WANDS editorial/2017 酒類市場予測

景気の本格回復に期待しつつ需要喚起の取組がつづく!

 

( 財) 日本漢字能力検定協会が一般公募の結果に基づいて年末に発表している「今年の漢字」。2016 年は“金” が選ばれた。リオオリンピックにおける日本人選手の「金メダルラッシュ」や、さらに前東京都知事の政治資金問題、築地市場の豊洲移転問題など政治と金に絡む問題が次々と浮上したことなどが、多くの人がこの漢字を選んだ理由だという。しかし、自然環境や日本を取り巻く国際的な政治、経済状況に目をやれば、4位に選ばれた「震」、5 位の「驚」こそがふさわしいような年でもあった。

中国経済の減速やブレグジッドによる世界経済の先行き不透明感は日本においても株価のさらなる低迷へと繋がったし、史上初めてとなるマイナス金利の導入にもかかわらず、昨年秋までの為替はどんどん円高へと向かった。ところが、11月の米国大統領選挙の結果と12月のFRB による利上げ発表で、対ドル円為替は急落。米ドルの独歩高状態となっている。逆に株価は強含みに転じ、早くも2017 年の日経平均株価は久しぶりの2 万円超えとなるのではないかとの期待も出はじめている。まさに乱高下を繰り返した一年だった。

2016年は実質GDPが3年ぶりに3四半期連続でプラス成長となった。また、2014年以降マイナス基調が続いてきた家計の最終消費支出は4月以降、2四半期連続で水面上に顔を出している。8月、9月と前年割れだった日本スーパーマーケット協会と日本チェーンストア協会の月次販売実績も、10月以降プラスに転じている。第二次安倍政権発足から丸4年。まだまだ多くの国民がトリクルダウン効果を実感するまでにはほど遠いが、穏やかな景気回復が続いていることは間違い無いだろう。

この間、ますます進行している内食化や個食化、低価格化の影響はお酒の消費にも大きく影響を与えてきた。さらに加えて、景気回復の不透明感や天候不順もお酒の消費にマイナス要因として働いた。カテゴリ別の消費動向を示す酒税課税実績は2016年9月分までしか発表されていないが、1月からの累計で伸びているのはウイスキー(7.9%増)とRTDを含むスピリッツ等(14.6%増) だけ。ビールと発泡酒、そしてこれまで伸び頭として期待を集めてきた果実酒(ワイン)も前年割れを見せている。残る3か月間で、それぞれどこまで持ち直すことができたかを本稿執筆時点で見通すことはできないが、2016 年の酒類消費がなかなか厳しい状況下にあったことは確かだ。

 

2017年の酒類消費は?

2017年の酒類市場はどのように推移するだろうか。

まずは、景気の回復がどこまで安定的に進み消費マインドを刺激できるかが大きな鍵となる。2016年は特に業務用市場が大きなダメージを受けたと言われ続けてきたが、肉バルや銀だこなどの立ち飲み業態は大いに賑わっている。そこでは角ハイボールやジントニなど食との相性を訴求する飲み方提案が大いに支持されている。また、株価が反転しはじめた11 月以降、一部の料飲店では高額ワインも動くようになってきたという声も聞かれる。

2008年から始まった日本人人口の減少傾向は今年も続くだろう。総務省の人口動態予測によれば、30年後の2046年頃には総人口は1億人を割り込むと見られている。しかも現在26%を占めている65歳以上の老人人口は4 割近くまで増加。少子高齢化による飲酒人口の更なる減少は避けられない見通しだ。そういう中では、飲酒の楽しさを、生活を彩る文化性といった面から深掘りしアピールする努力がこれまで以上に求められるだろう。日本スーパーマーケット協会のマンスリーレポートによれば、2016年のボージョレ・ヌーボーの販売数量は減少したものの、「解禁にあわせて、ローストビーフ、チーズ、インストアベーカリーのバゲットなどの提案事例があり、概ね好調であった」という。

一方、2016年の訪日外国人客数(日本政府観光局による推計)は11月までで2199万人に達し、前年同期比で22.4%伸びた。国別内訳では中国、韓国、台湾、香港の順に多く、この4か国で全訪日外国人客数の4分3を占めている。かつてのような爆買いは影を潜めたといわれるが、こうした外国人客の日本滞在中における飲食にどこまで財布の紐を緩めさせることができるかも大きな鍵を握っている。その際に、消費を促すキーワードは何かと言えば、“手づくり( クラフト)” と“和風テイスト”だろうか。

トランプ次期米国大統領が就任当日におけるTPP離脱を宣言していることから、TPP交渉はほぼ暗礁に乗り上げたと見て良いだろう。それに代わる個別各国とのEPA交渉が始まるのかどうか、は現段階ではわからない。一方、これまで遅々として進まなかったEUとのEPA交渉が昨年末来、大筋合意にむけて動き出したというニュースが一部で報じられている。ウイスキーとホワイトスピリッツ、リキュールはすでに暫定税率が無税化されているが、ワイン生産国を多く抱えているEU だけに、EPA妥結となった場合のインパクトは大きいだろう。(市況チーム)

以下、酒類カテゴリ別の市場予測については、WANDS誌1月号をご覧ください。ウォンズのご購入・ご購読はこちらから

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