東京インターナショナル バーショー2018 〜バー ミソロジー〜 2日間で延べ12300人の来場者

去る5月12日、13日の両日、東京ドームシティ プリズムホールで開催された〈東京インターナショナル バーショー2018バー ミソロジー〜〉は、2日間で延べ12300人の来場者を集め、バーテンディングやミクソロジーへの関心の高さを証明した。

酒類・バー業界最大のイベント〈バーショー〉が初めて東京で開催されたのは2012年で、今回で7回目の開催だ。出展ブースの数は48 。来場者の多くはバー関係者やバー愛好家だったように見受けられた。出展企業、来場者とも、回を重ねるごとにその数を増やしている。主催は一般財団法人カクテル文化振興会。後援には農林水産省、経済産業省などに加え、今回はウィスキーのアイラ島で知られるスコットランドのスコットランド国際開発庁が名を連ねた。

 

ジンブームを反映

会場を見回して一目でわかるのはジンのブースが多く、人も多く集まっていたこと。日本におけるジンブームの火付け役とされるドイツのジン「モンキー47」(ペルノ・リカール・ジャパン株式会社)のブースでは、恵比寿の「バー・トラム」などを経営する伊藤拓也氏がライブパフォーマンスを披露し、来場者の喝采を浴びていた。伊藤氏は「モンキー47」を最初に日本に導入した人物でもある。立ち寄ったブースの中から、筆者の興味を引いたジンをいくつか取り上げてみよう。

イギリス「ザ・レイク・ディストラリー」は2014年にイングランド北西部湖水地方に建てられた蒸留所。周辺は「ジ・イングランド・レイク・ディストリクト」の名称で2017年、ユネスコの世界遺産に登録されている。同蒸留所が製造しているのはスタンダードタイプの「レイクス・ジン」とプレミアムの「レイクス・ジン エクスプローラー」の2種(輸入元:雄山株式会社)。後者は、湖水地方のボタニカルを一晩原酒に浸した後、時間をかけてじっくりと蒸留。複雑精妙な味わいがある。世界遺産でもある国立公園の中で蒸留されたジンというだけでも希少で付加価値になりそうだ。

ニュージランド・マーティンボローの「リード・ブラザーズ・ディスティリング」(2015年設立)が造る「リード+リード」(輸入元:ヴァイ&カンパニー株式会社)は「ネイティブ・ドライ・ジン」と「バレル・エイジ・ジン」の2種。前者はニュージランド固有のボタニカル3種(カワカワ、ホロピト、マヌカ)を含む13種のボタニカルを使用。ジンジャーを思わせるユニークな香りがある。後者は、ベースの原酒にピノノワールとブッシュ(固有品種)のブドウを使用。マーティンボローの赤ワイン熟成に使われるフレンチオークの樽で熟成をかけたもの。赤い果実のアロマが特徴的だ。

沖縄・糸満市のまさひろ酒造株式会社が製造する「まさひろオキナワジン」はベースとなる原酒にジン専用に蒸留した泡盛を使用。ジュニパーベリー以外のボタニカル──シークァーサー、ゴーヤ、ローゼル(ハイビスカスティーに用いる)、ピィパーズ(沖縄島胡椒)──はすべて沖縄独自の素材を起用した。同社はもともと縦型(直接加熱方式)、横型(関節加熱方式)の2種の蒸留器を使い分けて泡盛を造ってきたが、ジン製造においては、前者を原酒造りに、後者をボタニカルの風味を移すための2度目の蒸留に使用、独自の製法を確立した。「まさひろオキナワジン」は、ジンらしさを十分に備えたところに、ゴーヤで苦味を表現するなど沖縄のフレーバーが加味されていて、面白かった。この味わいが浸透すれば、低迷する泡盛業界の救世主になれるかもしれない。

ベルギーの「クローバージン」はアン=ソフィ、シャルロット、ナヌークの3姉妹が立ち上げたジン・ブランド。彼女たちのストーリーを元にレシピが創造され、それを「ベルジアン・スピリッツ・カンパニー」が形にした。「クローバージン」と「クローバージン ラッキー4」の2種があり、両方にボタニカルとしてシロツメクサが使われている。味わいはいずれもハーバルで、繊細。化粧水の容器を思わせるボトルデザインを含め、3姉妹のイメージが表れていると同時に、女性向けであることが明白だ。ジン造りにも様々なアプローチとストーリーがあると、改めて強く感じた。(Yasuyuki Ukita)

 

つづき(ボンベイ・サファイア ザ トニックエッセンス/偉大なバーテンダーになるための心得/ニッカウヰスキーの伝統と革新 カフェシリーズの魅力に迫る)はWANDS 2018年7&8月合併号「夏のスピリッツ 特集」をご覧ください。
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