成長を続けるワシントン州ワインの軌跡と今

アメリカのワインと言えばカリフォルニア、ワシントンワインと言えば首都の?と返されたのは、今は昔。現在では国内のショップやレストランで見かけることも珍しくなくなった。とはいえ、北米西海岸他州との違いを明確に説明できるかというと、やや自信がない。昨年もひとつAVAが増えたし、ワイン産業が急速に成長し続けていて数字が刻々と塗り替えられて行くからだ。まずはワシントンワインの概要を見渡してみよう。

 

【地理】

ワシントン州は北米西海岸最北、北はカナダと国境を接し、南にはコロンビア川を境にオレゴン州がある。南北に走るカスケード山脈が州を海岸部と内陸部に分ける。ワイン生産地の中心は北緯46~47度付近、フランスならボルドーより少し北にあたる。

コロンビア・ヴァレーの表土を深く掘って行くと、多くの場合、玄武岩の岩盤にあたる。約1,500万年前に中新世期に噴火した大量の溶岩流が冷却と結晶化によって形成された火山岩だ。氷河期に何度も起こった大規模な氷河湖決壊に起因するミズーラ洪水が運んだ堆積土壌で、シルト、砂、砂利の層によって覆われている。

例外はコロンビア・ヴァレー北東部とレイク・シェランで、腐食によって玄武岩が除かれ、花崗岩、片麻石、砂岩など古い岩が露出している。更にナチェス・ハイツやコロンビア・ゴージの一部は、異なる組成を持ち、コロンビア川の玄武岩よりはるかに若いカスケード山脈火山岩で構成される。

 

【気候】

カスケード山脈を境に、西側の海洋性気候と東側の準大陸性砂漠気候とに分かれる。北太平洋で発生した海洋気団が含む水分の殆どは山脈を超える前に沿岸地域で雨になる。雨と言ってもピュージェット湾周辺では、濃い霧状の穏やかな小雨となることが多い。すぐに流れ去ってしまう激しい雨とは異なり、植物は水分を取り込みやすい。

山脈東側の内陸部で、気団は再び下降して暖まる。空気中に残っているわずかな水分はそのまま維持されるため降雨にはならない。だから年間平均降水量は、西部では1,219 mmなのに対して東部では178mm~305mmと極端に低い。でも、カスケード山脈は米国で最も降雪量が多く、雪解け水がコロンビア川に流れ込む。

豊かな流量を誇る川からの灌漑用水を得ることで、この乾燥した地でのブドウ栽培が可能になっている。1日の日照時間は最大16時間半で、ブドウ生育期には17時間。雲が少ないから、日中は暖かくても夜間は放射冷却による強い冷え込みがあり、昼夜の気温の寒暖差は15度ほどもある。

 

【歴史】

現代のワイン生産の中心はカスケード山脈の東部でヴィニフェラ種の99%が栽培されているが、それは灌漑が使用できるようになってからのこと。それ以前は西部、つまりピュージェット湾の中と周辺のみでしかブドウを栽培することができなかった。

1825年に最初のブドウ栽培開始されたのは、西部のコロンビア川北岸だった。その後、東部で1903年に大規模な灌漑が始まり、1917年にはスナイプス・マウンテンにマスカット・オブ・アレクサンドリアが、1967年にはヤキマ・ヴァレーでカベルネ・ソーヴィニヨンが植栽された。ワイン産業は東部で発展を遂げていき、1983年にヤキマ・ヴァレーがワシン

トン州初のAVAに認定されるに至る。(S.Kondo)

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