ラングドック・グランクリュの胎動 テラス・デュ・ラルザック

地中海に面したワイン産地・ラングドックは1853 年の鉄道開通によってリヨンやパリ、そして北部工業地帯の巨大な日常消費ワイン市場を獲得し、フランスの一大ワイン産地として発展した。しかし、1980 年代に入ると、フランス国内のワイン消費傾向が変わり、また、輸出市場ではワイン新興国との激烈な競争にさらされ、協同組合が大量のワインを生産しネゴシアンが自社ブランドで普及品を売りさばくというビジネスモデルがたち行かなくなった。

 

この時、他のフランス産地はいち早くテロワールのワインに移行し活路を見いだしたが、ラングドックは栄華を謳歌した時期が長かったぶんだけ方向転換に時間がかかった。しかし、2000 年以降、試行錯誤と葛藤を経て、徐々に自らの生きる道を見つけ、歩み出す栽培家が出てきた。

ラングドックの新しい可能性に挑戦している最もホットな2 つのアペラシオン、「テラス・デュ・ラルザック」と「ピック・サン・ルー」を取材した。

「我々はボルドーやブルゴーニュの栽培家のように過去の世代が積み上げた伝統的な価値に守られて出発することはできません。前の世代が残した負の遺産を払拭しながら前進しなくてはらならないのです。ワイン産地として名声を確立するためにはまだまだ時間がかかります」。

3 年前に独立した、テラス・デュ・ラルザックの若い栽培家夫妻は言い聞かせるように語った。

既に名声を得ているアペラシオンの場合、多少ワインの品質が低くてもラベルで選んでもらうことができる。事実、アペラシオンの序列と価格の格付けが密接に関係しているブルゴーニュを訪ねると、アペラシオンのプレステージに守られ、質にそぐわない価格の付いたボトルを少なからず見かける。しかし、ラングドックで質の高いボトルを作る生産家は“低級日常消費ワイン=ラングドック” のイメージをはねのけ、評価してもらわなくてはならない。

 

そのために最良のテロワールを選び、庭師のようなていねいな畑仕事を行い、収穫量を切りつめ、熟した葡萄で非の打ち所のない品質を目指している。それに加えて作り手のごまかしのない真摯な哲学を理解してもらうためにていねいな会話を厭わない。小手先のマーケティングで乗り切れるほど事態は容易ではないことをよく理解しているからだ。組合主義に守られ、惰性で生きてきた古い世代の栽培家はほぼ一掃された。本当にやる気のある、マイナスからの出発をも厭わぬ若い世代の栽培家と、新しいヴィジョンを持って外から入植した栽培家が刺激しあい独特の高揚感の漂うテラス・デュ・ラルザックを取材し、新しい高級ワイン産地の胎動を聞くことが出来た。(T.Matsuura)

つづきはウォンズ2017年2月号をご覧ください。ウォンズのご購入・ご購読はこちらから

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る