特集カクテル パリで華やぐ 美食×カクテル

ディナーはカクテルとともに。数年前からパリでは、カクテルを料理と一緒に楽しむバー・レストランのオープンが相次いでいる。食前や食後だけにとどまらず、「美食」と結びつけることで、カクテルの可能性が広げる。ではどのように料理と合わせているのか、話題の2店舗にお話を伺った。

 

Artisan (アルティザン)

明るい陽光の差し込むカウンターで、本格的なカクテルとこだわりの料理を味わうスタイルが、パリで5,6年前からの流れとなっている。その先駆けの一店であるArtisan(アルティザン)は、モンマルトルの麓のサウス・ピガル地区に2013年にオープン。バーやホテル、レストランなど、注目店がひしめく界隈だ。顧客の中心は30~40代の世代。お店の周囲はまるでスポットライトが当たったように、若いファミリー向けの居住地区にもなっており、界隈の家族連れも多いという。また主に広告、モード、金融関係など、流行や高品質なもの、美食に関心の高い顧客が訪れるそうだ。

 

オーナー・バーテンダーのフレデリック・ル・ボルディは、チャイナクラブやセルクルといった名だたるバーを経てコンサルタントとして独立後、自身の店を構えた。「質の高いカクテルとともに、選りすぐった素材の料理が楽しめる場を提供したかった。カクテルと料理のペアリングは、イベント時にはとことん追究するが、日常のメニューではこだわり過ぎることなく、柔軟に考えている。顧客の好みや希望はそのシチュエーションによってさまざまだから。いろいろな楽しみ方のできる居心地のよい店でありたい。」とフレデリックは語る。オープン時間は一般的なレストランよりやや早く19時。アペリティフから始めて、そのまま食事もとり、食後のカクテルまでゆったり過ごす顧客もいれば、アペリティフの後いったん店を出て、また食後に戻ってくる人々もいる。メニューは比較的シンプルな構成だ。オリジナルカクテルが6~10種、クラシックカクテルが4,5種、ポンチカクテルが2種で、年に4,5回、変化を加えている。料理は季節やその時の市場に応じたメニューで、アントレ3種、メイン3種、デザート2種から選ぶ形。アントレに出されるシャルキュトリーにしても、バスク地方のオスピタル、スペインのアイタナから仕入れるなど、グランメゾンでも扱われる選りすぐりの食材が登場する。そしてカクテルと料理のペアリングに興味を持つ顧客には、お薦めの組み合わせを進言する。

 

オーナー・バーマンのフレデリック・ル・ボルディ

例えば、この日のメニューの筆頭は、ガルシア産のタコ。ニンニクとタイムでカリッと焼き上げ、トウモロコシのピュレが添えられている。この料理に合わせるお薦めのカクテルは、ローストピーナッツ風味のオールド・ファッションド。煎ったピーナツで風味付けしたライ・ウイスキーをベースに、角砂糖とビターズで、甘みと苦みがバランスよく広がる。肉厚で弾力のあるタコのテクスチャーはライ・ウイスキーの個性的な力強さにしっくりといく。カリッと焼き上げた風味は、ピーナツの香ばしさにも折り合う。また生姜やシナモン、クミン、コリアンダー入りのトウモロコシのピュレが、思いのほか味蕾をくすぐり、頑強なオールド・ファッションドと共鳴する。2皿目の料理は、セープ茸のリゾットのコロッケにトマトの風味を加えたもの。合わせたカクテルはシソ・ピスコ・スマッシュ。ピスコをベースに、カンキナ、紫蘇、レモンを合わせた爽やかなカクテルだ。中身のクリーミーなリゾットにも、揚げてサクッとした触感にも、カンキナに由来するアニスとミントの

「シソ・ピスコ・スマッシュ」にはセープ茸のリゾットコロッケを

風味、紫蘇とレモンのフレッシュな爽快感が程よく引き立て合う。このシソ・ピスコ・スマッシュは、そのままデザートにも移行できる。この日のデザートはレモンとカタバミのクリームが添えられたチーズケーキ。酸味が呼応し、ほのかな苦みがアクセントとなって、違和感なく寄りそった。このように料理を意識したカクテルは、若干苦みを加えた方が合わせやすいそうだ。

 

また、アルティザンで人気のカクテルも伺った。クラシックカクテルの中では、モスコミュールやオールド・ファッションドのほか、ジンベースのコープス・リヴァイヴァーNo.2。オリジナルカクテルでは、タイムで風味付けたジンをベースに、ビート、レモン、生姜、ゲンチアナを組み合わせたルイゼットや、ウォッカをベースに、ニワトコの実、レモン、グレープフルーツ、トニックウォーター、アブサンを組み合わせたフレンチ・ミュールが人気とのことだ。(Tomoko Inoue)

Artisan   14, rue Bochart de Saron 75009 Paris

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トップ画像:フレデリック・ル・ボルディが出版したクラシック・カクテルのレシピ本

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