森林火災を乗り越えて、なお前向きに、なお強靭に プレミアム・カリフォルニアの双璧、ソノマとナパ Text & photo 近藤さをり

今年前半の日本のカリフォルニアワイン業界は、話題に事欠かないくらい何かが動いていた。年明け早々に、ワインインスティテュートの新代表選考のニュースが業界内をザワつかせ、正確な情報が掴めないまま今後のサポート態勢に不安を抱く人もいれば、大きな地殻変動を予感して沸き立つ人も。

そんな中、ワインインスティテュートは今年で24回目のバイザグラス・プロモーションを例年どおり粛々と遂行、長年築き上げた土台の強固さを見せた。カリフォルニアワインの地域の生産者協会では唯一日本駐在を置くナパヴァレー・ヴィントナーズも着実にマーケティングプログラムの充実度を高め、昨年のバイザグラス優秀店のインセンティブツアーを6月に終え、参加者の購買意欲を高めることに成功。そして今年ならではのトピックは、ソノマのワイン生産者団体、ソノマ・カウンティ・ヴィントナーズによる6年ぶりの来日イベント開催。

知名度においても、ワインのプレミアム感においてもカリフォルニアの二大巨頭のナパとソノマ。この2地域を襲った昨年10月の森林火災のことは記憶に新しい。逆境をバネに常に前を向いて進んでいく生産者たちの姿、そして彼らに関与している日本国内の関係者の団結力と行動の速さにカリフォルニアワインの屋台骨の強さを見た気がした。


ソノマ・カウンティ

ソノマ・カウンティはサンフランシスコから車で約1時間北上したところに位置する。というより、有名なナパ・ヴァレーの西隣と言った方が、通りが良いかもしれない。広さはナパの2倍ほどで、日本で言えば富山県や山梨県と同じくらい。そのうちブドウ畑の面積は24,000ha でナバの1.3倍ほどで、郡の総面積の6%程に過ぎない。森林49%、牧草地36%、市街地9% と、つまり土地の半分以上が自然のまま残されている。

アメリカの中では最も古くからブドウが栽培されていた土地だ。宣教名目で入植してきたスペイン人や、アザラシの毛皮を求めて大陸に渡来したロシア人などが土地を開墾してブドウを植栽。1857年にはハンガリー人アゴストン・ハラスティがソノマ・ヴァレーにブエナ・ビスタ・ワイナリーを創業、カリフォルニア最古の商業用プレミアムワイナリーとなる。一方、カリフォルニア初の家族経営ワイナリーは、今なお創業者の子孫により途切れることなく経営が続いているグンラック・ブンシュー。まさにこの地は、州ワイン産業の発展を牽引してきた。

 

ソノマ・カウンティ・ヴィントナーズ(SCV)

1994年に設立された、カリフォルニアの銘醸地ソノマ郡のワインの生産者団体。現在250以上のワイナリーが加盟。1944年に設立されたナパ・ヴァレー・ヴィントナーズ(NVV)と比べ、加盟ワイナリー数も予算も少ないため、国外での活動件数は少なく日本担当のスタッフもいない。50年先輩のNVVの成功に学び、ソノマらしくカスタマイズして、できることを実践していく後発組の懸命さが窺える。

 

ソノマ・バレル・オークション

4月20日に今年で第4回目となるソノマ・バレル・オークションが、ロシアン・リヴァー・ヴァレーのマクマレー・エステートで開催された。小売・卸売業、飲食店などのトレードを対象にした先物買いのオークションで、NVVなら春先に行われるプルミエ・ナパ・ヴァレー・オークションに当たる。

出品されるワインは、このオークションのためだけの特別なロットで、それぞれ5~20 ケースずつの少量生産。今年は97ロットが出品され、落札額の合計は84万700ドルと前年から6%アップ。2015年の初回は71ロットで46万1,700ドル、2016年が75ロットで69万3,800ドル、2017年が90ロットで79万4,500ドルと、年を追うごとに数字を伸ばしている。

(text and photo by Saori Kondo)

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