15世紀初頭にブドウ畑があったイギリス南東部アップルドアの新星「ガズボーン」

「イギリスといえば、ワイン消費国のイメージの方が強いが、ローマ時代にはワインを造っていたことがわかっている」と、ガズボーンのグローバル・アンバサダーを務めるマスターソムリエのローラ・リースさんは言う。

「ガズボーン」は、イギリス南東部ケント州のアップルドアで2004年から始まったワイナリーで、初リリースをした2010年からすぐに多くの高評価を得ている。

 

<イギリスのワイン>

イギリスはブドウ栽培の北限にあるため、湿度の高さや霜といったリスクはあるものの、生長期が長いため十分なフェノールの成熟を得ながら高い酸を保てるのが利点だと考えている。ただし、ブドウ栽培に有利な立地条件の整ったイギリスでも比較的温暖なミクロクリマの場所を戦略的に選ぶこと、畑を丁寧に手入れすることがとても重要だという。今すでにイギリスには500以上の栽培家がいて、ブドウ畑は約2,300ha、ワイナリーは130を超えた。モダンなワイナリーが本格的に始まったのが1980年代後半からなので、勢いがある。

マスターソムリエのローラ・リースさん

ローラ曰く「自社畑のブドウと購入ブドウ、あるいは購入ブドウだけで造っているワイナリーがほとんどで、ガズボーンのように自社畑のブドウだけで賄っているところは珍しい」。ガズボーンでは自社のブドウを他社に売ることもしていないという。

そして、イギリスワイン生産量のうちスパークリングワインは66%を占めている。80年代はドイツ系の交配品種を植えていたが、次第にスパークリング用のシャルドネ、ピノ・ノワールが主流となり、最近になってピノ・ブランやピノ・グリなども増えてきているようだ。

 

<ガズボーンの畑>

創立は2004年だが、初ヴィンテージは「ブリュット・リザーヴ2006」で2010年にリリースを開始した。現在、ケントに60haとサセックスに30haの畑を所有している。

ケントでは2004年から2007年にかけて20ha植樹した。残りの40haは2014年からの植樹でまだワインにはしていない。海から10kmほどの場所で、粘土と砂の土壌で収穫は比較的早い。およそ9月末から10月初めが収穫時期だ。

ケントは標高30mで海風がよく通る場所で、風力発電のためのタービンが設置されているようだ。果樹園やカブの栽培がされていた地域だが、14世紀の文献によると今ガズボーンの畑がある緩やかな起伏のある場所は、半分はイギリス海峡の水面下にあった。ここもボルドーのようにオランダ人が灌漑設備を施すことによって畑にすることができたという歴史がある。

サセックスの30haは2014年に植樹で、2016年から収穫している。こちらは海から13kmほど離れていて砂とチョークの土壌で、ケントより2週間ほど収穫が遅い。

 

シャルドネ(50%)、ピノ・ノワール(40%)、ムニエ(10%)の3品種を栽培していて、シャルドネとピノ・ノワールについてはすべてブルゴーニュのクローンだ。創立者のアンドリュー・ウィーバーが、粘土質土壌にブルゴーニュのクローンを植樹することで、収穫量が低く深みのあるワインができると考えたからだ。台木も様々なため、ベースワインは150種類にも及ぶという。

 

<ブラン・ド・ブラン>

ここのフラッグシップはシャルドネ100%のブラン・ド・ブランで「シトラスが香り最もミネラルが感じられる。エレガントなスタイルながら複雑性があるのが特長」だとローラがコメントした。

ブラン・ド・ブランの最新ヴィンテージ2013年に加えて、2012年、2010年も比較試飲した。マロラクティックは100%行い、瓶内熟成は36ヵ月以上。ドザージュ9g/l。

2013年:<涼しい年だったが、安定した気候でゆっくり生長した> 桃などの熟した果実が香り、ふくよかさも感じられ、ソフトな食感で純粋性が感じられる。

2012年:<とても残念なヴィンテージで、嵐に見舞われまったくワインが造れないワイナリーもあった。しかしガズボーンの2012年は大変出来がよく、2016年にDecanter誌のTop75に選ばれるほどだった。「2012年のイギリスで高品質のワインが造れるわけがないから、何かの間違いではないか」と、何件もワイナリーに問い合わせがあったという> トースト香と熟した果実の香りがあいまって、味わいは少しタイトで酸もキリッとしている。

2010年:<2013年と似た年> 少し熟成が感じられ、少しドライな果実やトーストが香り、心地よい食感でまとまりのよい味わい。落ち着きがあり、とてもよい状態。2013年の若々しさも良いが、少し置いておくのもいいと感じた。

 

2007年から試作を始め、2009年から毎年少量だけ造っているという「ピノ・ノワール ブート・ヒル・ヴィンヤード 2015」も試飲した。夏にグリーン・ハーヴェストをして香りが高く酸も保たれている区画を選んでいるという。

フレッシュなラズベリーにほんのりなめし皮が加わる繊細な香りで、とてもフレッシュで上品な味わい。冷涼な地域で育ったピノ・ノワールらしさが表現されている。(Y. Nagoshi)

輸入元:BB&R(ベリー・ブラザーズ&ラッド)

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