ビオの実践を通してピュアなワイン造りを進めるドメーヌ・ユベール・リニエ

「ドメーヌのスタイルの基本は父ユベールが確立したものだが、父はどちらかといえば抽出をしっかり行い、肉厚で、がっちりとしたタイプのワインを造ってきた。それに対して、弟のロマンはそこにエレガンスを付け加えた。私はそれをさらに進めて、果実の風味とフレッシュさを備え、ビオロジーの実践を通してテロワールをピュアに表現したワインを目指している」。

モレ・サン・ドニに本拠をおく造り手「ドメーヌ・ユベール・リニエ」から、ユベールの長男で5代目の当主となるローラン・リニエ氏と令嬢のジョアンヌさんが来日し、自らのワイン造りを語った。

ユベールの仕事をサポートしてきた次男ロマンが2004年に急逝した後を受けて、それまでネゴスで働いていた長男のローランが全面的にドメーヌに参画したのは2006年のことだった。このドメーヌは90年代、すでに父の代から化学的なものを排除し全ての畑で耕作を行うリュット・レゾネを実践してきたが、故ロマンはコンヒュージョン・セクシャルや振動型選果機の導入など畑とブドウの管理を徹底し、発酵前の低温醸しによりワインに新鮮な果実香をもたらすなどの新しい挑戦を行ってきた。そしてローランはこれをさらに進めて2011年から全面的に有機栽培に転換。昨年から有機栽培の認定機関への申請に踏み切り、来年2018年には正式認証を受ける予定だ。

「畑の仕事では父から沢山のことを学んできた」と語るローランだが、幾つかの新しい試みを実践している。そのひとつは、耕作の深さを地表から5cmほどにとどめ、地中生物の棲息域を破壊しないように努めていること。また、ブドウの葉の状態や生物層の状態をより子細に注意深く観察するとともに、かつて栽培の効率を上げるためにいったんは伐採した木々を畑の周囲に新植し、生物多様性を富んだ環境を造り上げる。醸造では、発酵前醸しをこれまでより長い6~8日間行い、色乗りや果実のアロマの抽出に意を払う。さらにこれまでは特級畑で50%、1級畑で40%、ヴィラージュで30%だった新樽比率を特級・1級で30%、ヴィラージュで20%まで引き下げる一方で、樽の選択を厳格に行い、焼き方も軽く長くおこなうことで、「できるだけ自然にAOCの特徴を反映するワイン」づくりを目指している。

輸入元ラック・コーポレーションが主催した試飲セミナーで試飲したのは現在リリースされている2014年産のワイン3種。2014年はドメーヌにとって記念すべき重要な年だった。それは、これまで、弟ロマンの未亡人の依頼によりメタヤージュ(分益耕作契約)で造っていた畑を含め、この年から9haの畑全てがドメーヌの元に戻ってきたこと。ユベール・リニエでは自社畑9haのブドウを使ったワインの他、ロマンが2004年から行ってきたネゴスの活動を継承し3haの畑からブドウを買い入れてワインをつくっている。ネゴスのワインもラベルデザインは基本的に同じだが、ただ単にHubert LIGNIERとだけ記載されている。

「2014年は春の天候が不安定だったが、幸い6月には回復し、順調に開花。8月の日照量が少なめだったものの、8月15日以降は収穫終了まで好天が続いた。夏の日照不足で比較的果皮が薄く、タンニンも軽め。大柄なヴィンテージとは言えない。この年にもう一つ頭を悩ませたのは、“ドロソフィラ・スズキィ(桜桃ショウジョウバエ)”の発生だ。2つの区画で収穫前の5日間かけて被害にあった実をすべて落として焼却。ヴィニュロンとしては入念な観察と作業が求められたが、結果的に収穫された葡萄はとても良好だった」という。

Gevrey Chambertin Les Seuvrées 2014 マゾワイエール・シャンベルタンの直ぐ下に位置する小石混じりの畑1.02haでは、樹齢50~75年の古木が栽培されている。小さな実をつけるここのブドウを使って20~25%の割合で全房発酵し、フィルターやコラージュを一切行わず重力を利用した澱引きだけで瓶詰め。2014年産としては色乗りが濃く、筋肉質でしっかりとした骨格をもった味わい。若いが、豊かな果実の風味、肌理細かいタンニンと余韻の長さ、そしてきれいな酸が印象的。いまでも十分美味しいが、20年は十分に熟成可能とか。

Morey-Saint-Denis Trilogie 2014 名前の通り1級畑に隣接するシュヌブリー、クロ・ソロン、ポルーの3つの畑で収穫された最長80年樹齢のブドウを使って、モレ・サン・ドニの典型を表現したワイン。2014年が初ヴィンテージで、生産量は10樽。ha当たりの収量は僅か27hl。ジュヴレ・シャンベルタンを思わせる色調の濃さだが、新鮮な赤い果実とフローラルな香り。

Morey-Saint-Denis 1er Cru Vieilles Vignes 2014 特級畑クロ・ド・ラ・ロッシュに隣接し、1936年と1952年に植樹された二つのリューディのブドウを使用。複雑で奥行きのある香り、滑らかなテクスチャーと凝縮したボリューム感をもった味わい、そして余韻の長さに優れたワイン。(M. Yoshino)

画像:ローラン・リニエ氏と令嬢のジョアンヌさん

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