プロヴァンスの「トリエンヌ」 ロゼの需要拡大は止まらないが真髄は「サン トーギュスト」にあり! 

「トリエンヌ」といえば、なんといってもブルゴーニュのふたりの大御所の名前を思い浮かべる。ドメーヌ・デュジャックのジャック・セイスとドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティのオベール・ド・ヴィレーヌだ。1980年代後半に彼らはプロヴァンスに新天地を見つけ、リーズナブルなワインを造り続けている。今春、2003年から社長を務めるジェレミー・セイスが来日し、「サン トーギュスト」の垂直試飲を行なった。

 

<創立前後の秘話>

「トリエンヌ」が設立されたのは1990年のことだ。エクサン・プロヴァンスの東でバンドールの北にあたる小さな村ナン・レ・パンで、標高が高い南向き斜面で、しかも粘土石灰質土壌の畑を見つけた。

ふたりの友情の結果だ、と聞いていた。しかし、それは事実にしても別の理由があったという。実は、ドメーヌ・デュジャックの拡大を計画していたが、候補と考えていた畑をすべて僅差で逃してしまった。だから別天地を考えて、自由度の高い土地を目指したのだという。

 

見つけた場所は、南仏だが標高が高く暑くはないうえに日較差も大きい。そして石灰質が豊かだ。ただし、すべてが予定通りに運んだわけではなく、この土地柄を知り慣れるのに、年月がかかったと漏らした。

「天気がとても良いけれど、ドライで水不足になっていた。そして、ブルゴーニュは冬が寒いから、一度土が凍って春になると溶けていく。だからそれほど耕さなくても自然の力で土を健全に保つことができた。こういうことは、すぐにはわからなかった」。

広大な土地の中にあり、いわゆるご近所さんがいないためすぐに経験者に聞くこともできなかったようだ。

 

また、畑には量産の品種が植えられていた。ユニ・ブラン、カリニャン、サンソー、アリカンテなどだ。当初は既存の葡萄に接木をしていたが、2001年から本格的な植え替えを始めた。例えば、サンソーはこの標高では熟さないためグルナッシュへ植え替えたり、台木が晩熟用だったので早熟用に変更したら収穫が4週間も早くなったり、多くの改革を行った。

 

今では、白2種類=「レ ゾーレリアン白」「ヴィオニエ サント フルール」と「トリエンヌ ロゼ」、そして赤3種「「レ ゾーレリアン」「メルロ」「サン トーギュスト」を造っている。

ちなみに、ロゼはあまりにも需要が増え2005年までは自社畑の葡萄だけで造っていたが間に合わなくなった。そのため、栽培責任者の両親の家などから買い葡萄をするようになり、その率は90%になっているというから人気の高さが伺える。

 

<サン トーギュストの垂直試飲>

トリエンヌが造る赤の中で、最も優先順位が高いのが「サン トーギュスト」だ。まず、ボディがありしっかりとしたストラクチャーのものをこちらのブレンドを決めてから、「レ ゾーレリアン」用の比較的フルーティなタイプを選ぶ。

1996年までは「レゼルヴ」という名前をつけていたため、「サン トーギュスト」の初ヴィンテージは1997年となる。基本的にシラーとカベルネ・ソーヴィニヨンが主体でメルロが少量入るか入らないか。しかし、2001年から特別な場合を除いてシラーが50%以上を占めるようになった。水不足のストレスでカベルネ・ソーヴィニヨンに問題が出ることがあるからだ。

 

現行の2014年から2005年までの垂直試飲をし、その変遷を垣間見た。

2014年/平年並みの気候/果実の香りが生き生きとして、ハリのある香りと味わい。フレッシュでしっとりとしたテクスチャー。芯がしっかりとしている。

2013年/涼しい気候/涼しく成長期が長かったため、晩熟の品種がとても素晴らしいできだったため、この年だけはカベルネ・ソーヴィニヨンが60%と優勢でメルロはなし、残りがシラー/熟した果実やスミレなど、ハリのある香り。タイトな味わいで、タンニンもしっかり。細くて長い。

2012年/平年並みの気候/バランスのよい光沢も感じられる香り。上品でテンションのある味わいでミネラリー。タンニンもとても細やか。

2011年/暑い夏/ピジャージュを手で行うようにし始めた年/熟した果実、スパイス、野性味、スミレなど華やかな香りで、味わいも大きさがありタンニンもしっかり。

2009年/平年並みの気候/果実のエキスが感じられる豊かな香りで、味わいもまろやかさがありタンニンもほどよく豊かで細やか。

2008年/涼しい気候/しっとりとした上品な香りと味わいで、綺麗な造り。今でも若さが感じられる。

2007年/暑い夏/醸造に手を加えなくし始めた年/果実のエキスやロースティーな強さのある香りで、なめらかで厚みがありタンニンもしっかり。

2006年/涼しい気候/少しハーブを感じる固い香りで、口中の後半から勢いが増し、ストラクチャーがしっかりとしている。

2005年/暑くてドライな夏/暑いことに加えてとても乾燥していたため、それがタンニンに表れた/スパイスや野性味溢れる熟成した香りで、なめらかな口当たり。タンニンが豊かで余韻は少しドライ。

栽培では、2007年頃から有機農法を始め、赤については2009年から採用している(正式には2014年ヴィンテージより)。「これがよい結果につながっている」とジェレミーは実感している。

 

醸造については、「葡萄を信頼し、2013年から温度コントロールをやめた。新樽をゼロにして、どちらかといえばカベルネ・ソーヴィニヨンに新しめの樽を、シラーにはより古い樽を使うようになった。こうすることによって、濃くて凝縮したタイプというよりは、ハーモニーのとれたスタイルになったと感じている」。

この変化をもたらしたのは、実はジェレミーの妻ダイアナだという。ダイアナは、カリフォルニアで評価の高い「スノーデン・ヴィンヤード」の娘であり、2003年から実家の醸造も手がけている。ボルドーやブルゴーニュでも修行経験があるようだから、その頃に出会ったのだろう。

 

また「ブルゴーニュほどのヴィンテージの差は出ない」とは言うものの、それぞれの年の気候を綺麗に反映したワインだった。そして共通点として、やはり標高の高さと石灰質土壌が影響しているのだろう、全体にタイトで上品なスタイルだと確認できた。今回試飲した中で、2008年以降、さらに2012年以降にも変化を感じることができ、タンニンがとても細やかになりテクスチャーの心地よさにつながっているという印象を受けた。

上代3,000円(税抜)のワインで10年遡ってこれほど楽しめるワインは、どのぐらいあるのだろうか。(Y. Nagoshi)

輸入元:ラック・コーポレーション

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