一歩先を行くカリフォルニアのサステイナブル・ワイングローイング

米国の農業王国カリフォルニアは、国内で最も人口の多い州でもある。特にワイン産業のように特定のエリアの人気が高まって、ワイン作りに参入したい人が、こぞってやって来るような場所では、土地や資源やエネルギーを得るための競争が起こる。だから、その従事者は、リソースを賢く使い、持続可能な事業を展開して行かなければ、やがて全てが枯渇してしまう。

 

更に環境と労働に関する法律や規制が世界で最も厳しい州という背景もあり、経営者は環境的にも社会的にも責任ある行動を取ることを迫られている。サステイナブルなワインづくりは、そこからの必然、と考えれば、現代カリフォルニアで急速に浸透しているのも不思議はないだろう。

 

こうした持続可能性を追求・推進する複数の認証プログラムがある中で、ワイン生産者を対象に州全体をカバーするのがカリフォルニア・サステイナブル・ワイングローイング(CCSW)だ。他には、ナパの環境や経済的・社会的持続性にフォーカスしたナパ・グリーンや、魚や野生生物の生息地を復元し、水質を改善するために河川流域で実践されているフィッシュ・フレンドリー・ファーミングなどがある。

 

<トレフェッセン・ヴィンヤーズの場合>

オークノール地区に1886年に建てられたワイナリーは、当初からエコシステムに則ったインテリジェンスビルだった。ブドウは馬にウィンチを引かせて3階まで運ばれて破砕され、2階に落ちた果汁は発酵を経て1階でワインとして熟成されるグラヴィティ・フロー。1968年にトレフェッセン家が購入した際に1階の床を修復、2014年の地震被害の後に、もともと窓が少なく外気の影響を受けにくかった壁に断熱材を入れて暖房冷房効果を上げたくらいで、基本構造は当時のままだ。

 

巣箱の下に落ちている捕食されたホリネズミの骨

ジョン・ルエルCEOは2004年に当初は栽培担当者として雇われた。醸造学だけでなく環境学の修士も持つ彼は、古代農法と現代の技術の融合を以て園芸学的なアプローチで畑を改善し、短期間で結果を出した。

 

カバークロップは畑の区画や樹齢ごとに違うものを植える。土に水分や養分を与える植物、逆に蒸散させたり吸い取ったりする植物、窒素を固定する植物、など作用によって蒔く種を選ぶ。ただ、自然のままですでにバランスが取れている畑には何もしない。畑の作物が自分でバランスを取り、人の手を必要としないシステムを作ることが、ジョンの考えるサステ

イナブル農法だ。福岡正信の自然農法に学んだと言う。

 

害獣も一掃すると生態系が崩れるから、食物連鎖による駆除でバランスを取る。例えば巣箱を設置したら3羽のフクロウが棲みつき、ブドウの根を齧るホリネズミを年間2500匹捕食した。178haの畑に12の巣箱を掛けて呼び寄せたブルーバードは小さな昆虫を、一つのコロニーに260匹棲むコウモリは蛾などの夜光虫を捕食する。

 

3列の太陽電池アレイで全てのワイナリーの電力を賄い、排水は全てリサイクルして灌漑に、ブドウの搾りかすは堆肥にして畑に返し、電力を使って機械で果汁を冷却するよりもむしろ早朝に収穫する、など様々なサステイナブルな取り組みをしている。

その上で特に重要なのは、人の手厚いオペレーションだと言う。平均勤続年数10年、現在115人の従業員中、20年以上の勤続者が17人おり、これは米国では長い方で、ここで働く満足度の高さを表している。

 

リサイクルウォーター処理装置

ジョンはワイナリーの庭の片隅でオーガニックの野菜や果物を育て、収穫したものは従業員に無償で持ち帰って貰っているという。こんなところにも、サステナビリティの一片が見えた。(S.Kondo)

トップ画像:ジョン・ルエルとソーラーパネル

<ロンバウアー・ヴィンヤーズの場合>、<ポール・ホッブズ・ワイナリーの場合>、<ピーター・マイケル・ワイナリーの場合>は、WANDS 2017年7月8月合併号をご覧ください。ウォンズのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!

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