BIRROFORUMビッロフォルム ワインの国イタリアのクラフトビール事情

世間はすっかりクラフトビール・ブームである。

今年上半期のワイン消費が芳しくなかったのは、その一部がビール消費に移動したからではないかとも言われている。そんな折、イタリアから「クラフトビール祭り」を開催するから来ないかという誘いがきた。クラフトビールは日本だけでなくイタリアでも大いに盛りあがっているらしい。ワインの国・イタリアでどうしていまクラフトビールなのか。

 

ローマを流れるテヴェレ川西岸の北側にスタディオ・オリンピコがある。現在はAS ローマとSS ラツィオのホーム・スタジアムだが、もとは1960 年に開催されたローマ・オリンピックのメイン・スタジアムだった。そのスタジアムとテヴェレ河畔の間にいくつものテントを仮設してイタリアのクラフトビール祭り「BIRROFORUMビッロフォルム」が開催された。

イタリア各地からクラフトビールの生産者がやってきて出店し、ローマ在住のビール愛好者が入場料8 ユーロ、好みのビールに100ml あたり1 ユーロを支払い、フードメニュから食べたいものをいくつか選んで一緒に楽しむ。会場には若者が多く、ベビーカーを押した家族連れもみられた。

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会場の一画に大きなテントが一張りあり、そこではアッソ・ビッラ(イタリアビール協会)の「クラフトビール試飲セミナー」がスクール形式で開催されていた。参加者は熱心に聞き入り、クラフトビールを学んでいた。

イタリアビール協会のカルロ・スキッツェロットがイタリアのクラフトビールの歩みを説明した。

イタリアでクラフトビールを造る動きが始まったのは1990 年代半ばのことだという。英国やベルギーでは1980 年代にクラフトビール革命がおきているから、イタリアはそれより10 年遅れて動き出した。まだ20 年しかたっていない。

 

はじめはブルー・パブの出店が主体だった。当時のビールのテイストはおおよそフラットなものが多く、たくさんの人を惹きつけるには至らなかった。その後、年を経るごとにマイクロ・ブルワリーが生まれ、イタリアのクラフトビールも個性的な味わいをつくり出せるようになっていった。

ピエモンテ州ノヴァーラ県ボルゴマネロにマイクロ・ブルワリーを構えるオリヴィエロ・ジベルティは、ソムリエから転身してビール造りを始めたという変わり種だ。

「レストランでワインをサービスしていて、なんだかワインを取り巻く堅苦しい雰囲気に嫌気がさした。そんな時、クラフトビールに会った。それでクラフトビールの世界に入ったら、いまは両方をすっきり見ることができるようになった」とオリヴィエロは転機の理由を述懐する。

 

ビッロフォルムを取材する前にアスティでスプマンテの造り手を訪ねたのだが、その営業担当が、

「実家はアスティの近くにある長く続くブドウ栽培農家で、私も収穫期には手伝っている。じつは今秋の収穫を終えたら実家にクラフトビールの機材を備えてマイクロ・ブルワリーを始めようと思う。クラフトビールはピエモンテでも人気が出ているんだ。ぼくもビッロフォルムに行きたいな」と、ビッロフォルムへの参加を羨ましがられた。

 

大方の話を総合すると、若い世代の消費者はどこか古臭くて肩の凝るワインの世界から離れ、もっと気軽に楽しく飲めるクラフトビールに魅力を感じている。彼らはアルコールの強いワインより、もっと軽くて爽やかな味わいを求めている。こういう嗜好を取り込んだビールを造ろうというのが新しい生産者の主たる考え方のようだ。

現在、イタリア全土に800 軒のマイクロ・ブルワリーがある。このほかにビア・ファームという自らは醸造設備を持たず、醸造所に出かけてオリジナルビールを造り、それを販売する人たちがいる。さらにブルー・パブの出店も盛んだ。

原料の麦は自国産を使うが、ホップは北米やヨーロッパ各国から輸入したものを使っている。イタリア産のフレッシュ・ホップもあるにはあるが、使っているのは北部の一部の生産者だけで、イタリア産ホップはまだ実用化されているとは言えない。

ところで、そもそもクラフト(手造り)ビールとはなにか。イタリアにはまだこの問いに対する明快な定義はない。日本も同じことのようだ。ただアメリカのブルワーズ・アソシエーションはクラフトビールを定義している。それによるとクラフトビールとは、

-small 小規模生産

-independent 大手から独立していること

-tradition 伝統的な原料と製法

の3点だという。

 

しかしここにも、何をもって小規模というか、大手による当該ブルワリーの株取得が何%までなら独立した企業とみなすか、伝統製法(原料)とは何かなど、大いに議論の余地はあるようだ。

イタリアのクラフトビール製造にはライセンスは要らない。しかしそれを流通したり販売したりするための免許は必要だ。これはクラフトビールだけでなくワインも同じことだ。ただ税金は、ワインが無税なのに対して、クラフトビールは他のアルコール飲料と同様、アルコール度数に応じて課税される。

先に紹介したオリヴィエロ・ジベルティによると、

「イタリアのクラフトビールは20 年の歴史を経たが、味わいの点では、まだいくつかの要素が突出していてバランスに欠けている気がする」という。たしかに幾つか飲んでいるうちに飽きてきて、ついには日本のビールが飲みたくなった。

ビッロフォルムに出店している醸造所の製品は、特にエール・タイプが多かった。アメリカン・ブロンド・エール、インディアン・ペール・エール、ベルジアン・ストロング・エールがどうやら定番のように見える。そして大方の製品にはIBU = International Bi­tterness Unit(苦味の単位)がきちんと添えてある。苦みの程度がわかって試飲の際にはとても便利だった。(K.B.)

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