小容量サイズのウイスキー市場動向 ビックカメラ26店のトップは『竹鶴』

ビックカメラグループ広報の協力により、ビックカメラ26店(酒有全店)におけるミニチュア及びハーフサイズ以下のウイスキー売上ランキング(上位20位)を入手することができた。その“ビックデータ”が別表である。

それによると、ミニチュアボトルの売上ランキングトップは『竹鶴ピュアモルト』、2位は『シングルモルト余市』、3位は『シングルモルト宮城峡』と国産がトップ3となっている。さらに4位以下はお馴染みのバーボン、スコッチの有力銘柄が続き、『ザ・マッカラン12年』を除けば、いずれも1000円以下で、ほとんどがワンコインで購入できる価格帯だ。一方、16位から20位までは台湾・カバランの商品群が並んでいる。カバランのミニチュアボトルはどれも1本1000円以上となっており、他と比べると明らかに高額価格帯である。その仕様は従来のサンプル用としてではなく、明らかに販売用に開発されたものだということが分かる。

ビックカメラ26店におけるウイスキー売上ランキング①(ミニチュアボトルのみ)
順位 原産国 商品名 容量 税抜価格
1 日本 ピュアモルト竹鶴 50ml ¥390
2 日本 シングルモルト余市 50ml ¥530
3 日本 シングルモルト宮城峡 50ml ¥530
4 アメリカ メーカーズマーク 50ml ¥498
5 アイルランド ジェムソン 50ml ¥195
6 アメリカ フォアローゼス 50ml ¥224
7 アメリカ ジャックダニエル 50ml ¥467
8 スコットランド グレンリベット12年 50ml ¥458
9 アメリカ ジムビーム 50ml ¥258
10 スコットランド ザ・マッカラン12年 50ml ¥1,080
11 スコットランド シーバスリーガル12年 50ml ¥418
12 日本 スーパーニッカ 50ml ¥310
13 スコットランド グランツ 50ml ¥265
14 スコットランド オールドセントアンドリュース ゴルフボール 50ml ¥628
15 スコットランド オールドプルトニー12年 50ml ¥599
16 台湾 カバラン シェリーカスク 50ml ¥1,780
17 台湾 カバラン コンサートマスター 50ml ¥1,180
18 台湾 カバラン バーボンカスク 50ml ¥1,480
19 台湾 カバラン クラシック 50ml ¥1,180
20 台湾 カバラン バーボンオーク 50ml ¥1,180
ビックカメラ26店におけるウィスキー売上ランキング②(ミニチュアボトルは除く)
順位 原産国 商品名 容量 税抜価格
1 日本 ブラックニッカ クリアブレンド 180ml ¥267
2 日本 シングルモルト余市 180ml ¥1,080
3 スコットランド ザ・マッカラン12年 350ml ¥2,780
4 日本 シングルモルト宮城峡 180ml ¥1,080
5 スコットランド シーバスリーガル ミズナラ 350ml ¥1,780
6 スコットランド ジョニーウォーカー ブラックラベル 200ml ¥781
7 アメリカ ジャックダニエル 200ml ¥720
8 スコットランド ボウモア12年 350ml ¥2,380
9 アメリカ IWハーパー ゴールドラベル 200ml ¥553
10 日本 ブラックニッカ リッチブレンド 180ml ¥362
11 スコットランド グレンフィディック12年 350ml ¥1,980
12 スコットランド バランタイン ファイネスト 200ml ¥562
13 スコットランド ラフロイグ10年 350ml ¥2,580
14 スコットランド ジョニーウォーカー レッドラベル 200ml ¥429
15 アメリカ アーリータイムズ イエローラベル 200ml ¥480
16 スコットランド ザ・マッカラン12年 ファインオーク 350ml ¥2,480
17 日本 角瓶 180ml ¥480
18 アメリカ ワイルドターキー8年 200ml ¥980
19 スコットランド ラフロイグ セレクト 350ml ¥2,380
20 アメリカ ジムビーム 350ml ¥553

 

ミニチュア購入層は外国人観光客

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ビック酒販新宿東口店の大宮友紀店長

ビック酒販新宿東口店の大宮友紀店長に話を聞くことができた。新宿東口店では4年前のオープン時からミニチュアボトルだけを取り揃えた棚を設置し、POPで品揃えの多さを訴求することで、ウイスキー売り場の中で差別化を図っている。また、ハーフやベビー(180mlや200ml)サイズはフルボトルの隣に商品陳列することで、買い上げ点数のアップにつながっているという。

大宮店長によれば、「ミニチュアの購入層は圧倒的に外国人観光客が多く、国産のジャパニーズウイスキーを、お土産用にキーホルダーを買い求める感覚で、10本~20本とまとめ買いするケースが多く、中には100本をまとめ買いする人もいる」という。

とはいえ、ビックカメラ26店でも立地によって外国人観光客の来店数に店ごとの違いが見られ、新宿東口店(ビックロ)はかなり多い方だが、東京・有楽町店や大阪・難波店はさらに多いため、ミニチュアボトルの売上も大きいという。また、商品の品揃えについても店舗によってかなりのバラツキがあるという。

『山崎』『白州』『響』のミニチュアボトルは今回のランキングで20位までに姿を見せていないが、これらの銘柄は、全体的に品薄で入手困難という背景があるようだ。

 

ベビーは『ブラックニッカ』がトップ

一方で、ハーフやベビーサイズの購入者には外国人観光客はほとんどいないという。特にベビーでは、ポケットサイズの『ブラックニッカクリアブレンド』がランキングトップとなっている。「購入者のほとんどが昔からの愛飲者。バックに入れて持ち運びしやすく、登山やハイキングなどのアウトドアや旅行中に電車の中で楽しむために購入するケースが多い」と大宮店長。

ハーフサイズについては、スコッチウイスキーの有力銘柄である『ザ・マッカラン12年』『シーバスリーガル12年ミズナラ』『グレンフィディック12年』などが上位にランキングされている。

「自宅用や贈答用のいずれの場合もフルボトルの箱入りの方が購入頻度は高いが、女性がバレンタインデーにウイスキーとチョコレートをアソートする場合などに、ハーフサイズを購入するケースもある」という。『ザ・マッカラン12年』では、フルボトル1本を購入するよりも、シェリーカスクとファインオークの2種類をハーフサイズで飲み分けできる利点がある。また、定年退職される方へのプレゼントなど、御遣い物としてハーフサイズが適度だという見方もあるようだ。

大宮店長は「今後はスコッチだけでなく、バーボンでもハーフサイズの需要は高まるのではないか」と見ている。

 

取り扱いアイテムは減少傾向

メーカーサイドでは、ハーフやミニチュアボトルは製造工程において、手間がかかるため、生産を減らし、フルボトルの生産に注力する傾向がある。ビック酒販でも、取り扱いアイテムは年々減少しているという。

ただ、少量多品種を求める顧客ニーズに応えるため、ビック酒販では、今後も生産を継続しているミニチュアやハーフサイズの商品の取り扱いを強化していく考えだ。

「モノがなかなか売れない現在は“コト”の時代といわれるが、品薄のウイスキーは逆に“モノ”ありきとなる。変化球として容量の違いで差別化するのも一つの手法ではないか」と付け加えた。その上で、大宮店長は「ミニチュアは外国人観光客によるお土産需要だけでなく、日本人にとってもコレクションであったり、味見だったりと、今後も伸び代があると思う。一方で、ハーフサイズについてはフルボトルとのユニットプライスを考えると今後の伸び代はそんなに大きくないのではないか」と見ている。

ちなみに、外国人観光客は免税対象商品としての購入がほとんど。この場合、封を開けて飲むことはできないので、旅行中に日本国内で飲みたい場合は、コンビニなどで買って飲むことになる。コンビニは定価販売が基本のため、割高感はあるが、外国人観光客だけでなく、フルボトルでは量が多い高齢者や出張族には、多少割高であっても購入動機にはなりそうだ。

 

潜在的ニーズに注目する動きも

自分の好みのウイスキーに出会う場はバーなどの外のみとなるが、まだまだバーの扉が重いという若者も多い。いろいろなウイスキーを自宅で飲み比べしたいという場合に、フルボトルでの購入はハードルが高いため、特に高酒齢や高額商品群でのハーフやミニチュアサイズの潜在的ニーズは高いといえる。

酒専門店のやまやでは、2年前から全店規模でミニチュアボトルの取り扱いを開始した。「高齢化や小容量化という時代のニーズに対応するため、レジ周りにミニチュアボトルを配置した。まだ手探り段階で、品揃えは30~40アイテム。ハーフサイズ以下のウイスキーの品揃えは70~80アイテムある。今後はウイスキーだけでなく、スピリッツ&リキュールなどを含めた、容量別の棚割り提案をしていきたい」という。(A.Horiguchi)

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