豊かな果実味と飲みやすさ、ワイン選びの楽しさを追求するローズマウント Rosemount

古木のグルナッシュを育むシーヴュー・ヴィンヤード

ローズマウントが最初に日本にローンチした頃からこのブランドを知っている人の中には、ハンター・ヴァレーの印象を強く持っている人が少なからずいるに違いない。ドイツ移民カール・ブレヒトがアッパー・ハンター・ヴァレーにブドウを植えたのがワイナリーの始まりであることからも、その印象は強い。その後のオーナー、ロバート・オートレーが事業を拡大した時に、マクラーレン・ヴェイルにもエステートを持つ。それが、現在ローズマウントのセラードアのあるシーヴュー・ヴィンヤードだ。標高110m、1958年植栽の古木のある3.5haの斜面。フラッグシップのバルモラル・シラーにも入る重要な畑だ。

今年は9月中旬に芽吹き、1カ月の間に梢は1mも伸びた。開花は11月上旬、クリスマスにはヴェレゾンが始まる。ヴェレゾン後に房を間引く。残す房の数は決めておらず感覚を頼りに作業すると結果的に平均収穫量は4t/ha となる。1~2月に「フラッグシップ・コレクション」のバルモラルにするかGSMにするか、いつ収穫をするかを考えながらブドウの味を見て行き2~3月に収穫。この地域は暖かく3月上旬でもまだ暑いので、房が焼けないようオープンキャノピーで守る。収穫はイースターと並行すると言われる。来年のイースターは4月1日からなので、収穫も早めの予測だ。

土壌は赤褐色の粘土層で、鉄分が多い。60cmほど掘ると石灰岩層に当たるが、この石灰岩が表土のところどころ露出しているのがクナワラとの違いだ。保水性の高い粘土質土壌ではブドウ樹が水を吸い上げるのに力が要る。冬の間は靴底にくっついて背が高くなってしまうほどの粘性がある。夏になって乾燥が進むと、足が挟まるほどの大きさの地割れが起こる。なんだか歩くだけで重労働そうな過酷な土地だが、ヴィンヤードマネージャーのジョナサン・シアラーは、この環境も含め畑仕事を楽しんでいると見えて、愉快そうに説明する。

シラーを肥沃な土壌に植えると樹勢が強くなりすぎるため、斜面上部の表土の薄い水捌けの良い場所に植える。斜面下部の畑は表土が深く、重い土壌。十分な水を必要とするカベルネ・ソーヴィニヨンを植える。ブドウが60~70㎝下に根を延ばすとブルドーザーをも跳ね返すほどの固いクレイの層にぶつかるため、深い位置で横に根を張り、水を得る。

グルナッシュは中腹に植える。GSMに入るグルナッシュの区画は1954年に植えた古木がある。収穫は4月に及ぶこともある。等高線に沿った植樹をしており、こうすることで熟度に応じて収穫していく作業が楽になる。

少し離れた場所にあるヴァイン・ヴェイル・ヴィンヤードも、4~5区画がバルモラルに用いられる重要な畑だ。石の多い土壌で、こちらにも1958年に植えた古木がある。

 

環境保全への取り組み

コンポスト

サステイナブル農法を実践。ブドウの搾り滓でコンポストを作る。土壌が浅く乾燥しがちな畑のブドウ樹の根元に1m間隔で、湿度を保つため30cmほどの厚みを持たせてコンポストを撒く。すると望ましいバクテリアやキノコが発生し、余計な雑草は生えて来ない。

リサイクルウォーターによる灌漑はパイプを地下に埋め込んだドリップ方式で、水が蒸発しにくく節水できる。2009~2010年に始めた。

 

新しいステージに立つローズマウント

現在、このマクラーレン・ヴェイルにあるのは畑とセラードアのみ。醸造は、ローズマウント同様にトレジャリー・ワイン・エステーツが傘下に収めるウルフ・ブラスの超近代的大型施設で行われている。

ビジネスの拠点がハンター・ヴァレーから移ってから、自社畑は南オーストラリア州内のみ。よってフラッグシップ・コレクションにおいても、ハンター・ヴァレー産のロクスバラー・シャルドネやマッジー産のマウンテン・ブルーの生産はすでに無く、もともとマクラーレン・ヴェイル産のブドウを使ってきたバルモラル・シラーは残り、新たにGSMが加わった。

契約農家のブドウに関しても、ローズマウントのアイコン的ブランドのダイヤモンドラベルは州内産ブドウを使用。2品種を合わせることでより美味しくというコンセプトのブレンドシリーズには州外を含め国内東南部からブドウを調達している。

ブランドコンセプトは同じでも、設備もブドウの供給エリアも変われば何らかの違いは生まれて来そうだが、例えばオーストラリアで最も有名なワイン評論家のジェームス・ハリデーは「ここ2~3年で質は大きく改善した」と評している。

 

注目の新アイテム「ミール・マッチャー」を料理と共に味わう

チーフワインメーカーのランダル・コミンズは、嘗ての親会社だったサウスコープに入社し、同じ傘下のペンフォールズで働いたのちに、2012年にローズマウントに来た。ランダルがテイスティングに同席させたのは、グローワー・リエゾンオフィスのヴォ―ガン・クック。先のジョナサンが自社畑を、ヴォ―ガンは契約農家の畑を管理している。ハンター・ヴァレー育ちのヴォ―ガンは、2009年にマクラーレン・ヴェイルに来た。試飲はシーヴュー・ヴィンヤードから東に数キロのランチの席で行われたが、別卓に居合わせた地元の同業者が卓を移って話し込みに来たりして、すっかり地元の顔となっているようだった。

ランダルが一番に紹介したのは、ミール・マッチャーのホワイト・ブレンドとレッド・ブレンド。ワイン大国に見えるオーストラリアだが、日常の食事時はビール派が多く、ワインは未だに週末や特別な日の飲み物だと言う。そんな人々の食卓とワインとの距離を一気に縮めようと考えて開発した。ワインにこだわりのない消費者の手に取らせようとしているのだから、品種名だけを大書きしても意味がない。合わせる料理の提案そのものをメインビジュアルにした。頭ごなしに決めつけて欲しくないというソムリエからの意見もあり、ボトルプリントの文言は、お勧めレベルの柔らかなトーンにする工夫をした。

ランチでは、衣にカンガルー島の塩と胡椒を利かせたカラマリフリットを、ホワイト・ブレンドとマッチングしてみた。添えられたライムを絞るとソーヴィニヨン・ブランのゼスティな要素と、シトラスマヨネーズを付けるとセミヨンの柔らかさとの相性が引き立つ。シンプルで、家庭でも容易に再現できそうだ。“海の幸にぴったり”と、魚に限らず幅を持たせた表記の仕方も、2つの品種が補完し合い、様々な食材に対応できるからだと納得した。

一方、レッド・ブレンドの方は肉全般ではなくポークと決め打ちだ。グルナッシュ60%とシラーズ40%のブレンドは、チェリーやベリーの甘い果実味にまろやかなタンニン、微かにスパイシー。豚肉のジューシーな甘みとマッチする。レストランのランチメニューの中に合わせたい選択肢はなかったが、むしろ豚生姜焼きなど甘辛さのある和食と合わせたいと思った。

バルモラルと並ぶフラッグシップ・コレクションのGSMは、ブレンドされる3つの品種、グルナッシュとシラーとムールヴェドルの頭文字をとったもの。ブレンド比率は基本的には6:3:1だが、2016年は5:4:1。年によって調整する。ランダルは、飲んで楽しく何にでも合う味の設計を目指し、2016年のブレンドを決めるのに2日間試飲を重ねた。ブラックベリーの果実味が濃厚で骨格がありながら、タンニンが溶け込んだしなやかさもある。

鴨のコンフィを合わせてみた。鴨を覆うようにトッピングされているサラダが料理全体を軽やかにし、ワインとのベストマッチに導いた。(text & photo by Saori Kondo)

輸入元:国分グループ本社株式会社

トップ画像:斜面上部の土壌、粘土質に石灰岩が混じる

つづきはWANDS2017年12月号のオーストラリア特集をご覧ください。 ウォンズのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!

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