「シャルル・エドシック」のロゼと日本茶の共演

1851年からの歴史あるシャンパーニュのメゾン「シャルル・エドシック」が、日本茶と共に試飲セミナーを開催した。相方は、1717年創業の「一保堂茶舗」だ。シェフ・ド・カーヴのシリル・ブランはこの機会を通じて何を語りたかったのだろうか。

 

<シャンパーニュのロゼと日本茶>

「私が抹茶を飲むならば、日曜日の朝」と、シリル・ブランは言う。日本茶好きだとは聞いていたが、茶筅も日本で調達し自宅で抹茶を点てるというから驚いた。

シャンパーニュのメゾンでシェフ・ド・カーヴを務めるには、俯瞰する目と細部にこだわる探究心の両方が必要だ。今回で来日15回目となるシリル・ブランは、毎回日本茶を飲む機会があった。そして飲んでいるうちに、ロゼと日本茶に共通点を感じるようになった。そこで、お茶についても調べ始めたという。知れば知るほど、シャンパーニュとの接点を見出したことが今回の企画に繋がったようだ。

  • 最も大切なのは畑
  • 健全に保つことが重要
  • 畑の場所により性質が異なる
  • パーフェクトなものを造るには細部へのこだわりが必要
  • 人間の存在は小さく、自然の恩恵を授かっていると考えている
  • 収穫期へのこだわりは強く、最高の状態で摘まなければ品質の高いものはできない
  • 傷つけないよう小さなカゴで手摘みする
  • 丁寧に選別する
  • 最高の抽出をしなければならない
  • ブレンドが重要である

これらの項目は、ワイン寄りの人間からすれば当然シャンパーニュの話だと思う。しかし、すべてがシャンパーニュにも日本茶にも当てはまる事柄だった。

一保堂茶舗の広報部マネージャー、足利文子さんが、山間の高冷地にある茶畑の画像を映し出した。トラクターが入れない場所だが、斜面が急で茶木と茶木の間に立っていられないような場所だという。

日本茶の要素は「甘味、旨味、苦味、渋み、香り」で、毎年同じ銘柄を同じような香味に仕上げるために、環境が異なる様々な畑から摘んだ茶葉をブレンドすると説明した。この重要な工程を「合組(ごうぐみ)」と言うそうだ。シャンパーニュのノン・ヴィンテージのアッサンブラージュと同じコンセプトだ。

 

<比較試飲>

さて、参加した誰もが初めてだと思われるシャンパーニュのロゼと日本茶との比較試飲が行われた。ロゼ2種類とお茶2種類のいずれもが、同じ温度で同じ形状のグラスに入れられて供された。お茶をワイングラスで飲むのもまれだが、比較のためにどのようなお茶が選ばれたのか、という点にも面白かった。

 

「シャルル・エドシック ロゼ レゼルヴ」×煎茶「くき煎茶」

くき煎茶は、茶葉ではなく煎茶の茎だけを集めたもの。葉のような甘味や渋みではなく、茎独特の柑橘類や青リンゴのような爽やかな香りと「赤ちゃんの葉っぱの甘酸っぱさが特徴」で、後味もフルーティーで爽やかだ。

現行のこの銘柄の構成は、2008年がベースで20%が平均5年熟成のリザーヴワイン。全体の95%がピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエで、5%が2008年主体のピノ・ノワールの赤ワイン(2007と2005も少量)。品種だけにフォーカスすれば、ピノ・ノワール40%、シャルドネ35%、ムニエ25%となる。

「70種類以上のワインをブレンドしている。合組と同様に毎年同じ味わいを保ちたいと考えている。一杯飲んだらもう一杯飲みたくなる、という感覚がくき煎茶と似ている」。

例えば、フランボワーズ、グロゼイユ、カシスといったフルーティーさが特徴のリセのピノ・ノワールを使用している。例えば、リザーヴワインがシャルルとしては比較的若めなのは酸とフルーティーさを表すためだ。すべて仕上がりを見込んでのブレンドなのだ。

シルキーでクリーミーで厚みがある口当たりに「ひそやかなタンニンが加わることでボリューム感が増す」とシリル・ブラン。

 

「シャルル・エドシック ロゼ ヴィンテージ2006」×抹茶「雲門の昔」

 雲門の昔は最上級の抹茶で、渋みは感じずまろやかな口当たりと濃厚な旨味が印象的だった。この茶葉を得るには、相当な技術が必要なのだという。4月下旬に新芽が出てから、成長に最低限必要な日照量にとどめなければならない。また、摘み取り前に最低20日から1か月日陰にする。遮光率が90%だという。

ヴィンテージのロゼは、15の選ばれたクリュだけで構成され、ピノ・ノワール63%、シャルドネ37%。そのうち8%がピノ・ノワールの赤ワインで、半量がリセから、半量はヴェルジィ、ヴェルズネイ、アイ、アンボネイ産。香りから豊かさが感じられ、味わいもふくよかで旨味が感じられ、余韻が長く続く。

 

初めの組み合わせはどちらもフルーティーでフレッシュ、後の組み合わせはどちらも豊かで旨味が強い。それぞれ、ふだん使いと特別な日と、飲まれる設定も異なるはずだ。

今回の試飲を経て、シリル・ブランはこう語った。「シャンパーニュに『泡』を期待する人は多い。ただ、私は泡の存在は控えめでよいと考えている。よりテクスチャーや口当たりに注力している」。

ヨーロッパのワイン関係者から、日本人の味覚を褒められることはよくある。しかしこうして、さらに共通点を探る人は稀なのではないだろか。シリル・ブランの飽くなき好奇心に、こちらまで刺激を受けた。(Y. Nagoshi)

つづき「シャルル・エドシック シェフ・ド・カーヴのシリル・ブランに聞くシャンパーニュの旨味とテクスチャー」につきましては、WANDS 2017年6月号をご覧ください。ウォンズのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!

輸入元:日本リカー株式会社

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