スペイン、バレンシアの古代品種 ~ボバル~ Vera de Estetas

スペイン、バレンシア州最西部にあるウティエル・レケーナより創業100年を迎えるヴェラ・デ・エステナスの当主フェリックス・マルティネス・ロダが来日した。この地を代表する生産者であり、未だ無名に近い在来品種ボバルの魅力を日本に伝えるとともにビジネスパートナーを探しに来た。

主にウティエル・レケーナ周辺で栽培されているボバルは最近の考古学の研究によって、既に紀元前5世紀にはこの地で栽培されていたことが分かった古代品種である。この地では、多くのアンフォラが発掘されており、これはギリシャ人やフェニキア人の間で2500年前からワインが親しまれていたことを示すのみならず、ヨーロッパの概念が誕生する以前に地中海域における経済活動にこのボバルが貢献していたことを意味する。また、19世紀末にヨーロッパを襲ったフィロキセラ禍はこの地には届かず、当時フランスのネゴシアンらはワインビジネスを継続するためにボバルを使用したという。世界的にはあまり知られていないが、この地域におけるボバルの存在感はかなり大きなものだった。

スペインにおいて、ボバルはテンプラニーリョ、アイレンに次いで栽培面積が広い品種であり、発祥はウティエル・レケーナ周辺と言われている。この地では、既に2500年前からワイン産地であることを強調したいという理由で現在ユネスコ世界遺産への登録申請中だ。

ボバルは色が濃く、ベリーなどの赤い果実の香りが特徴的だ。タンニンも豊富で酸が高い。もともとこの地ではボバルはバルクワインとして売られていた。一般にワイン生産者の間では、ボバルはクリアンサには向いていないという認識があり、樽熟成が導入されたのはごく最近の話である。ベラ・デ・エステナスは1919年に設立され、当主フェリックス・マルティネス・ロダの父親の代からバルクワインではなくボトルワインの販売を開始した。80年代には、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネなどを栽培したが、世界のワイン市場が既に国際品種で飽和状態にあると知った時、他と差別化するためにボバルに回帰することを決心したという。

この地域の年間平均気温は14℃、年間平均降雨量は約480mmである。冬は寒く長く、これにより春の訪れが遅れることも多く、4月や5月でも霜害を被ることがあるという。夏は乾燥し、比較的短い。秋も長くはなく、この時期に段階的に気温が下がり始める。ワイナリーが位置する土壌は石灰質及び砂利や玉石の混ざった石灰層で、他には沈泥質粘土もみられる。また、この地域では侵食によりできた多くの丘陵や谷が特徴的である。このような条件が整っていたこともあり、フェリックスはこの地での高品質なボバルの栽培が可能だということを確信していたという。さらに、よりワインの質を高めるために多くの試行錯誤を経て、酸化が極めて遅い醸造技術を編み出し、その結果クリアンサには向いていないと言われていたボバルから長年の努力でファインワインを造れるようになったという。

試飲したボバルは、とても濃厚な赤紫色で香りはダークチェリーなど熟れた赤い果実が中心でヤマブドウを思わせるヴェジタルなニュアンスもある。しっかりとしたアタックで上品な果実味が際立つ。驚くのは見た目と香りの印象と味わいに大きなギャップがあることだ。強い日光を浴びたことを思わせる色調とややアルコールも感じる力強い香りとは反面、繊細な果実味とフレッシュな酸のバランスが非常に良く、バランスが取れているワインである。脂を多く含むお肉料理にはとても良い伴侶となりそうである。(Johannes Haruki Sasaki)

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