“世界に通じるワイン産地をめざす”高山村の醸造用ブドウとワイナリー振興策

佐久市から北西へと向かっていた千曲川は、千曲市を経由したところから北東へと向きを変え、やがて新潟との県境を越えて信濃川へと名前が変わる。この川筋に沿って長野市から須坂市、中野市、飯山市へと延びる長野盆地一帯が北信地方だ。北信地方は基本的に内陸性気候だが、北に行くほど日本海側気候の影響を受ける。スキーで有名な志賀高原も長野盆地の北東端に位置している。長野市や須坂市周辺は昔からリンゴなどの果樹栽培が知られているが、いま新興ぶどう産地として熱い注目を集めているのが高山村だ。高山村で初めて醸造用ぶどうのシャルドネが栽培されたのは1996年、僅か20年ちょっと前のこと。しかしこの地のぶどうのポテンシャルの高さは、「メルシャン北信シャルドネ」や「サントリージャパンプレミアム高山村シャルドネ」が日本ワインコンクールや海外のコンテストでの金賞受賞ですでに実証済み。こうした事実に背中を押されるように、近年、高山村でのワイン用葡萄の新規就農者やワイナリー設立が相次いでいる。

 

この10年間で醸造用葡萄畑は10倍以上、40haまで広がった

長野市の東から約20Km、笠岳山麓の松川渓谷沿いの扇状地に広がる高山村は、昔から果樹生産地帯として知られ、リンゴや生食用ぶどう栽培が盛んな土地柄だ。この地が果樹栽培に適しているのは、年間平均降水量が850mと少ないこと、傾斜地に加え洪積層砂礫質とその上を覆う火山灰土のおかげで排水性に優れていること、年間平均気温11.8℃と冷涼な気候下と昼夜の寒暖差が大きいこと、そして日照時間の長さにある。

しかし、村民人口7000人余り、農家戸数747戸の髙山村でも高齢化は進んでいる。生食用葡萄の作付面積は90ha強、リンゴ畑も150~160ha あるが、年々減少する傾向がみられ、耕作放棄地も広がっている。

そこで髙山村では果樹栽培に対する恵まれた自然環境と遊休農地を活用し、高齢者でも栽培可能な省力栽培で、かつ付加価値の高い農作物としてワイン用ぶどうに着目。2006 年から本格的な取組をはじめた。

まず、最初に始まったのが、「高山村ワインぶどう研究会」の立ち上げ。醸造用ぶどうの栽培、普及とワインの醸造・販売について調査、研究をおこなうことを目的に、同年2 月に設立されたこの会は、発足当初のメンバーは村内の農業者を中心に僅か30名だった。しかし、それから10余年、メンバーは栽培者や醸造・農業用資材関係者、酒販・飲食店関係者、旅館経営者、自治体職員、ワイン愛好家などへと広がり、昨年末現在129名へと広がっている。

もう一つの取組は、栽培協力協定の締結による遊休荒廃農地のワイン用葡萄栽培への転用。高山村における醸造用葡萄の栽培では先駆者的存在である角藤農園と、高山村ワインぶどう研究会、高山村との3 者協定によって、高山村の西側、比較的標高が低い日滝原地区で8.5haにおよぶ圃場整備が進んだ。

こうした努力の結果、2006年当時、ワイン用葡萄の栽培者は僅か12者(内、専業農家は7軒)、圃場面積は3.1haに過ぎなかったが、10年後の2016 年には栽培者26者(専業19者)、圃場面積も40haへと急速に広がっている。

ワイン用葡萄が栽培されているのは、標高400m~850m。かつてはシャルドネが80%を占めていた。いまでもシャルドネは44%と中心的な品種であることは変わらないものの、この標高差を利用して、ソーヴィニヨン・ブランやメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、バルベーラなど、フランス、イタリア、ドイツ系など多様な品種が栽培されるようになった。標高800mの高地、福井原では佐藤明夫氏と長谷光浩氏がピノ・ノワールの栽培に挑戦している。(M. Yoshoino)

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トップ画像:(26a)高山村において2番目のワイナリー「信州たかやまワイナリー」が2015年11月に設立され、2016年ヴィンテージから醸造が始まった

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