アンテプリメ・ディ・トスカーナ Anteprime di Toscana 2018

今年も2月10日からおよそ1週間にわたりトスカーナ各所でワインのプレビュー・テイスティング「アンテプリマ」が開催された。試飲会を行なったのは、1: 小さな産地合同/2: キアンティ/3: キアンティ・クラシコ/4: ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ/5: ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノ/6: ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの生産者協会だ。

それぞれ試飲に出てくるヴィンテージは異なるが、暑く乾燥した2011年、変わった年だった2012年、クラシックな2013年、雨の2014年、理想的な2015年、偉大な2016年につづき、昨年2017年をどう評価するのかも注目された。

 

1: 小さな産地の合同試飲会

マレンマ、カルミニャーノ、エルバ、モンテクッコ、コルトーナ、ヴァルダルノ・ディ・ソプラなど11の産地が合同で試飲会を行なった。すべては網羅しきれないので、今年はカルミニャーノとモンテクッコにしぼって試飲した。

 

<カルミニャーノ Carmignano>

カルミニャーノは、栽培面積がわずか200haのイタリアで最も小さいDOCGで、IGT用の畑120haを加えても合計で320haにしかならない。ブドウ品種は、サンジョヴェーゼ50%以上、カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニョンを単独あるいは合わせて10〜20%、カナイオーロ・ネーロ20%まで、その他の白品種赤品種は10%まで。16世紀にカテリーナ・デ・メディチが持ち込んだとされるカベルネ系が必須なのが特徴だ。規模が小さいこともあり派手さはないが、カルミニャーノは長年の経験からサンジョヴェーゼとカベルネ系品種が自然体で融合していると改めて感じた。

カルミニャーノ周辺のメディチの広大な領地の名前に由来するバルコ・レアーレ・ディ・カルミニャーノと同ロサートはDOCで、使用するブドウ品種は同様だが、フルーティでより若くして楽しめるバージョンだ。地元ではロサートをヴィノ・ルスポ=盗んだワインと呼んでいるのも面白い。特に印象に残った生産者と銘柄は以下の通り。

 

▶ Tenuta di Artimino

2013年に世界遺産に認定された館で1596年に建てられたMedici Villa La Ferdinandaがあり、ブドウ畑は80ha。10年ほど前に経営メンバーが代わり、畑もワイナリーも改革された。ワイン造りはまだ20代後半の若き女性が統括しているという。いずれも洗練された造りで印象深かった。

Barco Reale di Carmignano 2017 Ser Biagio Campione da Vasca 今年4月にリリース。サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ。ハツラツとしたチェリーの香りが華やぎ、ジューシーで、タンニンがほどよく味わいを引き締めている。今すぐ楽しめる。

Carmignano 2015 Poggilarca サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ。力のある凝縮した香りで、バランスよく若々しい状態。中盤から後半にかけて力強さが増し、ストラクチャーもしっかりしている。まだ若い。

Carmignano Riserva 2013 Grumarello サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、シラー。若々しい上品な香り。しっとりとしたアタックで、酸のフレッシュさが心地よく、細く長い味わい。繊細なボディ。

▶ Tenuta di Capezzana

Carmignano 2015 Villa di Capezzana サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニョン。香りは開き始め、フレッシュな赤い果実の香りが主体でスパイスも加わる。なめらかなアタックで中間も充実し、ストラクチャーもしっかり。

IGT Toscana Rosso UCB Ugo Contini Bonacossi 2015 サンジョヴェーゼ。まだ香りは閉じているが力が感じられる。果実の熟度が高く、酸は中程度で収斂性はたっぷり。とても綺麗なテクスチャーでピュアな印象。ゆっくりと飲みたい。

▶ Piaggia

Carmignano Riserva 2015 サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン。香りはまだ閉じている。厚みがあり、凝縮した味わい。果実も酸もタンニンも、いずれも高いレベルで均衡している。まだまだこれから。

IGT Toscana Rosso 2015 Poggio dei Colli カベルネ・フラン。少し野生的な要素も感じる、熟した果実とスパイスの香り。熟度の高さを思わせるふくよかなアタックで、厚みがあり、収斂性も強いが丸みも感じられる。とてもよく熟したカベルネ・フラン。

 

<カルミニャーノ/2015年ヴィンテージ情報 歴史的なヴィンテージ>

春は雨が多く例年より気温が高かった。5月から7月にかけて暑く乾燥していたが、春の雨でストレスなく順調に成育した。8月も適度な雨と平年並みの気温で、9月は若干涼しくゆっくりと成熟した。長い成長期により理想的なフェノールの成熟が得られた。アルコール度数が例年より少し高めだが、充分な酸とアロマも備えた、力がありエレガントでバランスよい長寿なワインができあがった。

<カルミニャーノ/2013年ヴィンテージ情報 収穫が遅かったヴィンテージ>

2011年、2012年に比べて芽吹きは遅かった。5月の気温も低めで雨もあり成長はゆっくり進んだ。6月25日から8月25日までは晴天が続き気温も上がり夏が来たが、気温は前年よりは低かった。9月初めは30℃を超える日もあったが、その後は平年より低く、日較差も大きかった。ゆっくりと成熟し、早熟のメルロでさえ9月半ばからの収穫で、サンジョヴェーゼは10月初めからとなった。(Y. Nagoshi, Johannes Haruki Sasaki)

つづき<小さな産地:モンテクッコ/ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ+コルドルチャ+ピエーヴェ・サンタ・レスティテュータ/キアンティ/キアンティ・クラッシコ+バディア・ア・コルティブオーノ/ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ/ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノ>は、WANDS 2018年5月号をご覧ください。ウォンズのご購入・ご購読はこちらから
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