シャトー・メルシャン 塩尻市片丘地区新ヴィンヤードで植樹式開く

今年、日本ワインづくりにおいて140年という節目の年に、メルシャンは、このほど長野県塩尻市片丘地区に拓いた新ヴィンヤードで植樹式を行った。

代野照幸メルシャン社長と小口利幸塩尻市長が一緒に植樹を行った。「シャトー・メルシャンの今年第1四半期の販売実績は14%増と好調を維持。見晴らし、風通し、水はけ、日照に恵まれたこの地が、桔梗ヶ原に続く銘醸地となることを期待している」と代野社長

日本ワインに対する需要の増加に対応した原料葡萄の確保をめざして、メルシャンは2015年6月から自社管理畑の拡大という新しい方針を掲げている。その第一弾として、長野県塩尻市片丘地区の遊休農地を活用して計9haの用地を確保し利用権設定による賃借契約を進めてきたが、北熊井と、その北2km先にある南内田にある二つの圃場において醸造用葡萄の本格栽培をスタートさせる。この新しい圃場では2020年に初収穫、2023年には成園化させ、2025年にはワインを発売する予定だ。そしてさらに2027年には全国各地で計60haまで自社管理畑を拡大する。

片丘地区は塩尻市の北東側、標高1665mの高ボッチ山を背にした緩やかな西向きの傾斜地に位置する。標高は約800m、圃場からは塩尻市街や桔梗ヶ原一帯を見渡すことができ、さらにその奥には雪をいただく穂高連峰などの北アルプスの山々を眺望する一大パノラマの絶景地でもある。年間降雨量は約1000~1200mm。風通しが良く、日照量が豊富。地質は砂利や小石を含む壌土で、表土から50cm下には礫が横たわっている。植樹式の前日には雨が降ったにもかかわらず、圃場に足を踏み入れてもほとんどぬかるんだところが無い。排水性に優れ、地下水位が低いのが大きな特徴だ。

シャトー・メルシャン ゼネラル・マネージャー松尾弘則氏。手にしているのは、リュブリアーナの国際ワインコンクールで日本産欧州系品種ワインとして初めてグランド・ゴールド・メダル(大金賞)を授賞した『信州桔梗ヶ原メルロー1985』

シャトー・メルシャン ゼネラル・マネージャーの松尾弘則氏は、新ヴィンヤード開設に至るいきさつと新しい圃場の特徴について次のように語る。

「2014年7月24日に初めてこの片丘地区を訪問した。当時は別の地区を考えていたが、いろいろ難題があり圃場を拓くのは難しいと感じていた。いささか傷心の気持ちを抱えながら、行政から勧められたこの地を訪れたが、ここに立ったとたんに立地の良さ、景観の素晴らしさに感動し、栽培適地であることを確信した」

「(標高800mというと、かつては葡萄が育たないと言われていたが)標高が高いからといって必ずしも気温が低いわけではない。昨年一冬の気象データーをみると、平均気温は塩尻セラーがある標高700mの桔梗ヶ原より0.2℃低いものの、平均最低気温はむしろ2℃ほど高い。ここはそれだけ盆地の底冷えや放射冷却の厳しさが緩和されていて、凍害の懸念も少ない。桔梗ヶ原とは違った特徴をもつ葡萄ができるだろうと期待している」

「新しい圃場では黒葡萄品種を中心に、メルロ83%、カベルネ・フラン17%の割合で植栽する予定だが、適地適品種の栽培を目指して、来年以降、圃場の上部の区画ではピノ・グリやゲブルツトラミナーなどの白葡萄品種も植えていきたい。塩尻には桔梗ヶ原や岩垂原、柿沢などいろいろな地区が存在し、それぞれが独自のワイン産地としてきらきらと輝く個性を発揮しつつある。片丘地区もそのひとつとして位置づけられるように取り組んで行きたい」。

片丘地区はもともと農地で、昭和の時代に土地改良を施し、牧草やそば、麦などを栽培していた。北熊井の畑3haは全部で14区画、南内田の畑6haは22区画に分かれ、それぞれに地権者が存在する。それを地元の農業委員がまとめ団地化された畑としてシャトー・メルシャンに紹介した。

畑の管理運営を担っているのは、2015年3月に設立された農業生産法人「メルシャンヴィティコール塩尻株式会社」。現在のスタッフは代表取締役を務める勝野泰朗氏を含め3名だが、近く5人体制に増強し、19年までに片丘地区の新しい畑9ha全てに植栽を終えるほか、メルシャンが桔梗ヶ原平出地区で展開している自社管理畑2haの栽培管理も担当する。

今回、北熊井の第6区画において植樹を行った穂木は343クローンのメルロ種で、台木は3309。樹間1m、畝間2.5m、ha当たり4000本の植栽密度で、5月一杯かけておよそ9000本を2.5haに植栽する。垣根栽培で仕立てはギュイヨ。ダブルにする予定だが、最終的にシングルかダブルかは葡萄樹の育ち具合を確かめつつ決める方針だ。

苗木は昔から懇意にしている山梨県内の育苗家に2015年10月に注文し、足かけ3年かけて今年3月に受け取ったものだ。

メルシャンヴィティコール塩尻の勝野泰朗社長。桔梗ヶ原平出圃場では台木の自家育苗を行い、台木と品種・クローンの組み合わせのヴァラエティ化を図っている

「ここはおよそ8~10%の斜度をもつ緩斜面のため冷気が溜まらない。また冬期の積雪は30cm、多くても50cmほどで特別な雪害対策は必要ないだろう。ただひとつ心配なのは、鹿の害。南内田では特別天然記念物のカモシカも出没するようだが、いずれ畑の周囲に簡易電柵を施して対処する」

「西向き斜面なので、葡萄果の温度が朝から上がりすぎる心配はない。また、背後の山もそれほど高くなくあまり日照の妨げにならないため、葡萄の成育期間を長くとることができる。標高の高さもあり、おそらく収穫は桔梗ヶ原より1週間程度遅いと予想される。さらに、ここは風通しの良さに加え、葡萄畑としては初めて拓かれたので、ベト病などの病害不安が少ないことも好条件となっている。自分たちでしっかり管理していけば、健康な葡萄が育つと確信している」と、勝野泰朗氏は語っている。(M. Yoshino)

トップ画像:支柱が立てられ植樹を待つ北熊井の新ヴィンヤード。50cmも掘れば礫がごろごろと出てくる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る