ジュヴレ・シャンベルタンにも畑をもつ、セントラル・オタゴのドメーヌ・トムソン

ニュージーランドでピノ・ノワールの産地として知られる南島内陸部のセントラル・オタゴに、ドメーヌ・トンプソンがある。オーナーは香港在住の有名な投資家だという。ディヴィッド・ホール・ジョーンズがその人だ。

 

セントラル・オタゴは切り立つ岩山と水深の深い湖などで風光明媚なことでも有名だが、その風景に似て出来上がるワインもエクストリームな表情をしているものが多い。ニュージーランドで唯一の半内陸性気候のワイン産地だ。

ところが、ドメーヌ・トムソンの2種類のピノ・ノワールを試飲するとセントラル・オタゴっぽいスタイルではなかった。色は比較的明るく、香りもガツンと強く出るわけでもなく、味わいもしっとりとしてオールド・ワールド的なのだ。なぜだろうか? と興味を抱いた。

 

ディヴィッド・ホール・ジョーンズは、2000年にセントラル・オタゴの中心地に近いロウバーンに14haを購入し、ポマール・クローン、複数の種類のディジョン・クローンを植樹した。2003年が初ヴィンテージだ。畑は地元のブドウ栽培学者グラント・ロルストンに、造りはやはり地元で有名な醸造家ディーン・ショウに依頼した。

ディーン・ショウは、トゥー・パドックのオーナーであり俳優のサム・ニールが経営するセントラル・オタゴ・ワイン・カンパニーに所属し、トゥー・パドックはもちろんのこと、いくつかの地元ワイナリーの醸造を請け負っている人物だ。ブルゴーニュでも経験を積んでいる。セントラル・オタゴを訪れた時にディーンに会う機会があった。その時彼は「私はヴィンテージやそれぞれの立地をそのまま反映するように努力している。ワインの品質や個性の大半はブドウそのものに由来し、ワイン造りそのものは5%しか関与しない」と言っていたのを思い出す。

しかし、おそらくは依頼主からの要望もあったのではないかと想像する。オーナーのディヴィッド・ホール・ジョーンズは、新世界らしいワインではなく旧世界、つまりブルゴーニュ的なワインを好んでいるのではないだろうか。しかも、ジュヴレ・シャンベルタンにも小さな区画を購入し、ブルゴーニュでも同じ「ドメーヌ・トムソン」の名前でワインを造り始めていた。2013年からだ。こちらの造りは、やはり介入しないスタイルで知られる現地の醸造家ジェラール・キヴィに依頼している。

どちらのピノ・ノワールにも、エレガンスとフィネスを求めているようだ。

加えて、2011年からオーガニックに転換し、2013年からはバイオダイナミクスに取り組んでいる。造りにおいても醗酵もマロラクティックもナチュラルに行なっており、樽由来の香りも目立つことなく、自然体でエレガントな香りと味わいだ。

 

ちなみに、ドメーヌ名は、彼の高祖父(祖父の祖父)ジョン・ダーンブル・トムソンが1850年代に初めてセントラル・オタゴを測量したことに由来している。

 

Central Otago Explorer Pinot Noir 2015

標高295mのムーンブロックより。2003年植樹で、ポマール、数種のディジョン・クローンが主体。2008年が初ヴィンテージ。7〜10日間低温浸漬し、醗酵後のマセレーションも7〜10日。全房15%。フレンチオークの小樽で10ヶ月熟成。

色は明るめで、赤いベリー系果実やスパイスがソフトに香りたつ。口中でもスパイシーさが感じられ、落ち着きのある優しい味わい。フレッシュでバランスよく、普段使いにしたいタイプ。

 

Central Otago Surveyor Thomson Pinot Noir 2012

区画ごとに自然酵母で醗酵。全房30%。マセレーションは1ヶ月。フレンチオークの小樽で10ヶ月熟成。

こちらも色は明るめ。少し香ばしさやスモーキーさが感じられる。丁子やシナモンのようなスパイスと赤い果実の香りが融合した落ち着きある香り。味わいもゆったりとして果実も酸もまろやかなタンニンも一体化している。しっとりとした後味。(Y. Nagoshi)

輸入元:BB&R(ベリー・ブラザーズ&ラッド

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