国産ジン生産者探訪/世界市場に向けた新たな挑戦

国内外でジャパニーズウイスキーが注目される中、さらに新たなカテゴリーとして注目されているのがジャパニーズジンだ。ウイスキー同様、メーカーも輸出に積極的なので世界市場でも注目される日はそう遠くないかもしれない。代表的な国産ジン生産者を訪問し、それぞれの新たな挑戦について話を聞いた。

 

 

京都蒸溜所 今までにないカテゴリーに

6種類の蒸溜原酒とデービッド・クロール社長

国内初となるジンに特化した蒸溜所として、ナンバーワンドリンクスが設立した京都蒸溜所を訪問した。昨年8月8日にスピリッツ製造免許を取得し、第一弾商品『季の美』がバーや百貨店を中心に、出荷好調という。京都市南区吉祥院にある同蒸溜所では、社長のデービッド・クロール氏が出迎えてくれた。

英国人であり、かつウィスク・イーの代表でもあるクロール氏。当然のことながらジンには滅法詳しい。ジンの歴史や種類、製法などを丁寧に解説してくれた後、いよいよ『季の美』のこだわりに話が進む。

要約すると大事なポイントは3つ。1つはベース・スピリッツに、米から作ったライス・スピリッツを使用していること。一般的なドライジンでは、コーンや小麦、モラセス(廃糖蜜)のニュートラルスピリッツを使っているので、ジンでは初めてとなる。その分、割高ではあるが、マイルドでほのかな甘みが特長となる。これはテクニカルアドバイザーの大西正巳氏のアドバイスによるものだという。

2つ目はブレンドする際の割水に京都伏見の名水を使用すること。中硬水だがウォータートリートメントは行っていない。「アルコール分45%なので残り55%は水。素材として水の役割はとても大切」という説明は確かに頷ける。

3つ目がボタニカル。組成的には1%に満たないが、ジンのうまさ、個性を決定づける重要な要素であるため厳選する。一般的なジンではジュニパーベリー、オリス、レモンピールの3つしか使っていないが、「30種類を超えるボタニカルやハーブを事前にテストし、11 種類に絞り込んだ。ジュニパーとオリスは輸入し、9種類は国産。できる限り京都産のものを使っている」という。

取材中も地元の農家から素材で協力したいという電話がかかってきていた。

柚子の収穫は京都府綾部市の栽培農家に直接出向いて2年目になる。収穫後、迅速に果皮を剥き、真空冷凍保存することにより、フレッシュな香りが年間を通じて維持される。乾燥させないのでオイル分が残っており、氷に注ぐとほんのり白濁し、ホワイトマティーニになるという。柚子以外も瀬戸内レモン、赤紫蘇、山椒、木の芽、笹の葉、生姜はフレッシュなものを使用し、地元農家からの調達もはじまっている。

11 種類のボタニカルは6つのカテゴリーに分けて浸漬・蒸溜し、最終的にブレンドして仕上げる。分けて浸漬・蒸溜するのは、抽出時間と蒸溜条件を個別に設定することで、その特徴を最大限抽出するため。これはロンドンジンのワンショットディスティレーションによる一発勝負とは異なるところだ。「ロンドンジンと同じスタイルで11 種類のボタニカルを全部入れて蒸溜することも可能だが、一番おいしいところが取れる温度のタイミングなどはそれぞれ異なるのでどうしても中途半端になる」とクロール氏。

例えば、お茶はゆっくりと蒸溜しないと泡立ってしまい、せっかくの香りが蒸散してしまう。EU 基準で定められたロンドンジン以上の品質を目指していることがよく分かる。『季の美』は今までにない新しいスタイルのプレミアムジンとして誕生したと言えるだろう。

6種類の蒸溜原酒を利き酒させてもらう。確かにそれぞれの個性が際立っている。また、柚子やレモン、玉露、生姜、山椒は日本人がよく口にするものなので、何となくほっとする味わいで癒される。ライス・スピリッツをベースに使っているので、アルコールのキックは少なく、まろやかに感じる。オンザロックやお湯割りで和食とも合いそうだ。

輸出はヨーロッパやアジアを中心に行っているが、年内には米国へも出荷する予定。(A.Horiguchi)

つづきはWANDS 2017年7.8月号をご覧ください。 ウォンズのご購入・ご購読はこちらから  デジタル版もできました!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る