ギガルのサン・ジョセフがエレガントな理由

2016年11月初旬に北部ローヌを訪問した。コート・ロティのギガルを取材した際、以前から気になっていたサン・ジョセフについても尋ねた。本誌ではスペースの関係で書ききれなかったため、つづきの話をウエッブにてお伝えする。

 

<徹底した取捨選択>

 ギガルは自社畑を60haほど所有しているが、手頃な価格のクラシック・ラインには購入した葡萄やワインも使用している。しかし、その買い付けはとても厳しい。「普通は、栽培家が自分の葡萄を買ってくれないかと打診する。うちの場合は反対だ」と、当主のフィリップ・ギガルは言う。

ギガルでは3世代に亘る経験を蓄積しており、どの畑の葡萄の品質が高いのかを熟知している。だから、ギガルから栽培家のところへ出向き畑を指名して購入するのだ。「何を買いたいか、だけではなく、何を買いたくないか、という点も重要だ」という。納得した葡萄しか使わない方針が徹底されている。

 

<ヴィーニュ・ド・ロスピス>

 例えば、ギガルのサン・ジョセフを飲むとそれまでのサン・ジョセフのイメージが変わるのではないかと思う。クラシック・ライン、リュー・ディ、単一畑のヴィーニュ・ド・ロスピスの3種類あるが、特にトップ・キュヴェの「ヴィーニュ・ド・ロスピス」は突出したエレガンスを備えている。ここはエルミタージュの対岸にあり、土壌がエルミタージュのベッサールと組成が同じなのだ。

「トゥルノンの花崗岩、あるいはホース・トゥース花崗岩とも言う」。花崗岩の中にまるで馬の歯のような長方形の水晶が入っているからだという。

もとは、地元のオスピス・ド・トゥールノンが所有していた畑で、ドメーヌ・ジャン=ルイ・グリッパとドメーヌ・ヴァルーイが自社畑としていたが、その両方をギガルが1999年に購入した。合計3.4haのテラス状の畑を単独所有することになった。樹齢が20年から80年だ。

ただし、エルミタージュのようなワインになるわけではない。エルミタージュは斜面が南から南西向きなのに対して、ヴィーニュ・ド・ロスピスは南から南東向きにある。だからエルミタージュよりこのロスピスのほうが、より上品でデリケイトな仕上がりとなる。

 

「トゥルノンの花崗岩」

 

<ノーマルなサン・ジョセフ>

 ロスピスは特別だとしても、ギガルのサン・ジョセフに一般的なサン・ジョセフのような少し粗いタンニンはみられないのには理由があった。ギガルは自社畑にしても購入する葡萄やワインにしても、南部のサン・ジョセフのシラーだけを使っている。北部と南部では、土壌や標高はそれほど変わらない。しかし北部は花崗岩とシストの土壌で、南部は花崗岩土壌で50kmも南に位置するためより果実が成熟してソフトになる。

「収穫日は10日も異なる。うちでは、サン・ジョセフの白を収穫して、コンドリュー、サン・ジョセフ赤、エルミタージュ、コート・ロティと続く。普通はコンドリューやコート・ロティの後にサン・ジョセフの赤を収穫するところが多い」。

 

 

St-Joseph Liu-dit 2014 サン・ジョセフの名前が生まれた地所。24か月新樽熟成。試飲した1週間前に瓶詰め。閉じているが、なめらかなテクスチャーでピュアな果実が感じられ、少しスパイシーさが最後に広がる。

St-Joseph Vigne de L’Hospice 2013 13か月新樽熟成。今年2月に瓶詰め。ほんのりとスパイシーさがあり、スミレや果実の香りが上品に立ちのぼる。なめらかな食感で、ボリューム感も適度。キメが細やかで洗練されたテクスチャー。タンニンもとても細やかで豊か。(Y. Nagoshi)

サン・ジョセフ2013

ヴィーニュ・ド・ロスピス2013 (2011, 2010, 2009, 2008, 2007もある。比較試飲すると面白そうだ)

輸入元:ラック・コーポレーション

トップ画像:タン・エルミタージュの街からエルミタージュの対岸を眺めると、ヴィーニュ・ド・ロスピスの畑が見える。ラベルに描かれた絵そのままの風景だった

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