特集・ウイスキー ブレンデッド・ウイスキー再考

かつてスコッチウイスキーは、その品質と定義をめぐって大きく混乱した。そして、それを乗り越えることでスコットランドの地酒から世界の酒へと大きな発展を遂げた。今日ただいま、日本のウイスキー事情が同じような混乱状況に陥っているわけではないが、少し異なる事情で「ウイスキーとは何か」という原点に立ち返り、いまいちどウイスキーを見直す時にきていると思う。

 

日本産モルトウイスキーが英国のコンペで大きな評判を得てからというもの、国の内外を問わずモルトウイスキーの需要が急増した。人気商品の供給が間に合わず、欲しくても買えない状況が続いている。さらに「日本産」が過大評価される傾向にあり、これはワインも同様なのだが、日本産モルトというだけで持ち上げられているようにも見える。

ワインならば一年待てば新しい生産年の品が届く。しかしウイスキーの熟成には10年、20年という長い歳月を要する。10年先の市場を見越して生産計画を立てねばならないのがモルトウイスキーだ。

 

長期熟成モルトに人気が集中する一方で、熟成しない(あるいは熟成の浅い)アルコールをベースにしたカクテル製品、RTD製品の売行きがよい。また、ソーダ割り(ハイボール)という飲み方が普及したのでウイスキーもたくさん売れている。ウイスキーの飲み方は人それぞれの嗜好であるから、どんな飲み方が良くて何が悪いとは言えない。ただ、「ハイボール」という名のカクテルはアルコールの粗いウイスキーを炭酸の作用でやわらげる米国の飲み方だったはず。甲類焼酎を炭酸で割った焼酎ハイボールから転じたチューハイもまた同様である。

 

大きな気がかりが一つある。高価な長熟モルトと熟成の浅い低価格ウイスキーが繁栄する一方で、きちんと熟成したブレンデッド・ウイスキーの存在が等閑視されていることだ。しっかり熟成したモルトと貯蔵してまろやかになったグレーンを使い、ブレンダーの感性で組み合わせた酒こそがウイスキーの正統であると思う。それがないがしろにされているようにみえる。

 

ブレンデッド・ウイスキーには熟成したグレーンウイスキーが必要だ。ところが日本の酒税法にはグレーンウイスキーの原料も熟成年数も規定されていない。それどころかウイスキーとは何かという根幹の部分が曖昧なままである。

日本で「ウイスキー」を名乗ることができるのは、①麦芽を蒸留したもの(モルトウイスキー)、②穀類を蒸留したもの(グレーンウイスキー)、③それ以外のもの、つまり①と②にアルコール、スピリッツ、香味料、色素、水を加えたもの(この時、①と②はあわせて全体量の10%以上でなければならない)である。つまり甲類焼酎に10%のモルトかグレーンを加えればウイスキーを名乗ることができる。どの類型にも熟成期間は規定されていない。ウイスキーの級別は廃止されたけれど、「ウイスキーとは何か」を問い続けなければいけない状態は続いている。(K.Bansho)

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