フェウディ・ディ・サン・グレゴリオの改革とピエルパオロ・シルク

南イタリアを代表するワイナリーのひとつ、カンパーニア州アヴェッリーノのフェウディ・ディ・サン・グレゴリオ。このところフェウディの評価がやたらと高くなっている。それはフェウディのブドウ栽培改革がもたらしたものであり、2008 年からこの仕事を牽引しているのが栽培担当ピエルパオロ・シルクである。輸入元・日欧商事の招請で来日したピエルパオロがフェウディのブドウ栽培を語った。

 

ピエルパオロが入社当時のフェウディ社を振り返る。

「その頃からフェウディはマーケティングにとても長けたワイナリーで、市場の求めるワインを造っていたが、ブドウ栽培やテロワールの表現については疎かにしていたと思う。私はテロワールを表現したワイン造りに向かって舵を切った」。

 

フェウディのブドウ畑のあるイルピニアはアペニン山脈寄りの高地(標高350m~700m)にあり、年間降水量が1,200mmもあって、冬は寒くて雪も降るなど、南イタリアのワイン産地とは異なる特徴をもっている。ブドウ畑は見渡す限り一面に広がる景観ではなく、古くからオリーブや果樹の畑、ハーブや灌木の間に散在していたのだった。

 

フェウディの自社畑300ha も小さな区画があちこちにあり全部で895 もの小さな畑で構成されているという。だから機械を使った耕作とは縁遠く、手作業に頼らざるをえない。

イルピニアの土壌は火山灰を多く含んだ石灰質で、栽培品種は在来種のファランギーナ(白)、グレコ(白)、フィアーノ(白)、そして南イタリアの黒ブドウ品種を代表するアリアニコの4 種。

 

南イタリアには2,000年以上のブドウ栽培の歴史があり、いまでもたくさんの品種が残っている。フェウディはその中からイルピニアの土地に適した4品種を栽培している。じつはこの他にフェウディにしかないシリカsirica という黒ブドウを少しだけ栽培している。シリカは遺伝子的にシラー、レフォスコ、テロルデゴに近い品種だと言われており、アリアニコの祖先であると見る向きもある。

2002年にある栽培家の庭先にあった2 本の古木をDNA 分析したところシリカであることが分かり、ミラノ大学、ナポリ大学との共同研究で殖やすことになった。

 

ピエルパオロは収穫のタイミングについても一家言をもっている。

「イルピニアのワインは伝統的に食物の一部と考えられてきた。しかし外国市場で競合して勝ち残るには市場の求めるワインを造ることが大事だと考えて、ステレオタイプのワインを造り過ぎたと思う。ワイン造りはワインが食卓で飲まれることを意識しなければいけない。そのためには収穫時のブドウの酸度がもっと高くなければならない。酒石酸換算6g/lでは足りない」。

というわけで、収穫を以前より前倒しするようなっている。(K.Bansho)

つづきはWANDS 2017年7月8月合併号をご覧ください。ウォンズのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!

WANDSメルマガ登録

関連記事

ページ上部へ戻る