RUEDA スペインの人気No.1白ワイン ルエダのベルデホ

いま、スペインでいちばん売れている白ワインはルエダである。

ルエダのスペイン国内市場占有率は40.5%になるという。アルバリーニョのリアス・バイシャス(9%)やビウラのリオハ(8%)を圧倒して第1 位である。スペイン国内ではそんな有名なワインなのに、日本ではちっとも知られていない。むしろアルバリーニョの方がベルデホより有名だ。それで、ルエダをもっと知って貰うためにじっくり産地を見てベルデホを紹介して欲しいという誘いがルエダワイン委員会からあった。DOルエダには、ながらく疑問に思っていたことがあったから、これは絶好の機会だと思い、いそいそ出かけた。

(取材協力:ルエダワイン委員会、スペイン大使館経済商務部)

 

なぜ、ルエダは白ワインの産地になったのだろう。それがずっと疑問だった。

ルエダはトロとリベラ・デル・ドゥエロに挟まれており、リベラもトロもテンプラニーリョで造る赤ワインの名産地である。真ん中のルエダだけが白ワインを造る理由が分からない。今回、まとめてルエダを取材する機会に恵まれて、それが氷解したとまではいかないが、なんとなく霧は晴れたように思う。

 

なぜDO ルエダがいまのような白ワインに特化した産地になったか、早速、その謎解きに移ろう。ヨーロッパのブドウ産地と同様、ルエダも19 世紀後半に、フィロキセラに襲われてブドウ畑がほぼ壊滅した。フィロキセラに痛めつけられる前のルエダの畑には黒ブドウがたくさんあって赤ワインを造っていたのだという。ところが黒ブドウ品種は全滅したのに、ベルデホだけは小石や砂の多いブドウ畑で少しだけ生き残ったようだ。

 

ベルデホの起源はあまりはっきりしないが、16 世紀に遡ると言われている。キリスト教徒によるレコンキスタ(国土回復運動)のあと、ドゥエロ川流域に住みついたカンタブリア人、バスク人、モサラベ(イスラム支配下のスペインのキリスト教徒)などがこの地にベルデホを植えたとされている。20 世紀になって、ようやくフィロキセラ禍から立ち直ろうとしたとき、栽培家は渦中を生き抜いたベルデホを増産しようと決めたのだった。

 

もう一つの理由は、1932 年にへレスのシェリーがDO 認証されたことと関係している。当時、フォーティファイドワインの需要はとても大きかったので、ルエダ地域でもベルデホとアンダルシアから移植したパロミノ・フィノでシェリー・タイプのフォーティファイドワインを造った。これが1980 年まで続き、ルエダはそのまま白ブドウの産地になった。ちなみに現在は、DO ルエダでパロミノ・フィノを新植することは禁止されている。いずれルエダのパロミノは消滅するだろう。

 

さらにルエダの気候条件では、テンプラニーリョが十分に熟さないこともルエダが白ワイン産地になったことと関係している。ルエダの標高は700m~900mで比較的冷涼な地域だ。春の植物サイクルの始まりが遅く、秋の訪れが早い。だから白品種向きの栽培地と言える。それでも夏の日中の日差しは強いから、普通の白ブドウならあっという間に酸度が落ちてしまう。ところがベルデホはその暑さと上手に対応して、うまく酸度を保ってくれる。

 

以前、リベラ・デル・ドゥエロで興味深い話を聞いた。リベラはドゥエロ川の河岸段丘に広がるブドウ畑で、川のそばの谷底平地(ベガ)から段丘崖、段丘面(パラモ)の順で標高が高くなる。10 月になるとリベラでも平均気温が急激に下がるので、パラモのブドウ畑の中にはテンプラニーリョの完熟しない生産年がよくあるのだという。リベラのパラモの気象条件はルエダに似ている。たぶん、それでルエダはテンプラニーリョよりベルデホという選択になったのではないだろうか。

 

イベリア半島はメセタと呼ばれる高原である。メセタは東から西に向かって傾斜しているため大きな河川は西に流れポルトガルで大西洋へと注ぐ。このメセタの背骨にあたる位置に中央山系(システマ・セントラル)があり、中央山系と北のカンタブリア山脈に挟まれた地域(北メセタ)のほぼ真ん中をドゥエロ川が流れている。ドゥエロ川はポルトガルに入るとドウロ川と名前を変え、ポルトで大西洋に流れ込む。

 

DO ルエダのブドウ畑は主にドゥエロ川の南側に位置する洪積台地の台地面に広がっている。台地面は水利が悪く、丸い小石の多い痩せた土壌である。ここはいつでも大西洋から吹きぬける強い風に晒されている。人の住む集落や醸造所は崖下にある。またドゥエロ川の支流、トラバンコス、サパルディエル、アダハ川流域の河岸段丘にもDO ルエダのブドウ畑が広がっている。

 

DO ルエダの土壌は、大昔、川が運んだと思われる丸い小石がごろごろしているのが特徴だ。大きな岩石が風化してできた崩積土ではない。そこに砂質、シルト、粘土などが混ざっている。またところどころに石灰質もある。痩せていてカルシウム、マグネシウムなどのミネラル分を多く含み、pH7~8のアルカリ性土壌である。

 

先述したように典型的な大陸性気候である。とても寒くて長い冬、春の芽吹きは遅い。冬が寒いので冬季剪定は3 月いっぱいまでかかることもある。遅い年には4 月まで残ることもある冬の雨は都合300mm~500mmになる。春は短くブドウ樹には遅霜のリスクが大きい。2017 年の遅霜被害はとても大きかった。夏はとても暑く乾燥しているが、時に激しい雷雨に見舞われることがある。こういう厳しい栽培条件にあるため、ブドウの根は地中深くに入り込んで水を探そうとする。

 

昼夜の気温の寒暖差は非常に大きく、これがブドウ栽培のキー・ファクターで、これによってブドウの糖度と酸度のバランスが保たれる。年間日照時間は2,600 時間に及ぶ。ただ10月になると気温は急激に下がる。ベルデホはこういう栽培環境にとてもよく適合したブドウである。葉が小ぶりの五角形で、果梗が短く、果房は中程度の大きさ。果粒も中程度の楕円形で種の大きいのが特徴だ。樹の仕立て方は伝統的なエンバソ(株仕立て)である。ワイヤーを渡してコルドンやグイヨを採用する栽培家もいる。

 

ベルデホの香りは独特のものだ。たとえば低灌木(モンテ・バホ)、干し草、フェンネルなどに代表される乾燥したハーブの香り、柑橘やストーン・フルーツ(白桃など)など果実の香りの混ざったものがベルデホらしい香りといえるだろう。アルコール分が比較的多くて、爽やかな酸味とうまく調和している。味わいにはしっかりした厚みとストラクチャーがある。後口に特徴的な苦みがあり、余韻に果実が戻ってそのバランスがよい。この特性がベルデホをスペインNo.1 白ワインに引き上げたといえる。

 

DO ルエダは1980 年、カスティーリャ・イ・レオン州で初めて(リベラより早く)認証された。当時、この認証に関わった人に聞くと、

「ルエダがいち早く原産地認証されたのは、在来種ベルデホを保護することが目的だった」からだという。もちろんフォーティファイドワインではなく、ベルデホで高品質ワインを造ることを意図していたのである。今日、ベルデホの白ワインはスペインで重宝され、世界的な認知度を高めようとしている。

 

DO ルエダの栽培地域は、カスティーリャ・イ・レオン州バジャドリッド、セゴビア、アビラの3 県にまたがっている。長い間、ルエダはバジャドリッドのワインだと思いこんでいて、セゴビアでもDO ルエダを造っていることを今回の訪問で初めて知った。DO ルエダは域内74 町村で造ることができ、そのうち53 町村はバジャドリッド県南部に、17 町村はセゴビア県西部に、4 町村はアビラ県北部に位置している。(K.Bansho)

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