The Prince Gallery Tokyo Kioicho 阿部央氏バカルディ レガシー カクテルコンペティション2018 世界大会へ

バカルディ レガシー カクテルコンペティションは、世界で最も権威ある大会のひとつだと言われており、参加国も多い。今年は34カ国35地域から精鋭たちがメキシコ・シティに集結する。世界大会へ向かう前に、阿部央氏にその意気込みを聞いた。

 

「TALES OF 8」永遠を紡ぐ物語、の物語

日本大会を観戦した中で、最も印象に残ったカクテルの名前は「テイルズ・オブ・オチョ」だった。そしてスペイン語で「8」を「オチョ」と読むことも、その場で覚えた。そのぐらい阿部氏はプレゼンテーションの間に、繰り返し「8」について、「オチョ」について熱く語っていたからだ。

阿部氏がベースに用いたプレミアムラム「バカルディ8」は、創業者ドン・ファクンド・バカルディが家族のためにだけ作ったプライヴェートなラムだった。その「8」にかけて、自身の「8の物語」を紡ぎ合わせていた。

 

命名

カクテル愛好家が集う世界最大のスピリッツフェスティバル「テイルズ・オブ・ザ・カクテル」も知られており、「テイルズ」という言葉は耳障りも良く覚えやすい、という点にも着目した。

そして「8」は日本では「八」であり末広がりで縁起がよいことに加え、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治した後に詠んだとされるラブソング「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」にも「八」が登場するなど、「八」には多くのストーリーが存在する。また阿部氏は昨年も日本大会ファイナルに出場しているが惜しくも優勝は逃した。その時も「バカルディ8」を使い「CLOUD8」を作っている。「8」へのこだわりはそれからもずっと残っていたのだ。

 

コーヒー&黒糖

The Prince Gallery Tokyo Kioicho Sky Gallery Lounge Levitaで楽しめるセットのひとつ

さらに、構成としても昨年の「CLOUD 8」を捨てられず、反対に「CLOUD8」を基にして進化させる形で「TALES OF 8」を創作したという。だから、「コーヒーと黒糖というパーツは昨年と同じ」。コーヒーにこだわったのは、創業者の妻ドーニャ・アマリアさんがハイチのコーヒー農園の生まれであることから。そして黒糖は阿部氏の祖母の故郷である沖の伊良部島の特産でもあり、原料がラムと同様にサトウキビだ。どちらも家族の物語であり、これからもそのルーツは変わらない。

コーヒーについては、コーヒー専門のロースターを訪ねるなどして多くの知識を習得した。使ったハイチの豆は、香りがラムと相性が良いだけではなく味わいが強すぎないこともポイントだった。例えばイタリアンローストは強すぎる。カクテルはバランスが大切だからだ。エスプレッソにして凝縮して加えるだけでなく、最後にコーヒー豆をすりおろして仕上げた。

「バカルディ8」にフルーツの酸を足すとぶつかる場合があるが、コーヒーの酸と苦味は大丈夫。そして、エスプレッソの香りと苦味を黒蜜がうまくまとめあげてくれる。黒蜜は、ラムと原材料が同じだからもともと相性が良いというだけではなく、味わいを伸ばしてくれるのだ。

 

ミント&スパークリングワイン

こちらもLounge Levitaで

昨年の「CLOUD8」は重めだった、という反省から、インパクトの強いカクテルもよいが、もう一杯飲みたくなるようなスタイルにしようと決めた。だから、コーヒーと黒糖の2パーツは同じだが、パイナップルとコーラをミントとスパークリングワインに変更した。

ミントはもともとラムとの相性が良く香りが強い。昨年の優勝者の佐藤健太郎氏とシンガポールのカクテルウィークを訪れた際、8カ国でチーム戦を行い、日本は2位を獲得した。その時、試しにミントを用いて違和感を感じなかったので8枚使うことにした。

スパークリングワインについては、上海のバーに、ゲストバーテンダーとして招かれた時に使ってみて手応えを感じていた。昨年の「CLOUD8」もコーラを合わせることによって泡が出きているので見た目は似ているが、今回スパークリングワインを使うことでカプチーノのようななめらかな泡ができた。コーヒーは酸素を取り込む作用があるため、泡の持続性も舌触りも同時によくなった。

「この大会を通じて本当に縁が広がった。だから、こういった自分のストーリーも含めてTALES OF 8が生まれた」。

実に見晴らしのよいバーカウンターで「TALES OF 8」の味見をした。芳醇ながら本当に後味がすっきりとしていた。口当たりがよく軽快なので、確かに後を引く味わいだ。

阿部氏は目下世界大会へ向け、プレゼンテーションの準備中だ。英語でのプレゼンテーションの特訓をしたり、「八」にまつわる日本文化を紹介しながら筆で「八」と半紙に描こうか、など色々考えている。奮闘の様子を帰国後に聞くのが今から楽しみでならない。

The Prince Gallery Tokyo Kioicho Sky Gallery Lounge Levita

東京都千代田区紀尾井町1-2 35F

(画像提供:The Prince Callery Tokyo Kioicho)

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