オーストラリアのロタンドン研究 AWRIコン・シモス講演を採録

シラーズは1831 年にオーストラリアに初めて移植され、今でもバロッサのラングメイル・ヴィンヤードには1843 年に植樹されたシラーズが残っている。おそらく、現存する最古のシラーズだと言われている。

オーストラリアワイン研究所(AWRI、本部:南オーストラリア州アデレード) は、シラーズにみられる胡椒のような香りが、ロタンドンという化合物に由来することを同定した。9 月にワイン・オーストラリアが開催したオーストラリアワイン・グランドテイスティング2016 で、コン・シモス(AWRI グループ・マネージャー)が行ったセミナーの内容を紹介する。

 

<ロタンドンとはなにか>

awrigapeロタンドン研究は、「自分のワインには胡椒っぽい香りがあるが、その理由は何か」という問い合わせに答える格好で2003 年に始まった。研究のかなり早い段階で、胡椒やスパイスのアロマをもたらす原因物質はロタンドンだと同定された。ロタンドンはシベラス・ロトゥンドゥス(和名ハスマゲ)に含まれており、これは3000 年前、エジプト人が食用していたもので、インドや中国では薬草としても使われていた。

ロタンドンはマジョラムの葉やローズマリー、ソルトブッシュ、ゼラニウムなどいろいろな植物に含まれており、胡椒には胡椒風味の強いワインの1 万倍ものロタンドンが含まれていることも分かった。ブドウのロタンドン含有量は190 ナノグラム/kg であるのに対し、白胡椒には202 万5000ng、黒胡椒には120 万5000ng も含んでいる。

シラーズの香味は多様性に富んでいる。チョコレート、赤いベリー、オーク樽由来の香りに黒胡椒やスパイスなどが複雑に詰まっている。AWRI の官能分析チームはいろいろなシラーズを試飲してその第一印象をPCA フロートにまとめた。

するとバロッサのように温暖な栽培地のシラーズは暖かみや甘味が挙げられるのに対して、冷涼地のシラーズは黒胡椒の風味が強いことがわかった。そこでAWRI は、オーストラリア国内の比較的冷涼な栽培地(セントラル・ヴィクトリア、クナワラ、クレア・ヴァレー、キャンベラ、マーガレットリバー)のシラーズを様々な角度から調査、分析した。これは現在も続けられている。

 

<ロタンドンの閾値>

水に溶け込んだロタンドンは約8ng/l でその存在が認められる。しかし複雑な化合物によって構成されるワインの場合、その閾値は16ng/l になる。フルボディなワインならその閾値はさらに高くなる。

1ng/l は、時間に置き換えると3 万2000年の中のわずか1 秒にあたる。もっとわかりやすい例だと、オリンピック用プールにロタンドンを1滴たらしただけで十分にロタンドンの存在が分かるという。しかし、ロタンドンの認識については個体差が大きい。AWRI に勤める官能検査スタッフ50 名がワイン中のロタンドンの閾値分布を調べた。

4000ng/l から始めて徐々にロタンドン含有量を下げていくと、僅か0.4ng/l でも二人のスタッフがロタンドンを感知した。一方、4000ng/l をちょっと下回っただけで9 人のスタッフはロタンドンを感知できなくなった。良いシラーズを造るワインメーカーにもロタンドンを感じとれない人もいる。これは、民族差というより個人差の問題だ。

ロタンドン以外の香味成分についても、閾値の個体差分布は同じような傾向を示すが、他の化合物に比べロタンドンを感じとれない人の割合は少ないといえる。(M. Yoshino)

 

続き(ロタンドンの生成、シラーズにロタンドンが多い理由、まとめインタビュー)につきましてはWANDS 12月号をご覧ください。ウォンズのご購入・ご購読はこちらから

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