日本ワインの将来展望と課題を語る/日本ワインコンクール15周年記念シンポジウム

今年で15 回目の開催となった「日本ワインコンクール」事務局は、一般公開テイスティングの前日、9月1日に山梨県フルーツパーク富士屋ホテルで“15周年記念シンポジウム”を開催した。

 

日本ワインの普及に必要なのはブランドロイヤルティ確立とターゲットマーケティング

当日はまず、「世界市場における日本産ワインの立ち位置」と題して、大橋健一MW が記念講演。大橋氏は、さまざまな事例を挙げて日本ワインを国内外で広めていくことの必要性と可能性を語った講演のなかで、次のことを強調した。

「2014年4月時点での都内1433軒の高級すし店におけるワインリストの7割がフランスワインで占められているが、第2位は日本ワインで23%を占めていた。品種別の構成比でも、甲州は6位にランクされている。これはすごいことだ。外国人の年間来日数が2300万人、日本における外国人居住者が240万人を超えた今日、日本ワインはまだまだマーケットを拡大できる余地がある」

「世界の市場でも日本食や日本ワインに対する関心は高まっているが、実際のところ、日本ワインの販売が順調に回転しているとは言えない。ロンドンのワインショップでは埃をかぶっており、これを売れるようにすることが重要だ。そのためには日本ワインへのブランドロイヤルティを確立することが必要だ。売りっぱなしでは駄目。オンでもオフでも、真剣に自分のワインを売るべきマーケットを絞り込み、そのターゲットに向けて頑張ることが必要だ」。

 

新表示規定は有用だが運用に当たっては真剣な議論を

これに続いて、「日本ワインの現状と今後に期待すること」をテーマにパネルディスカッションが行われた。パネリストは、宇都宮仁(東京国税局第二部鑑定官室室長)、齋藤まゆ(Kisvin Winery 醸造責任者)、森覚(コンラッド東京エグゼクティヴソムリエ)、そして大橋健一MW(山仁代表取締役)の4 氏。司会進行役を務めたのは石井もと子氏(ベイシス代表、日本ワイナリー協会顧問)。

石井氏はまず、80 年代末から今日までの日本ワインの歩みを概括したうえで、今日の日本ワインが抱える大きな課題として、栽培、技術者不足、そして日本ワインの定義と表示のあり方、の3つのポイントを挙げ、次のように問題提起した。

「私の印象では、日本ワインはダブルスタンダードのなかで販売、消費されてきた。品質と価格のバランスを考えると、日本ワインに対する消費者の評価は甘い。日本ワインとは何かについて、これまでは定義がなかったが、来年10月からいよいよ新しい表示規定が発効する。ぶどう収穫地の異なる製品について、すでに今年2016年醸造分からラベルを変えているところもあるが、大手・中小を問わずこれから1 年間、ラベル変更を余儀なくされるところはかなり大変な作業になるだろう」。

さらに、造り手の立場から発言したキスヴィンの齋藤氏は、「自分のところは栽培から関わり、その葡萄からのみワインをつくっているので、ラベルもシンプル。しかし、地域名をブランド名やワイナリー名として名乗っているところは一律に使えなくなるので、とても困惑している。まさか、今回の表示規定は生産者を困らせるためではないですよね?」と疑問を投げかけた。

これを受けて、これまで果実酒等の表示基準および地理的表示の策定にかかわってきた宇都宮氏は、あらためて長官告示と通達の趣旨について説明した上で、「ワインに限らず、食品表示法の趣旨においても、原料から最終製品までのトレーサヴィリティを表示によって明確化することが求められている。地名を会社名として登記することは問題ないが、地名は地域の共有財産であり、世界的には地名をブランド化しないのが常識だ。平成27年度の制度制定以降、国税庁は全国各地で丁寧に説明を行ってきたつもりだが、できるだけブランド力の向上にも資し、消費者にとってわかりやすい表示にしたいと考えている」と答えた。

一方、大橋氏は、今回の表示規定について「流通業としては非常に有益だと考えている。表示変更にかかわるコストは、一度エイッ!ヤーとやってしまえば済むこと。ロシアや中国でもバルク原料を使った“国産ワイン” が多いが、新しい表示規定によって日本はそういうものから一歩抜きんでた立ち位置ができ、世界に向かって日本ワインを堂々と訴えることができる」と発言。また森氏は、「表示規定はこれまでなかった方がおかしい。コンラッド東京の利用客は7割が外国人。2020年に向けて、いまから日本ワインの表示ルールを知って、説明できるようにすることが大切だ」と、新表示ルール制定の意義を積極的に評価した。(M. Yoshino)

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