ラファエル・ウレホラが造るウンドラーガの注目アイテム「テロワール・ハンター」

ブルゴーニュからチリへ戻ったラファエル・ウレホラがウンドラーガで仕事をし始めたのは、2006年のことだった。1885年創業のウンドラーガにとって、ちょうど大きな転換期となった年だ。経営体制を新たにし、全てのレンジを変更した。

そして2年後に初ヴィンテージとなる「テロワール・ハンター」プロジェクトも始動した。”T. H.”とラベルに記されたこのシリーズは「ブルゴーニュのクロのイメージ」だという。「5ha以下の小さな区画で、明確な個性がある」畑を選び、10産地から13種類を造る。どれも年間400〜1,200ケースの限定生産だ。

ブルゴーニュやトスカーナでも活躍中だという土壌コンサルタントのペドロ・パルラ、栽培担当のロベルト・ピントと3名でT. H.チームを結成し、未開の地を開墾し植樹した畑もあるという。

 北部のリマリ・ヴァレーは、日照量が多いが冷涼でドライな気候で、沖積土壌は石灰質も含んでいる。シラー、そして海岸寄りの西部ではシャルドネを栽培している。

中央海岸エリアのサンアントニオは、冷涼な海洋性気候で常に風が吹き、花崗岩と石灰質がみられる。ここではリースリングを、中でも海から14kmにあるレイダの畑では、シラー、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブランを。海から5kmしか離れていないロ・アパルカではソーヴィニヨン・ブランを栽培している。

サンアントニオやカサブランカより内陸部にあるマイポは一転し、地中海性気候でアンデスからの冷涼な風が吹き込んでくる。石の多い沖積土壌の畑で、小粒で収穫量の低い成熟した黒葡萄が収穫される。品種はカベルネ・ソーヴィニヨンとシラー。

南部の古い産地マウレは、赤い粘土性花崗岩の土壌で、樹齢70年のシラー、カリニャン、グルナッシュが残っている。いずれも自根で灌漑も一切していない。

例えばシラーで比較すると「リマリはミネラル豊かでクール&フレッシュ」「レイダは胡椒が香りスパイシーでブライト」「マイポはリッチでベルベットのよう」だという。

実際に試飲した「テロワール・ハンター ソーヴィニヨン・ブラン レイダ2014」は、生き生きとした涼しげな香りで、柑橘系の果実の香りだけではなく引き締まったいわゆるミネラル感もあり、酸のバックボーンがしっかりとしていた。

「テロワール・ハンター カベルネ・ソーヴィニヨン アルト・マイポ2013」は、小粒で低収量というだけあり、凝縮した香りと味わいだ。テンションのある味わいで上品さも感じられ、タンニンの果実とのバランスも程よい。標高700mにある樹齢25年の葡萄で、下層は75%が砂利だという。

「パワーや豊かさより、赤いフレッシュな果実と酸のバランスのとれたこの土地らしいカベルネを造りたかった」。

このカベルネ・ソーヴィニヨンの畑は、アルト・マイポの中でも冷涼な地域の代表とされる「ピルケ」にあるだけでなく、収穫のタイミングも重要だ。「成熟が一定になるよう栽培の工夫をし、他社より2〜3週間前に収穫している」というが、青さは全く感じられず綺麗な酸が印象的だった。

このシリーズが揃えば、チリの東西南北の気候や土壌がより明確にわかりそうだ。(Y. Nagoshi)

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