日本ワインづくり140年記念 シャトー・メルシャンが仕込式開催

日本で最初の民間ワイン会社「大日本山梨葡萄酒会社」の設立は1877年。この年、本格的なワイン造りを学ぶために二人の若者、土屋龍憲と高野正誠がフランスへ派遣された。研修を終えて帰国した二人に宮崎光太郎が加わり、1879年に30石(約5400リットル、1升瓶約3000本)のワインを造ったという記録が残っている。大日本山梨葡萄酒会社は日本ワインづくりのルーツであり、その後、曲折を経て今日のメルシャンへと繋がる。だからメルシャンの歴史はそのまま日本ワインの歴史と重なる。

 

それから140年後の今年8月31日、甲州市勝沼町下岩崎のシャトー・メルシャンで、今年が良いブドウに恵まれワインづくりがスムーズに進むようにとの願いを込めて仕込式を行った。明け方の東京の雨が嘘のように晴れわたった空の下、神事の執行は氷川神社の宮司・高野正興氏。25歳でフランスに渡った高野正誠の曾孫にあたる。

 

式を終えて松尾弘則(ゼネラル・マネージャー)が挨拶した。

「8月に雨が続いたが、お盆明けから回復し、今のところブドウの生育は順調に進んでいる。とはいえ、全国各地を見ると天候被害もみられる。今月初め、各地の畑を見て回ったが、秋田・大森地区では契約農家へ向かう道中、がけ崩れや災害ごみが山積されていた。しかし圃場はしっかり管理され、ブドウの状態がよかったのでほっとした。これからワイナリーに届くブドウは農家が一年かけて丹精したものだ。その思いを私たちは引き継いで良いワインを提供できるようにしたい。この仕込み期間、シャトー・メルシャンのスタッフ一同、まずは安全第一で、時には厳しく、そして何よりも楽しく、ワイン造りに励みたい」。

 

この日、集荷箱からベルトコンベアに乗って除梗破砕機へと運ばれたのは、数日前に収穫された甲府市産甲州種350kg。瓶内二次発酵「メトード・トラディショネル2017」のベースワインになる。2021年頃に最終製品になって登場する予定だ。

 

Tasting Nipponプロジェクト

2015年の日本ワイン総生産量は215万ケースで、輸入・国産合わせたワイン総市場のシェアは5%(前年4%)に拡大している。今年1~7月までのワイン市場は全体としてはフラットだが、メルシャンの日本ワインは108%、その中でシャトー・メルシャンは112%。さらに、甲州種を使ったシャトー・メルシャンは150%で推移。この勢いは今後も続くとみて、日本ワイン140年を迎えた今年、メルシャンは産地強化、商品強化、コミュニケーション強化の3つの柱で事業を展開している。

 

<産地強化>①今年4月に、長野県塩尻市片丘地区での植栽開始、②(大菩薩嶺に近い)甲州市上小田原地区で新規ブドウ園取得、③長野県椀子、秋田県大森、福島県新鶴などでのCSVの実践を通して、ブドウづくりを支える産地・地域社会への貢献などを行ってきた。

 

<商品強化>①今年5月に産地を謳う初めての甲州ワインとして、土屋・高野両家の所有畑から生まれた「シャトー・メルシャン 岩崎甲州」を発売、②新たな挑戦として、瓶内二次発酵スパークリング「シャトー・メルシャン 日本のあわ メトード・トラディショネル 2013」を10月に発売するなど、よりテロワールを訴求したワインづくりを目指している。

 

<コミュニケーション強化>①大橋健一MWと今年ブランドコンサルタント契約を結び、シャトー・メルシャン・マスタークラスなどを開催。②今年から香港にも輸出を開始するなど、海外市場への拡大を図っている。

 

来賓で出席した田邉篤甲州市長。「大日本山梨葡萄酒を発祥とするシャトー・メルシャンの歴史は日本ワインの歴史といっても過言ではない。ワインは風土、文化の資産であり、風土を離れては存在しえないお酒である。甲州ワインが日本ワインのトップランナーとして発展することを願っている」とエールを送った。

シャトー・メルシャンは今後、Tasting Nipponをキーワードに、日本ワインだけでなく、日本の文化を牽引すべく活動を深化させる。なぜTasting Nipponなのか。

「その理由のひとつは、シャトー・メルシャンを支えるワイン造りの哲学にある。かつて、ポール・ポンタリエ氏からは『シャトー・メルシャンを日本庭園のように造ったらどうか』と指導された。日本庭園は複雑で、深みと調和があり、小さなものが集まって全体に溶け込んでいる。全て統一がとれて過剰なものがない。過度な抽出による大きなワインではなく、日本らしい繊細で調和のとれた味わいを追究することがシャトー・メルシャンの個性に繋がると考えている。また、和食と日本ワインの可能性は無限大であり、日本人の五味五感に訴える味わいを追究していこうという想いをこのキーワードに込めている」と、森裕史マーケティング部長は説明する。

 

Tasting Nipponプロジェクト第1弾は、9月22日開設の「シャトー・メルシャン・クラブ」。これはファン参加型のコミュニティづくりで、シャトー・メルシャンのワインを愉しんでもらうだけでなく、ブドウの植樹や収穫などの体験や、メンバー限定の特別なワイナリーツアーを実施。造り手と飲み手とが一緒になって日本ワインを愉しみながらファンを広げて行くのが狙い。入会受付は、http://www.chateaumercian.com/club/

 

プロジェクト第2弾は、10月6、7,8の3日間、東京ミッドタウン内キャノピースクエアで開催する「シャトー・メルシャン ハーベスト・フェスティバル2017 in TOKYO」。例年、勝沼のシャトー・メルシャンで開催していたハーベスト・フェスティバルを、今年は東京で開催する。会場では2017年収穫のブドウで造った蔵出しワインを含む、各種シャトー・メルシャンを提供するほか、葡萄畑やワイナリーを疑似体験できるVR(バーチャル・リアリティ)コーナーやグラスワイン販売コーナー、樽だしワインの試飲、2017年収穫のワイン用ブドウの試食、ワインに合うフードの提供など、シャトー・メルシャンを五味五感で楽しめる企画を満載。また、これに併せて、東京・六本木ヒルズの「シャトー・メルシャン トーキョー・ゲストバル」ではワインメーカーによるミニセミナーやワインとフードのマリアージュ体験などが企画されている。

トップ画像:仕込式は高野正興氷川神社宮司によって厳粛に執り行われた

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