アルゼンチンワイン特集/パラヘ・アルタミラ、石造りの醸造所ファミリア・スッカルディ

ウコ・ヴァレーのパラヘ・アルタミラに石造りの醸造所を建築し、石とセメントの発酵槽でワインを醸す。セバスチャン・アルベルトのワイン造りはブドウの潜在力を引き出すことに徹底して拘っている。

 

スッカルディ家はマイプーのサンタ・フリアを所有し、スティルワインはもとより、ブドウ果汁、バルクワインの生産販売を行ってきた。現社長ホセ・アルベルトの長男セバスチャン・アルベルトが独立して、2016年3月、パラヘ・アルタミラに石造りの醸造所を開業した。栽培担当のマルティン・ディ・ステファノが説明してくれた。

 

メンドーサは砂漠なのでブドウ栽培ができるのは灌漑地域(オアシス)に限定される。それでメンドーサ川、トゥヌジャン川の流域にブドウ畑が広がった。川の運んだ沖積土壌でもルハンやマイプーは小石、ウコは大きな石で大きさがずいぶん違う。ルハンやマイプーはアンデスの前脈の斜面にあるが、ウコはアンデスから流れ出した扇状地に拓かれたブドウ畑。川の周囲には石灰質が多い。アンデスはその昔、海底だった土地が隆起してできた。海底に堆積していた石灰質、石灰岩を川が運んでここに積もった。一方、花崗岩はアンデス以前の南米プレートにあったもの。カリチェは石灰岩ではない。粘土と炭酸カルシウムが一緒になってパウダー状になり、それで覆われた小石がカリチェで、グアルタジャリーに多くみられる。

 

ワイナリーの周囲にあるピエドラ・インフィニータ畑(パラヘ・アルタミラ)は、標高1,300mに拓いた290haで、2011年に植樹が終了した。パラヘ・アルタミラはその東側(斜面の下部)にあるラ・コンスルタとも異なる。ラ・コンスルタのブドウはもっと力があってストラクチャーのきっちりしたワインになる。

 

カリカタを掘ってみると畝毎に土壌のタイプの異なることが分かる。わずか2m離れただけでずいぶん違った土壌構成だ。同じマルベックの樹なのに2、3m離れただけで熟期が変わる。剪定でバランスを取り、水遣りをコントロールし、収穫前に樹1本毎に目印をつけて収穫のタイミングを変えることで対応している。ここでのマルベックの収穫は4月第2週~第3週。小石の多い畑はもっと早めに摘むべきだと思っている。

根圏を調査すると、まだ微生物の数が少ない。もとは砂漠で、前作がないからだ。有機物をドリップ灌漑水に溶かして少しずつ与えている。徐々に栽培環境は整うだろう。

 

ワイナリーはすべてコンクリートでできている。発酵槽もコンクリートで内側もそのまま、エポキシ・コーティングはしていない。発酵槽の形は四角形→円柱→アンフォラへと進化した。サイズは3,000ℓ~10,000ℓまでの75基。すべて小さいものを揃えた。グラヴィティ・フローはもちろんのこと、室内をなるべく自然光でコントロールできるようにしている。

熟成用容器は2,500ℓのフードルと500ℓの樽だけ。225ℓバリックは1樽もない。ブドウを活かしワインを長命にしたいからだという。

2015年ヴィンテージをタンクから比較試飲した。

①標高1,100m(パラヘ・アルタミラ) 小粒のフルーツ、チェリー、花の香り。瑞々しくキュッと引き締まっていてタンニンの肌理が細かい。

②1, 20 0m(グアルタジャリー) ブラックベリー、プラム、ユーカリプトゥス、乾燥ハーブなどワイルドなニュアンス。タンニンは引き締まっている。

③1,40 0m(サン・パブロ、トゥヌジャン) 乾燥したハーブとスパイスのかおりが強い。しっかり熟して引き締まったタンニン。酸味がすばらしい。  (K.Bansho)

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