古き偉大なるケープ・ワインへのオマージュを現代のミニマリズムで表現した「リーウ・パッサン」限定リリース

南アで高い評価を得るクリス&アンドレア・マリヌーのワイン「マリヌー」は飲んだことがある。秀逸なワインを造る醸造家夫妻で、彼らが新たなプロジェクトを立ち上げたと聞き、気になってしようがなかった。ワインの名前は「リーウ・パッサン」。「マリヌー」とはまた一味違う印象深いワインだった。

 

彼らとパートナーシップを組んだのは、インド出身の多彩なビジネスで成功しているアナリット・シング。2010年にFIFA観戦でケープタウンを訪れて以来、特にフランシュックに惚れ込んで「リーウ・コレクション」を創立した人物だ。そして2013年に、マリヌー&リーウ・ファミリー・ワインズを興している。

 

ともあれ、マリヌー夫妻は2007年から西ケープのスワートランドで始めた「マリヌー」「クルーフ・ストリート」とは別のブランドをアナリット・シングと造り始めた。このプロジェクトにも、南アフリカの辣腕栽培コンサルタントとして知られるローザ・クルーガーが関わっていた。南アの銘醸畑の掘り起こしをしてきた人だ。

 

ワイン名の「リーウ・パッサン」は、エステイトのライオンの紋章にあやかって「歩くライオン」というアフリカーンス語をつけたようだ。ラベルにはこう記されている。

An adventure into Cape wine heritage by Chris & Andrea Mullineux and Analjit Singh.

何がケープ・ワインのヘリテージへの冒険なのだろうか?

赤ワインのテクニカル・シートを見ると、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、そしてサンソーがおよそ3分の1ずつブレンドされている。ここがミソだった。

クリス&アンドレアは、50年代、60年代のケープ・ワインを飲んで感動したようだ。そして当時のケープ・ワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンとサンソーをおよそ半分ずつブレンドしていたのだ。その偉大なケープ・ワインの伝統を尊重しつつ、その中から最良の要素を拾い上げ、それを彼らのモダンなミニマリズムで再構築したのがこの作品となった。だからカベルネ・フランはいわばモダンな色を出す役割を果たしているようだ。

サンソーは2ヶ所の畑からのもので、ひとつはウェリントンにある南ア最古のブドウで樹齢117年、もうひとつはフランシュックの南アで2番めに古いブドウで樹齢91年だという。だから、赤ワインのデータには「収量12〜48hl.ha」と記されている。

 

また、ボトルやラベルを見て一瞬シャトー・オー・ブリオンを思い起こしたが、これも南アの古いワインのボトルからインスピレーションを得たデザインのようだ。

少し調べてみると、今春初リリースの2015年ヴィンテージは衝撃的なデビューをしたようだ。確かに「(南アで)マリヌーが造りました」という情報だけで試飲したけれど「一体これは……」と、考えさせられる味わいだった。

もう少し深掘りしてみたいと思わせるワインだ。

 

2015 Leeu Passant Stellenbosch Chardonnay, W.O. Stellenbosch

爽やかな柑橘類とまだ硬い桃、ほんのりとしたバニラなど、キリッとした酸を思わせる香り。アタックは柔らかだが、やはりとてもフレッシュで高い酸、塩っぽさが感じられる。ボリューム感やなめらかさもあるが、重さを感じさせることのない生き生きとした味わいで、ある意味で刺激的でさえあり、もう一口飲みたくなる後を引く余韻。全体にスレンダーだが、出るべきところは出ている魅力的なボディ、とでもいうのだろうか。

 

2015 Leeu Passant Dry Red Wine, W.O. Western Cape

カベルネ・ソーヴィニヨン35%、カベルネ・フラン34%、サンソー31%。

赤い果実、プラムのような果実、そしてほんのりとスパイスがしなやかに香り出る。まだ閉じ気味の状態にある。味わいもしっとりと上品なテクスチャーで、タンニンも丸い。きめ細やかで落ち着きのある細く長い味わいで、ボトルイメージ先行かもしれないがペサック・レオニャンのイメージに近い。(Y. Nagoshi)

輸入元:BB&R(ベリー・ブラザーズ&ラッド)

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