられるようになる。アルコールが酸を包み込み、味わいも柔らかになってくる」。

泡、アルコール、そして独特の香味を生み出す酵母は、まるで妖精かマジシャンのようだといつも思う。

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ボトルネックに集められた澱。これはロゼなのでピンク色をしている

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こちらも美しいオブジェ

<グラン ブリュットのドザージュ>

19世紀からの名残だろうか「ペリエ ジュエはイギリススタイルだと言われてきた」という。イギリスで、アペリティフにポートワインを飲み、その後でシャンパーニュでリフレッシュして、それから食事に入る習慣があった。ペリエ ジュエの辛口加減が、ちょうど適していたようだ。

「グラン ブリュット」のドザージュ量は、30年前からずっと8〜10g/lで変わりないが、ドザージュを決めるには、2段階の行程を踏む。デゴルジュマンの半年ほど前から試飲を始め、まずリキュール・デクスペディション用のリザーヴワインを選定する。その後、3か月ほど前からは糖分のレベルを決める試飲を行う。どちらも醸造チームの5名でブラインド・テイスティングを行う。一度では決まらず、ダブルで試飲することもある。

ペリエ ジュエのスタイルに合い、グラン ブリュットのスタイルを踏襲すること、そして「ハッピーになる味わい」になることが条件だという。

「ドザージュは、本当にファイナル・タッチ。塩・胡椒のようなもの」。ただ、ブラジルで7種類の塩やサルサで肉を食べた経験を話してくれたが、同じ肉でも調味料で様々な顔に変化したという。やはり、仕上げのスパイスは重要な微調整なのだ。(Y. Nagoshi)

(一部画像提供 輸入元:ペルノ・リカール・ジャパン )

ペリエ ジュエの真髄 グラン ブリュットができるまで 〜畑から食卓まで〜

その1 グラン ブリュットのベースとなる葡萄

その2 グラン ブリュットを創り出す技術と感性

その3 酵母のマジックと仕上げのスパイス

その4 グラン ブリュットのあるべき姿とその継承

その5 食卓にてグラン ブリュットに華やぎを

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