ルイ・ロデレール Louis Roederer 「真実」は常にグラスの中にある

プレステージ・キュヴェの「クリスタル」は、創立からちょうど1世紀を経た1876年に誕生した。副社長兼醸造責任者のジャン・バティスト・レカイヨンは「クリスタルはフィーリングとセンセーションを追求したキュヴェ」だと表現した。

 

<自己分解のコントロール>

 「クリスタル」は、他社のプレステージ・キュヴェより早めに市場に出てくることが多い。それは、クリスタル用の畑が決められていて量が限られているから、ということもひとつの理由だ。しかしもうひとつは、酵母の自己分解とも関連している。

ジャン・バティスト・レカイヨンは、昨年ドザージュの意義や変化について取材した際、とても分析的で理論的に解説してくれた。今年の問い、酵母の自己分解についてもまた理路整然と語った。

酵母が死滅して自己分解を始めると、香りやテクスチャーに変化が現れる。「バニラやブリオッシュのような香り、スモーキーさ、あるいは苦味などがその代表的な特徴だ」。

ただ、ジャン・バティストは「テクスチャーの変化とアロマの変化は速さが異なる」という。香りの変化の速さに比べて、丸みやボリューム感が出るテクスチャーの変化が感じられるのには時間を要するということだ。どちらもシャープな要素が丸みを帯びていく。その両者がちょうどバランスよいタイミングでデゴルジュマンしたい。ところがタイミングが合わなければ香りと味わいの個性が離れてしまうこともある。

望み通りの性質を得るために行なっていることがふたつあるという。

ひとつは、自己分解をコントロールすること。そのために、ティラージュの時に加える酵母の量を調整する。例えば酵母の影響力を大きくしたいのであれば、必要な範囲内において多めに添加する、といった具合だ。

「実際にはヴィンテージによって微調整している。よく熟してパワーのある年には酵母は少なめに。湿度が高い年でおとなしい性格の場合は、フレッシュさやプラスアルファを与えるために多めにする」。

もうひとつは、瓶内熟成中の温度だ。ノン・ヴィンテージの「ブリュット・プルミエ」の場合には、酵母の量は比較的多めにして地下セラーの中でもあまり冷え切っていない場所で寝かせる。「ヴィンテージ」の場合には、気温がより低い場所に置く。「クリスタル」になると、酵母の量は少なく熟成させるのは最も気温が低い場所を選ぶ。

「クリスタル」には、酵母の影響を色濃く残したくない、という方針がわかる。(Y. Nagoshi)

つづき<テロワールの個性> <フィーリングとセンセーションを追求したキュヴェ「クリスタル」> スペシャルキュヴェのリリース につきましては、WANDS 2017年6月号をご覧ください。 ウォンズのご購入・ご購読はこちらから  デジタル版もできました!

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