特集 日本ワイン/Report 関西地方のワイナリー 風土を映し食とともに楽しめる旨しいワインづくりが各地で進んでいる

関西地域におけるブドウ栽培は長い歴史をもっている。昭和初期において、大阪は作付面積、生産量ともに山梨を抜いて全国ナンバーワンの主産地だったという。しかし、農林水産省の2013年統計によれば、大阪府内のブドウ収穫量は5140トンで第7位。山梨のほぼ10分の1。農家の高齢化による耕作放棄地の拡大は全国どこでも共通した深刻な問題だが、比較的都市部に近接したところでブドウ栽培が行われてきた大阪では、急速に進む宅地化もブドウ畑の減少に拍車をかけているようだ。とはいえ、近年、この地ではワイン造りの活性化に向けて新しい動きがでてきた。2013年には府内6ワイナリー(現在は7ワイナリー)が加盟して大阪ワイナリー協会が発足。さらに2016年6月には大阪、京都、滋賀、兵庫、和歌山の5府県13ワイナリーが参加して、関西ワイナリー協会が設立された。創業100年を超える老舗ワイナリーから2010年代に入って設立された新興ワイナリーまで、構成メンバーの業容は様々だが、単なる親睦団体の域を超えて、ブドウ栽培従事者の育成、適品種の開発、消費者への販促啓蒙など、積極的な活動をとおして関西ワインの存在をひろくアピールしていくという。ひと味違ったユニークなワイン生産地として、これからしばらく目が離せない存在になっていくのかも知れない。

 

<京都  食の宝庫、京丹波で和食と合うワイン造りを目指す丹波ワイン>

古都京都に隣接する丹波地方は食の宝庫。丹波黒豆、丹波栗、丹波の松茸や茶など、古くから朝廷や貴族達に愛される多くの特産品を産出してきた。さらに今では牛乳や卵、米、苺、ブルーベリーなどの新しい農産品も生み出している。ワインもそのひとつだ。周囲を山々に囲まれ、深い霧に覆われやすいこの地は、寒暖の差がはげしい。その気候風土が、ワインの味わいにも独特な個性をもたらしている。

京都市の北西約50Km。京都駅からJR山陰嵯峨野線の園部駅から車で20分ほど高原地帯に入ったところに丹波ワインのワイナリーがある。創業は1979年。ワイナリーを創業したのは、かつてクロイ電気の社長を務めていた黒井哲夫、地元で観光農園を経営していた山崎高明の両氏で、醸造技術者として、当時山梨の洋酒メーカーに勤めていた大川勝彦氏を招聘してワイン造りがスタートした。

そもそも何故この地でワイン造りを志したのかといえば、黒井氏が海外で気軽に飲まれているワインの美味しさに感動し、そのワインを日本に持ち帰って飲んでみたところどうも味わいが違う。何度もそういう経験を繰り返した結果、ワインは土地の食文化と結びついてこそ楽しめるものであることに気づいたからだという。そこで黒井氏は私財をなげうって、京都の食文化に合うワイン造りを目指した。当初は、山崎氏の観光葡萄園で栽培されていたデラウェアやマスカット・ベーリーA などの生食用ブドウを使い、近隣にある日本酒の藏の醸造設備を使ってワインをつくっていたが、1985年にクロイ電気が工場用地として開拓した敷地奥の高台にワイナリーが建設された。

丹波ワインのロゴに記載されている“LIEBEGEH DURCH DEN MAGEN”は古いドイツのことわざで、“愛は胃袋を通る(” 即ち、妻の旨い手料理があれば夫は早く帰宅する)という意味だとか。日本の風土に合い、和食との相性のよいワインを目指したワイン造りは、現在でもそのままこのワイナリーのモットーとして生きている。(以下、略)(M. Yoshino)

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その他に訪問したワイナリー:飛鳥ワイナリー、仲村わいん工房、カモシタワイン、島之内フジマル醸造所、神戸ワイナリー

画像:羽曳野市にある西日本最古のワイナリー、カタシモワインの葡萄畑。市街化によって住宅が間近に迫るこの地では、丘の斜面を利用して甲州100年樹を含むブドウ樹を栽培している。急傾斜の畑での作業には、モノレールが欠かせない

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