連載(第3回)ワインの達人とキッチンラボ 「美味しい! ウイスキー・ダイニング」 ☑旬のアースフレーバーを楽しむ技

前回は変幻自在の「オールドパー シルバー」を夏のビターテイストに合わせた。

秋はキノコや木ノ実など茶色系のイメージで、ウイスキーを呼ぶ食材が目白押し。

中でも今回は、土っぽさ、アースフレーバーに着目した。

 

アースフレーバーといっても、土そのものをそのまま口に入れたいと思うことはほとんどない。ただ、大地の香りはなんとなく郷愁を誘うような気がする。幼少期にどんぐり拾いに行った山で、泥団子を握った手で頬を掻いた時、走って転んで擦りむいたひざ小僧の血液混じりの土が……と、思い出す場面は人それぞれかもしれない。

しかし、アスファルトやセメントに囲まれた暮らしが長くなると、土に触れる機会は少なくなる。それでも土から生まれ出ずるものは恋しい。だからベランダーと呼ばれる層が生まれたり、家庭菜園を試みたり、わざわざ里山体験や稲刈りに出かけたり、なんだか土と離れたくはないという人が実は多いように思うのだ。

「オールドパー シルバー」にも感じられるアースフレーバーを、懐かしく過去を振り返るのではなく、未来へ向けてお洒落に楽しむ策はないものかと、またあの名コンビと作戦会議を開いた。

ちょうど秋は土を感じさせる素材にあふれている時期だ。旬真っ盛りの山の幸、そして山のミネラルをたっぷり吸収して旨味を増した海の幸、両方を使ったアースフレーバーをぶつけてみることにした。日本でしか体験できない組み合わせだ。しかし背伸びをする必要はなかった。普段着に、ちょっとした工夫を加えるだけでグッとセンスのよい食卓が演出できてしまうとわかった。

 

海の幸と根菜の合わせ技 × 異なる方向で新たなハーモニーを

夕暮れが早くなってきたと感じる頃に食べたくなる秋刀魚は、肝まで楽しめる魚のひとつだ。小田島大祐さんは、この秋刀魚を使った和風パエリアを考案した。炊き始めてフライパンの蓋の片隅から上がる蒸気と共に、食欲をそそる香りが放たれてきた。そしてお菓子のタルトタタン、あるいは餃子ののように、最後にフライパンをひっくり返して皿に盛る。こんがり焼けた秋刀魚の上にたっぷりの薬味3種を盛りつけて完成!

片や大越基裕さんは、特製シロップとレモンジュースを使った「シルバーレモネード」で合わせてきた。本場のパエリアと同様にサフランを用いていることに着目してのことだ。「サフランと柑橘類は相性がよいので、料理とドリンクが違う方向性のように見えながら、新しいハーモニーを生み出す組み合わせ」に狙いを定めた。加えて「米料理を食べる時には口の中に滞留する時間が長いので、その後にはごくごくと飲みたくなるから」ロングドリンクに仕立てた。

 一旦平皿で見事な秋刀魚の姿を鑑賞してから、大きなボールに崩し入れ、ひつまぶしのように混ぜ合わせた。一口頬張ると、サフランの華やかな香りと薬味の清々しい香りが広がる。「パエリアだからサフランを使ったが、和のだしに加えることで香りの幅が広がった」。ごま油と秋刀魚の焼き目の香ばしさ、肝と醤油のコク、鰹だしの旨味、米のほどよいアルデンテ感、こんにゃくとレンコンの食感のコントラストの面白さ。小田島作の和風パエリアは、試作を含めこの本番でわずか4回目だというが、意外な組み合わせとその完成度の高さに脱帽した。口の中が楽しくて美味しくてしょうがない。

 大越作の「シルバーレモネード」には柑橘を使った特製シロップが使われている。同量の黒糖・上白糖・蜂蜜に季節の柑橘を入れ、毎日1度かき混ぜて1週間経過したもの。それぞれの季節で何かしら柑橘類はあるので、今回は甘夏だが種類にはこだわらない。むしろ異なる柑橘で季節感が楽しめる。シロップ0.5:レモンジュース1:シルバー1:炭酸水2.5の割合でグラスに注ぎ軽く混ぜる。

甘さ控えめで柔らかな酸のレモネードとシルバーがもつ柑橘系の要素が融合し、炭酸も加わり香りに華やぎをもたらす。シルバーは5分の1の割合だから表立って主張はしないが、パエリアを食べてから飲むとシルバーのもつ香ばしさと土っぽさが秋刀魚の肝と根菜類の茶系の味わいを下支えする。やはり主役のすぐ隣でサポートする名脇役を演じてくれる。「秋刀魚は油脂分があるので、より土っぽい味わいに寄っていく」と小田島さん。「秋刀魚の脂とシルバーレモネードの甘みも十分に合う」と大越さん。秋ならではの脂ののりが、ウイスキーとのいい仲介役になっているようだ。

たっぷりと華やかなアースフレーバーを楽しんだ後、シルバーレモネードを飲むと一転爽やかになりながら、香りは消えずさらに広がり後を引く。食べて飲んでまた食べて、という「糸を引く感じの連続性」が感じられる。これぞペアリングの極意! (Y. Nagoshi)

輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社

フォトグラファー:木村文吾・スタイリスト:竹中紘子

つづきはWANDS 2017年10月号をご覧ください。ウォンズのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!

連載第2回 ワインの達人とキッチンラボ 「美味しい! ウイスキー・ダイニング」 大人のビターテイストを生かす技

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る