丘、川、人が織りなす自由で多彩な コート・ド・ボルドー

新風吹き込む気鋭のワイン産地として、近年ひときわダイナミックな動きを見せているのが、コート・ド・ボルドーだ。一般的なボルドーのイメージである「格付け」ワインとは異なり、手の届きやすい価格帯でありながら、よりおおらかで自由な発想の個性豊かな生産者が結集している。そしてそのこだわりを追求する生産者たちが、世界で最も著名なワイン産地ボルドーの多様性や奥行き、未来に続く可能性を見せてくれる。

 

「コート」には5 つの栽培地がある。ジロンド川沿いでメドックの対岸のブライ、ボルドー市の北から南に向けてガロンヌ川右岸にあるカディヤック、サンテミリオンの東でドルドーニュ川沿いのカスティヨン、カスティヨンの北でドルドーニュとリズル川に挟まれたフラン、カスティヨンやフランからさらに内陸でジロンド県の東端のサント・フォワだ。丘陵や沿岸を意味する「コート」と名の付く通り、この5つの栽培地は、「川沿い」や「丘陵」に畑があるという共通点を持つ。

 

元々1985 年に異なるアペラシオンの生産者たちが、「コート栽培地」という同じアイデンティティのもとに集まって協会が発足した。そして共通のブランド名で知名度アップを図るため、2004 年から07 年にかけて、AOC コート・ド・ボルドーの制定案が生まれ、ブライ、カディヤック、カスティヨン、フランの4 生産地がまとまって、協会はコート・ド・ボルドー連合に名称を変更。そして09 年に新AOC コート・ド・ボルドーが正式に誕生し、16 年にはサント・フォワも加わって、現在の形となったのだ。

 

姉妹的関係にあるこの5つのAOC のラベルには「コート・ド・ボルドー」という共通のファミリーネームとともに、ファーストネームである「ブライ」、「カディヤック」、「カスティヨン」、「フラン」、「サント・フォワ」という栽培地名がそれぞれ併記され、個性や特徴を表す指標となっている。

 

コート・ド・ボルドーは現在、合わせて1 万2000 ha の広さがあり、生産者数は約950 軒、年間生産量は約50 万hl(97%が赤ワイン)と、ボルドー全体の10 分の1を占めている。比較的平坦なボルドー地方の中で、「川沿い」や「丘の斜面」に畑があるため、より起伏や変化に富んだ土壌であり、ワインの味わいにニュアンスを与える一因となっている。また全体の95%が家族経営の個人生産者で、栽培面積が10ha 前後の中小規模の造り手が多く、各生産者の持つ畑の場所によって、異なる個性が際立ってくる。そして規模が小さいことによる職人的な製法も多様性の源となっている。

 

ボルドーの中でも極めてビオやビオディナミへの意識が高い地域でもあり、例えばカスティヨンでは生産者の約30%が、フランに至っては約50%がビオ栽培を実践しているほどだ。そして若手後継者や新規参入者たちが、昔ながらの伝統にうまく融合している印象も受ける。互いの熱意を触発し合いながら、伝統とモダン、ダイナミズムが相まって、新たな付加価値が形成されている。

 

現在の課題は、全体の約20%にとどまっている輸出を活性化することだという。CIVB の調べによると、2016 / 2017 年の輸出量は91344 hl で、数量ベースで前年比16%増、金額ベースで24%増と上向き傾向にはある。主なマーケットは中国と香港、ベルギー、アメリカで、日本は現在5 番目の市場だ。日本市場は特に、今後の消費を担う「ミレニアル世代」の心を掴むアイテムがポイントだとして、小動物をアイコンにしたものやコンビニ向けのキュヴェ、亜硫酸ゼロのキュヴェなど、様々なアイデアを検討中だ。このように各市場のニーズに合わせ、生産者は積極的に、柔軟に対応している状況だ。(T.Inoue)

シャトー・ランゴワラン、シャトー・ド・リコー、シャトー・レスカノー、シャトー・ベイナ、シャトー・プピーユ、シャトー・マノワール・デュ・グラヴー、シャトー・クリュ・ゴダール、テュティアック生産者協同組合、シャトー・ペイボンノム・レ・トゥール、シャトー・ロラン・ラ・ガルド、シャトー・ジゴー、シャトー・メゾン・ヌーヴ、以上12ワイナリーの紹介はWANDS 12月号をご覧ください。ウォンズのご購読はこちらから。デジタル版もできました。

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