アルゼンチンワイン特集/老舗カテナ・サパータの提案する新生マルベック・グアルタジャリー

フランスやアメリカの醸造コンサルタントが活躍し、海外資本の参入でメンドーサのマルベックが世界的に評価されるようになった。しかし、新しいメンドーサと新生マルベックを牽引するのは地元の家族経営ワイナリー、カテナ・サパータである。

(中略)

2002年、研究開発チームの責任者にアレハンドロ・ビヒルを迎え、2004年に標高の高いブドウ畑の栽培研究が柱に据えられた。それより以前、ニコラスは自慢のカベルネ・ソーヴィニヨンをピエール・リュルトンに試飲して貰う機会があった。リュルトンの評価は、「良いラングドックワインのようだ」というものだった。それがきっかけでニコラスは標高の高い冷涼地にブドウの作付けを進めていたのだった。アレハンドロは、その高地のブドウ畑にメスを入れ、高地のブドウの特性と最適品種を研究しようと動いたのである。ルハン・デ・クージョの畑を標高別に仕分けるだけでなく、さらに標高が高くて冷涼なウコ・ヴァレーのグアルタジャリーにあるアドリアンナ畑を小さな区画毎に分析しはじめた。

 

また、それまでの研究はさまざまな条件の「均質性」をテーマに進められていた。品種、穂木、栽培条件、収穫時期などが同種、均質であることが品質にとって大事だと考えていたからである。しかし、徐々に何が違い、どうして違うのかを突き止めその個性をワインに反映することが重要だと考えるようになった。そして2008年、それぞれの個性毎に分けて摘み、250もの小さな容器で試験醸造を行った。その結果、土壌のタイプ・組成、灌水の仕方などでワインの性格が異なることが分かった。2013年にはこの研究開発チームの名をカテナ・インスティテュート・オブ・ワインと改称し、外部の研究機関やワイナリーとの情報交換、共同研究がおこなわれている。

 

2009年に土壌組成の違いによるシャルドネの醸造を開始した。グアルタジャリーのアドリアンナ畑(標高1,450m)の、①丸い小石の表面が薄く石灰質で覆われたホワイト・ストーンの多い土壌、②石灰質(ホワイト・ボーン)の多い土壌、この二か所に同じシャルドネを植えた。2009年が最初のヴィンテージ。

*アドリアンナ・ヴィンヤード・ホワイト・ストーンズ・シャルドネ2015

フローラル、ドライハーブ、柑橘の香り。きれいな酸味、味わいに力と厚みと複雑味がある。余韻がやさしい酸味とともに長い。

*アドリアンナ・ヴィンヤード・ホワイト・ボーンズ・シャルドネ2015

やや閉じ気味で香りのヴォリュームが少ない。しばらく待つと火打石のニュアンスと柑橘の香りが立ってきた。きれいな酸味と厚み。味わいの最後に塩味が感じられて余韻が長い。どちらのシャルドネもオーク由来の要素が幅を利かすことがない。

同じく、冷涼なアドリアンナ畑のマルベックを土壌組成の違いで三つに分けて醸造し、それぞれに名前を付けてリリースした。これで、クール・クライメット・マルベックの味香が土壌の違いによってどう変わるのかを確かめることができる。いずれも2013年ヴィンテージ。

*アドリアンナ・ヴィンヤード・ムンデュス・バシユス・テラエ・マルベック2013

1.4haの石灰質土壌の区画で水はけがよく根の周囲に微生物がたくさん棲んでいる。ムンドゥス・バシユスは「微生物の世界」のような意味合い。2011年がファースト・ヴィンテージ。海藻のニュアンス、ドライハーブの香り、瑞々しいアタック。しなやかなタンニンと酸味のバランスが素晴らしくよい。余韻が長い。〈参考価格33,100円〉

*アドリアンナ・ヴィンヤード・フォルトゥーナ・テラエ・マルベック2013

5haの「幸運の区画」。表土のローム層が厚いのが特徴。2012年がファースト・ヴィンテージ。フローラル、ドライハーブの香り。口当たりは丸くてタイトなタンニン。酸味が背骨になっている。フィニッシュにミネラルを感じ長い余韻。〈参考価格13,500円〉

*アドリアンナ・ヴィンヤード・リヴァー・ストーンズ・マルベック2013

2.6haの区画。かつて川床だったところ。表土のローム層が薄く、表面を白い石灰質で覆われた丸い石の層があちこちに顔を出している。表土のすぐ下層はこの小石の層が厚い。2012年から分けて造り始めた。少し閉じている。ジューシーで瑞々しい口当たり。引き締まった酸味とややクランチーなタンニン。〈参考価格15,000円〉

中略した箇所はWANDS 2018年3月号をご覧ください。ウォンズのご購入・ご購読はこちらから 紙版とあわせてデジタル版もどうぞご利用ください!

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