故アンヌ=クロード・ルフレーヴ&クリスチャン・ジャック夫妻が「クロー・ド・ネル」を買った理由

ロワールのアンジェ南東部のアンビヨー・シャトーに「クロー・ド・ネル」はある。ここをブルゴーニュの大御所が個人で購入したのは2008年のことだった。

 

<アンジューのビオディナミスト>

クリスチャン・ジャックは、当時を思い出すように語り始めた。「クロー・ド・ネルの前のオーナー夫妻ネリー&クロード・ピシャールからアプローチがあった。2000年からビオディナミを実践しているが、経営面で問題があるという相談だった」。後でわかったことだが、どうやら2005年ぐらいまでは意欲的だったが、電池切れしてしまったらしい。

当初は、数年助けてうまく行き始めたら本人たちに任せればよいと考えて投資した。ところがその年末にピシャールがすべてから離れたいと言い出したので、売却するか自分たちで続けるかを2人で考えた。ブルゴーニュからは500kmも離れた地だからだ。もしも信頼できる現地責任者が探せればと思っていたところ、シルヴァン・ポタンに出会った。

シルヴァンはロワールでも南仏でもビオディナミ生産者で仕事をした実績があるが、当時はチリで仕事をしていた。偶然にもチリの地震が理由で地元に戻っていたところだった。いくつかの偶然が重なり、2009年9月から彼が責任者として着任し、クロー・ド・ネルの再興が始まることになった。

 

<畑の見直し>

クリスチャン・ジャック(右)とシルヴァン

ここは周辺にワイナリーがなく、森とリンゴ畑に囲まれた南向きの緩やかな斜面にある。常に西からの風通しがよい立地にある。森に囲まれて生物の多様性があり、雨が少なく風通しがよくビオディナミにはうってつけの場所だ。しかし「畑の状態はひどかった」とシルヴァンは言う。

樹齢35〜45年のカベルネ・フラン5ha、60年ほどのカベルネ・ソーヴィニヨン1ha。60〜90年のグロロー2ha。どれも古木だ。

例えば、カベルネ・フランは株仕立てをギュイヨに変え、風通しをよくし、樹高を高めにして光合成をより効率よくできるようにした。すると、環境の急変でストレスがかかり収穫量が激減した。夏が暑くて力強い2009年は5〜8hl/ha。バランスよく凝縮感が得られた2010年で10〜12hl/ha。

2011年は「土の状態も落ち着き、剪定もきちんとできたので、畑のバランスがとれてきた。生育がとても早い年で、雨が少なく日照量や気温も素晴らしく、ブドウはとてもよく成熟し、アルコール度数も随分上がった」。収穫量は「通常の25〜30hl/ha」に戻った。古木なので平均的な収穫量そのものが低いのだ。

 

<造りも自然に>

アンジューは基本的にシスト土壌が主体だが、ここは東端でソミュール寄りにあり、アンジューで最も石灰質が多い土壌だ。上層が粘土石灰質で、その下に40cmほど粘土層、赤くて固いグレ・ルージュ(陶器向きの土だという)、ライムストーンと続く。標高は90m。

アンジュー赤は、すべて手摘みで選果はほぼ畑の中で終え、除梗してホール・ベリーでステンレスタンクとトロンコニックの樽にて、区画別に自然酵母のみで発酵させる。「テロワールとヴィンテージの特徴を出すには自然酵母が必須」。初期に少しピジャージュするが、その後は特に手を入れず「25〜30日アンジュージョンする。ゆっくりと抽出する」。3〜8回使用した小樽で12ヶ月熟成。3月末の瓶詰め前にだけ少量の亜硫酸を加える。

「熟した果実と綺麗な酸のバランス。これが私たちの目指しているスタイルだ」。

実際には「アンジュー赤」はそれほどメジャーとは言えない存在だ。しかし「クロ・ルジャールなど先駆けもいるし、若手10軒がしっかりとした仕事をしているから自然に評判が上がるはずだ」と心配無用のようだった。

 

Chenin Blanc IGP du Val du Loire 2015(樽サンプルを試飲) 2012年に初めてシュナン・ブランを植樹し、2015が初ヴィンテージ。樹間90cmで植樹したが、アンジューAOCの規定では樹間1mだったためAOCに認められずIGPにした。3回ルフレーヴで使用した樽で12ヶ月熟成。3樽のみ。ルフレーヴを思い起こさせる綺麗なバニラ香に熟した黄色い果実の香り。なめらかさと爽やかでしっかりした酸のバランスが絶妙。

Grolleau IGP du Val du Loire 2014 グロロー100%はロゼならAOC。アンジュー赤AOCでは15%までしか認められていない。だからIGPに。アンジューならではの歴史的な品種なので大切にしている。15〜20hl/ha。赤紫色で、若々しいスミレなどの香り。フレッシュな酸としっとりしたタンニンの、しなやかな味わい。魚料理ともよく合う。

Anjou Rouge Cabernet Franc 2014 カベルネ・フラン100%。はじめはスパイスの香り優先で、時間とともにチェリー、ブルーベリー、ラズベリーなど果実の香りが華やぐ。かっちりとした味わいで、酸もしっかりとしストラクチャーも強い。タンニンがとても細やか。食事と合わせやすい赤。

Anjou Rouge Cuvée Violette 2014 カベルネ・フラン60%、カベルネ・ソーヴィニヨン40%。香りはまだ閉じているが、スパイスやブラックベリーなどの果実が感じられる。かっちりとした味わいで、タンニンもしっかり。まだまだ若々しい。 輸入元:ラック・コーポレーション

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